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やがて……書店で立ち読みする人が消えるの?

PCや携帯電話で書籍の一部を立ち読みできるサービスが広がってきている。Amazonが提供している「なか見!検索」では、10万冊ほどの書籍内容の一部が読めるほか、携帯電話で雑誌の一部が読めるサービスが好調だ。このままでは、書店で立ち読みする人が消えてしまうかもしれない。

[産経新聞]
産経新聞

 PCや携帯電話で書籍の一部を“立ち読み”できるサービスが広がりを見せている。インターネット通販大手「アマゾン」(東京都渋谷区)が平成17年に始めた書籍内閲覧サービス「なか見!検索」では、10万冊弱の書籍の内容の一部が読めるほか、携帯音楽プレーヤーや携帯電話で雑誌の一部が読めるサービスも好調だ。しかし、いつでもどこでも本が読めるようになれば、書店で立ち読みする人はやがて消えてしまう?(道丸摩耶)

本文は一部まで

yd_book.jpg 書店で当たり前のようにみられる立ち読み風景。将来は消えてしまう?(大西史朗撮影)

 実用書などを多く手がける出版社「世界文化社」(千代田区)は9月から、アマゾンの「なか見!検索」サービスに参加。新刊書籍の目次や冒頭など6ページがネットで読めるようになった。従来は検索する単語が書籍タイトルや紹介文でなければ検索されなかった。今後は6ページ内に含まれている単語を検索すれば、検索結果に書籍が表示されるようになり、販売促進効果が期待される。

 サービスは当初、より多くの単語が検索に引っかかるよう内容すべてを複写する方法でスタートした。閲覧には制限があり、全部を読むことはできない。それでも出版社や著者からは、「内容を読めたら本が売れなくなる」「複写データを手に入れた第三者が複製品を作る危険がある」と不安視する声が大きかった。

 しかし、昨年11月に6ページのみを複写して閲覧できる機能を加えたところ、「一部なら安心。売り上げにもつながる」(世界文化社)と参加する出版社が増加。7月末時点で1300社以上の計9万5000冊の一部が読めるようになった。

 一方、ソフトウエア開発会社「ウェイズジャパン」(新宿区)は8月から、一部の携帯電話や携帯音楽プレーヤーで雑誌を読める無料ソフトの提供を始めた。約400種の雑誌の目次など数ページが無料で閲覧できる「雑誌オンライン」の利用が可能に。すでにかなりのダウンロード数があった。

書店とは補完関係

 ところで、PCや携帯端末による“立ち読み”が充実したら、書店での立ち読みが消えてしまう恐れはないのか。

 ウ社は「活字離れの若い世代に活字の良さを認識してもらうのがソフトを提供する目的」、アマゾンは「多くの本を知ってもらい、書店に行く動機付けにしてほしい」と、サービスは利用者を書店に向かわせる入り口だと強調する。

 確かに、アマゾンの利用者がもっとも多いのは書店が営業していない午後10時〜午前2時。携帯端末で情報を集めるのは、時間のない外出中や移動中が多い。

 「目的なくぶらぶら本を探す楽しみは、書店でなければ味わえません」とアマゾンの担当者。三省堂書店の担当者も「リアルの書店とネット書店は違う。ネットで読めるから古典が売れなくなったかといえば、そうではない」と客数に変化はないと強調する。

 ネットでの“立ち読み”は書店を補完し、活字の魅力を伝えるツールとなっているといえそうだ。

米国の“立ち読み”事情

 書籍電子化が進む米国では、各社の競争が過熱。電子化を先行させるインターネット検索大手「グーグル」と提携したソニーは、端末「リーダー」を通じて100万冊以上の書籍を無料で提供。書店大手「バーンズ・アンド・ノーブル」は、PCや携帯端末を通じて70万冊以上、「アマゾン・コム」が扱う電子書籍端末「キンドル」では30万冊以上が提供されている。一方で、「グーグルによって著作権が独占される」との声も大きく、マイクロソフトやアマゾンなどが反対姿勢を強めている。

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