この人物のオモテとウラ　何かと注目の芸人は味方につければ心強いが…

　漫才師の中田カウス脅迫事件に絡んで休業中の漫才師、前田五郎（６７）が、所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーからマネジメント契約を解消された。坂田利夫と組んだ漫才コンビ「コメディＮｏ．１」は過去には上方漫才大賞も受賞したこともあったが結成４２年で解散し、前田の廃業は濃厚となっている。

　アホ役の相方・坂田と比べると関東では知名度が低いが、関西では大御所級といわれており、頑固な職人気質の昔ながらの芸人という評価が定番。

　何事にも徹底した性格は、もちろんいい方向にも表れる。

「坂田とコンビを組む前の貧乏時代に、鶴橋の焼き肉店に出世払いで食べさせてもらった恩を忘れずに今でも通い、よく若い衆を大量に連れて行っているようです」（関西の芸能記者）

　しかし、いったんヘソを曲げたら、さあ大変。時に怒りが爆発することもあった。

「かつて彼が住んでいたマンションの隣の部屋がうるさかったので、頭にきた前田は部屋にいきなり怒鳴り込んだそうです。それで結局、部屋を追い出されたとか」（関西のテレビ関係者）

　芸人関係の新聞記事の切り抜き収集家でもある前田は、よくテレビ局や制作会社から資料として貸してくれとの依頼を受けていた。ところが貸した資料の一部を紛失され激怒、それ以来かたくなに貸し出しには応じなくなったという。また、相方の坂田の関係者が前田に名刺を出したところ、何か気に食わなかったようで名刺を粉々にして紙吹雪にしたという話もあった。「くだらないから」という理由で番組方針に従わず、年末特番のクイズコーナーが成り立たなくなったことは有名だ。

　芸人仲間にその怒りの矛先が向かうことも多い。ベテランと若手の共演番組で、収録場所の心斎橋筋２丁目劇場が若手ファンの女の子ばかりなのに気を悪くして、途中で舞台をボイコットするし、ラジオのフリートークではあの北野誠も尻込みするほどの毒舌を仲間の芸人に対して吐きまくる。そのせいか、舞台上ではどの芸人も前田のことを恐れてネタにしないという。

●好き嫌いのハッキリしたタイプ

　こうした強い執着心からか、趣味の世界も徹底している。第一の趣味とされる写真では、なんばグランド花月（ＮＧＫ）公式サイトでさまざまな写真を展示したり、吉本新喜劇の俳優や若手芸人たちの舞台裏などを撮影した写真で、展覧会を開いたこともある。それだけではない。なんと「素晴らしき吉本芸人たち〜前田五郎写真館」という写真集まで出版してしまった。

　かつてマージャン番組の司会をしたほどマージャン好きで、実力は吉本芸人最強といわれ、体力づくりでも「まるでヘラクレス」とまで称される肉体をつくる。

　好きなものはとことん好き、嫌いなものは徹底的に嫌い。いずれにせよ、敵にだけは回したくないタイプの男だろう。

（日刊ゲンダイ2009年9月18日掲載）