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心肺停止 受け入れず 夕張の中3自殺

2009年10月04日

■夕張の中3自殺で市立診療所
■「情報伝達で不備」

 夕張市の中学3年の男子生徒(14)の自殺で救急隊が市立診療所に受け入れを求めた際、心肺停止状態で早急な措置が必要だったにもかかわらず、市外の病院に行くよう指示されていたことが分かった。最終的に生徒は市内の別の医院に運ばれ、死亡が確認された。市内に救急病院はないが、同診療所は唯一入院できる中核的医療機関。事態を重くみた市は、運営主体の医療法人財団「夕張希望の杜(もり)」(理事長・村上智彦医師)と救急体制改善に向けて協議を始めた。
(本田雅和)

 関係者によると、9月27日午後11時11分、生徒が自宅で首をつっているのを見つけた家族が119番通報した。5分後に到着した救急隊は、生徒の心肺が停止していたため、蘇生術を施しながら最も近い医院に連絡。不在だったことから同11時32分、次に近い市立診療所に電話で受け入れを求めた。

 同診療所によると、最初に電話を受けた事務当直員や、医師に電話を取り次いだ看護師が救急隊員の使った「縊頸(いっけい)(首つり)」という言葉を理解できず、「いけい? 胃けいれん?」などと推測し、当番医の村上医師に連絡。同医師は心肺停止と報告を受けながらも「インフルエンザ脳症のような病気か事故だろう」と考え、同40分に「小児の重篤状態は対応できない。早急に小児科のある(重篤・重症専門の)3次救急病院に行くように」と看護師を通して救急隊に電話で回答した。

 市などによると、隊員はこの電話で「心肺停止状態なので受け入れてほしい」と再び要請。看護師も村上医師に伝えたが、回答は変わらなかったという。救急隊は市内の2医院に連絡し、同45分、1医院が受け入れを承諾。同55分に運ばれたが、28日午前0時24分に死亡を確認した。

 同診療所の診療科目には小児科もあり、村上医師は講演などで「心肺停止患者は直近の医療機関で早急に対応すべきだ」と説いている。市内の医療従事者は「診療所でも蘇生術や気管挿管などの措置はできたはず」と批判する。

 村上医師は「非常に残念だが救急隊と診療所の間に情報伝達の不備があり、正確に医師に情報が伝わらなかったのは事実。今後はこのようなことがないよう、救急隊との間で取り決めをし、職員にも周知していきたい」と話す。

 これを機に同市では、救急医療体制の整備に向けて医師会や道とも再協議していくことにしている。

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