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【栃木】

『冤罪の悲劇』 私で最後に 足利事件で菅家さんに謝罪 テープ聞き思い複雑

2009年10月6日

記者会見で、開示された録音テープを手にする菅家さん=県庁で

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 二度と私のような冤罪(えんざい)を生まないで−。足利事件で五日、宇都宮地検の幕田英雄検事正から初めて謝罪を受けた菅家利和さん(62)。十七年越しの捜査当局の謝罪を強い意志で受け止めた。地検は別の二つの女児殺害事件での取り調べの録音テープも開示。事前協議はこの日ですべて終了し、異例の展開をたどった足利事件は二十一日、再審の日を迎える。 (横井武昭)

 「ようやく許す気持ちになりました」。逮捕、起訴から十七年余り。幕田検事正から謝罪を受けた菅家さんは、ずっと待ち続けた瞬間をかみしめるように言葉を絞り出した。

 午前八時五十分、菅家さんは青い長袖シャツにグレーのスラックス姿で佐藤博史主任弁護人と地検入り。「わざわざお運びいただきありがとうございます」。やや緊張した面持ちの幕田検事正が深々と一礼して迎えた。

 別室に移動し、菅家さんと向き合った幕田検事正は、弁護団が「もう結構です」と言うまで頭を下げ続けたという。謝罪時間は約三十分間。菅家さんが「冤罪を二度と出さないで」と訴えると、幕田検事正は「再発防止に取り組みます」と応えた。

 その後に開示された録音テープは百二十分テープで十五本。手錠を外す音や「ご飯は食べたか」と聞く捜査員の声も入っていたという。生の記録に接した菅家さんは「当時のことを思い出し腹が立った。でも、これで無実であることが分かってもらえる」と複雑な心境をのぞかせた。

 初公判は二十一日午前十時から。地検は無罪を求刑する方針で、数回の公判を経て来春にも菅家さんの無罪が確定する。

 

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