経済政策の抜本的転換を図れ
[森田総合研究所ホームページ編集部の命令に従い、この5月から2本立てにします。1つは「時代を斬る」の政治評論、もう1つは21世紀の日本への提言〈新たな公共事業が日本を救う〉を連載します。]
【1 環境・水・農業・地方・教育のための新公共事業の必要性】
(1)政策転換を急げ
「脱皮できない蛇は滅びる」(ニーチェ)
今日の日本は事実上米国政府の支配下におかれている。
このことに大多数の日本国民は気づいていない。理由はただ1つ、小泉政権に、日本の独立を維持し、日本を独立国家として運営する意思がないからである。日本政府が自ら積極的に米国への従属化を推進している。このため、日本国民の自発的な意思で日米一体化が進められているように見えるのである。米国政府側から見れば、この関係は理想的である。米国政府が日本に対して「これをしなさい」と指示すれば、日本政府自身が米国政府に気に入られようとして、自ら積極的に米国政府の指示を実行し、米国政府の利益に奉仕しているのである。小泉政権は自発的に傀儡政権への道を進んでいる。これが「日米同盟」の実態である。
このような従属的日米同盟のもとでは、日本の富は米国に吸い上げられるだけである。戦後60年間、日本国民が真面目に一生懸命に働いてつくり上げた国民の富は、小泉政権の構造改革という名のアメリカ化革命を媒介にして、米国へ移転している。日本の富が吸い取られている。この状況を放置すれば、日本の富はやがて失われてしまい、経済国家日本は衰退する。
米国政府のやり方は巧妙である。日本から多額の借金をするときは、円ではなくドルで借りている。ドルは基軸通貨であるため為替相場が変動しても米国民の生活が直接影響を受けるわけではない。米国政府は日本からの借金を減らすためにドル安政策をとる。その結果、円は高くなる。円が高くなればトヨタはじめ日本産業の主力の製造業の国際競争力が低下する。そこで日本はドルを買ってドル安円高を食い止めようとする。日本政府が保有するドルが増える。このドルで米国債を買う。事実は米国債を買わされるのである。
これには民間も協力する。日本の中に米国債はどんどん増えるが、しかし、日本はこれを売却することはできない。正確に言えば、米国政府の了解なしに自分勝手に売ることはできない。そんなことをする日本政府は許されない。米国政府の高官は、米財務省証券を売却するようなことをするならその内閣はすぐに倒れるという趣旨の発言をして、日本政府を牽制した。2003年頃のことだ。
輸出産業保護と日本企業の国際競争力維持のためにドルを買い、そのドルで米国債を買うという形で、日本のカネは米国に移転する。名目上は米国側の借金だが、日本側が売却できないため、事実上は米国政府に巨額のカネを寄贈しているに等しい。小泉首相はこのことを実行することによって、米国ブッシュ政権から愛されているのだ。これはブッシュ大統領と小泉首相の“友好”のコストなのである。
それにしても“友好”のコストは高すぎる。この悪循環を止めないと、日本の富は米国に吸われつづけ、やがて富のない国になってしまう。
では、この悪循環を止めるにはどうすべきか。少なくとも政府の経済政策を転換しなければならない。経済政策を変える最善の手段は内閣を変えることである。「アメリカのための政策」を実行している小泉政権を交代させて、「日本国民のための政策」を実行する内閣をつくるのが最善である。新内閣は小泉構造改革を止め、日本経済を成長軌道に乗せるため内需拡大策を実行しなければならない。いまの政界で、これを実行できる政治家は亀井静香元政調会長である。したがって、いまは亀井静香内閣をつくるのが最善の選択だろう。とにかく1日も早く小泉政治を止めることが必要である。
経済政策についていえば、外需依存型輸出産業主導の産業構造から内需主導型経済構造に変えることである。外需依存型産業を主体にしていれば米国政府の「ドル安円高」政策によって、絶えず揺さぶられ、日本の富を吸い取られる。日本は日に日に貧しくなる。フリーターやニートや失業者が増える。犯罪が増え凶悪化する。外需主導型では日本経済がもたなくなる。日本社会の秩序が崩壊してしまう。
内需主導型に切り換えるために最も必要なことは財政政策の転換である。財務省の縮小病的財政運営はすでに破綻してしまっている。財務省はしかし、いままでの縮小政策にこだわりつづけている。ほとんど病的である。結論から言えば、財政政策を転換し、新たな公共事業を積極的に展開し、日本の国全体に蔓延してしまっている縮小シンドロームを打破することである。縮小シンドロームを打破して全国民が労働意欲を回復すれば、経済は成長する。これによって巨大なる富が生み出される。これにより内需がさらに拡大する。国民の所得が上昇する。企業の所得も上昇する。税収も増える。財政再建が可能になる。国民経済の成長こそが財政再建の正道である。縮小政策をとりつづけることは「石を抱きて淵に入る」に等しい愚行である。
新たな公共事業とは、環境改良、水と食糧の確保、国民生活と産業活動安定のための社会資本整備、地方経済活性化のための自然環境・農業・社会資本整備、文化財保護・教育振興などの諸事業のことである。これによって日本の各都市、各町村は観光都市、観光地域として栄える可能性を高めることができる。
財政再建の最も効果的な手段は経済成長を実現することだ。財務省の縮小政策では財政再建は日暮れて道遠しである。いま急ぐべきは経済政策の転換である。【つづく】