あの人は今こうしている　野菜作りに精を出す神社の神主

●「通信教育ながら、大阪国学院でちゃんと学び、階位をとりました」

　本日登場の宮田修さんは９５年１月の阪神・淡路大震災の発生直後から、次々と変化するショッキングな情報を冷静に伝えたＮＨＫの元ニュースアナウンサー。その後、夜の看板番組「ニュース７」のキャスターとしても活躍した。去年１０月、ＮＨＫを退職した宮田さん、今どうしているのか。

「あまりにものどかな土地でビックリしたでしょ？　夜はフクロウが鳴き、昼間はキジがのんびり道端を歩いてますよ。困りものはタヌキに似たハクビシン。畑で育てている野菜がしょっちゅう荒らされるんです。ちょうど熟して、そろそろ収穫しようかなって頃に決まってやられる。ホント、がっくりきちゃいます」

　東京駅から約１時間。ＪＲ外房線茂原駅までクルマで迎えに来てくれた宮田さんは、ハンドルを握りながら苦笑した。自宅はさらに１５分。長南町の丘陵地帯にあった。通されたのは元は納屋だったといういろりが切られた来客用談話室だ。

　ちなみに、自宅敷地は７００坪、畑は６００坪。

「実は６年前からこの近くの熊野神社ほか、全部で３２カ所の神社の神主をしているんです。もちろん通信教育ながら、２年間、大阪国学院でちゃんと学んで階位（資格）を取り、ＮＨＫ時代は許可を得て神主をしていました」

　きっかけは１７年前、週末に田舎暮らしをしようと、この近所に家を借りたことだった。

「そこの大家さんが神主さんでしてね。後継者がいないと嘆いておられ、ワタシに白羽の矢が立ったんです。それが１０年前の話で、事情が事情ですし、退職後はこっちに引っ越すつもりでしたから、お引き受けしました。女房？　ウチは互いに干渉しない夫婦、どうぞお好きにって感じでしたよ」

　さて、千葉県富里生まれの宮田さんは埼玉大学卒業後、ＮＨＫにアナウンサーとして入局。旭川を初任地に神戸、福島、岡山、広島など各地の放送局を回り、大阪で阪神・淡路大震災に遭遇した。

「『おはよう近畿』のニュース原稿の下読みをしていたときでした。今までに経験したことがない非常に激しい揺れで、すぐにマイクに向かい、“早くオレを撮れ！”とさけんだ。地震発生が５時４６分、放送開始は４９分５秒でした」

　それからお茶で喉を湿らせながら、放送すること７時間超。刻々と深刻度を増す被災情報をアナウンスし続けた。

「無我夢中でトイレどころじゃなかったですね。さすがに午後１時に交代したときは、ホッとしてトイレに直行しました」

　当日夜も午後７時から１１時まで放送。その姿勢が高く評価されて東京本部に転勤となり、「ニュース７」の土・日・祝日のキャスターとして活躍した。定年時の肩書はエグゼクティブアナウンサー。そして、去年１１月１日、葬祭、仏壇・仏具販売、移送サービス、介護用品コンサルティングを行う「セレモアつくば」の業務執行役員に迎えられた。

「ＮＨＫ時代から社長さんとご縁があり、退職後はぜひ、と言われてたんです。当社は都内はもちろん、神奈川、埼玉、千葉、山梨、茨城、群馬もカバーしてますから、何かございましたら、お気軽にご相談下さい」

（日刊ゲンダイ2009年9月10日掲載）