社説

比例定数削減/民意の反映か、集約か

 民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げた「衆院比例代表定数の80削減」は、反対の立場を取る社民党に配慮して、連立政権合意文書には盛り込まれなかった。政党の消長に影響する重大な問題を「封印」した形だが、連立政権の火だねとなる可能性がある。

 民主党の公約は180の比例定数を100にして、小選挙区の300と合わせて衆院定数を400とする内容。前回の衆院選でも同じ公約をしており、「より政権選択がしやすい選挙を実現するため」としている。歳出削減に対する国民の理解を得るため、議員も痛みを共にする姿勢を示す狙いもある。

 社民党はこれに強く反対する。今回当選した7人のうち4人、解散前は7人中6人が比例で議席を得ており、比例定数が4割以上減れば存亡にもかかわるからだ。今回の公約にも比例削減反対を明記した福島瑞穂党首は「国会に多様な意見が出てくるのを阻み、二大政党だけになってしまう」と力説する。公明党、共産党も同じ主張だ。

 「選挙制度は民意を反映させるものでなければならない」という社民党の言い分はもっともだ。今回の選挙(小選挙区)での「死票」(落選候補に投じられた票)は計3270万票で有効投票の46%。同党は「選挙は死票が少ない比例中心に改めるべきだ」と訴える。

 だが選挙には、民意反映のほかに、民意を集約して権力を創出する機能も求められる。

 小選挙区制は、国の意思決定を迅速にするため第1党に多数議席を強制的に与えるよう設計されている。その代わり死票が多くなる。一方、比例だと死票は減るが、小党乱立で政治混乱を招く欠点があるとされる。

 民意の反映か、集約か―。悩ましい問題であり、1994年に小選挙区比例代表並立制導入が決まった時は、小選挙区制を中心としながらも、激変緩和のため全国11ブロックに比例代表が設けられた経緯がある。

 民主党は今回、連立優先のため一時「比例削減」の旗を降ろした。だが、党内には「比例中心だと第三極が主導権を持ち、かえって民意がゆがめられる」「比例削減は選挙で国民に支持されている」という意見も強く、今後さまざまな局面で実現を求める動きが出そうだ。

 小選挙区で全敗した公明党は、次は比例だけで戦うことも選択肢に入れており、この問題の行方を注視している。

 議論が分かれる比例定数削減よりも優先して取り組むべきは、小選挙区で落ちた候補が比例で復活当選できる重複立候補の問題だろう。今回の復活当選者は民主43人に対し自民46人。「民意の集約」とは逆の結果が起きている。小選挙区2位の候補が落ちて3位が復活当選した選挙区が四つあったほか、ある党の重複立候補者が足りずに比例の議席が他党に回るなど、有権者が割り切れない思いを抱くおかしな事例も目立った。

 こうした点を改善するだけで選挙への信頼感は増すだろう。完ぺきな制度などないのだから少しずつ直していけばいい。

2009年09月23日水曜日

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