電車での痴漢犯罪捜査で鑑識活動を強化するため、県警は143の駅前交番や5カ所の鉄道警察隊に「携帯用微物採取キット」を配備した。容疑を裏付ける重要な証拠となる微物をより迅速、確実に採取することが可能になるという。
キットの中身は、衣服の繊維や皮膚片などを採る粘着シートや、容疑者の指先やつめの間からDNA鑑定する試料を採るための滅菌スティック、マスクや手袋など全9点。これまでは警察署だけに置かれていたため、駅構内で容疑者を取り押さえると、手をビニールで覆うなどした上で、警察署に連れてくる必要があった。時間がかかると微物がとれてしまったり、証拠隠滅される恐れがあった。
駅前交番に証拠を採取するキットがあれば、最初に現場に駆けつけた警察官がその場で鑑識活動することができる。交番勤務員を対象に鑑識の特別講座も順次、始めているという。
埼玉では痴漢容疑で例年200人近くが逮捕や送検されている。そんな中、DNA鑑定などの科学的な証拠は裁判で重要性が増している。県警鑑識課は「証拠をより早く確実に採取することは、被害者だけでなく、冤罪(えんざい)を防ぐという意味で容疑者の利益にもなる」としている。
1~8月の県内の痴漢事件は106件。悪質なものは強制わいせつ事件に発展するケースもある。県警は、容疑者がその場で容疑を認めた場合も含め、すべての事案で鑑識活動をしていくという。【町田結子】
毎日新聞 2009年10月5日 地方版