この人物のオモテとウラ　本人自身も「波瀾爆笑」

●ＴＢＳのテコ入れに大抜擢

　元ＮＨＫアナウンサーで現在フリーの堀尾正明（５４）が、９月２８日スタートのＴＢＳ系「イブニングワイド」（月〜金曜、夕方）の総合司会に決まった。

　これまで午後５時３０分から元ＴＢＳの人気女子アナの小林麻耶（３０）をキャスターとして「総力報道！ＴＨＥ　ＮＥＷＳ」を放送していたが、視聴率１０％以下が続くなど、低迷にあえいでいた。そこで７月からは人気時代劇「水戸黄門」の再放送を前番組に置き、報道局外信部デスク・竹内明を新キャスターにするなど、テコ入れをしたが、それでも苦戦。そこに白羽の矢が立ったのが堀尾正明だった。

　１９５５年、岡山県生まれの堀尾は、小さい頃から父親の仕事の関係で山形、群馬、愛知、横浜、大宮と転居が続いた。「転校ばかりだったから、ぼくという存在をどこかに残したかった」と、自分を表現する手段として選んだのが演劇。

　早稲田大学在学中は「木端微塵（こっぱみじん）」という劇団をつくって芝居三昧に明け暮れ、文学座の研究生を１年、俳優座にも２年在籍した。文学座の同期には女優の田中裕子が、また数年上の先輩には中村雅俊がいる。他に渡辺謙ら後のビッグスターとも旧知の仲だ。

　当時は「食っていくため」に、道路工事からテキ屋、ペンキ塗り、運転手、世論調査、バーテンダーなど２３種類ものアルバイトを経験したが、俳優を断念。ディレクター志望でテレビ局入りを狙うが、１浪２留で推薦枠も逃してアナウンサーとして８１年、ＮＨＫに入社。２６歳という遅いスタートだった。

　入社後も順風満帆というわけではなかった。北九州から始まり、福岡、大阪と各４年ずつの地方勤務を経験して、やっと東京放送局に異動。

　９５年４月から「スタジオパークからこんにちは」の司会で、明るいキャラと親しみある対応で人気者に。００年には「ニュース１０」の初代キャスターに大抜擢。しかしこれが大不評で、約２年で降板させられ、０２年からは「サンデースポーツ」のキャスターに。

　これが功を奏して、本来の明るいキャラクターが復活した。

　０４年のアテネ五輪で現地入りをした際に、中継では日本からのスタジオの呼びかけに突然ギリシャ語で叫び出すなどのはしゃぎぶりや、すぐにメダルに触りたがるミーハーぶりがヒンシュクを買った。「興奮しやすい性格」がアダとなったが、この年の紅白歌合戦の総合司会に抜擢されるなど、大躍進。

　ＮＨＫでは異質といわれた堀尾が、５７歳の役職定年を待たずに、昨年３月に辞めたのは、「北京五輪に行きたい」から。局内ではスポーツを卒業といわれたため、相談した和田アキ子に肩を押されたという。念願かなって、フリーになった堀尾は日本テレビの五輪中継で、明石家さんまと桜井翔と共演。まさに水を得た魚のように生き生きと復活した。

　その後も「誰だって波瀾爆笑」「ＳＵＰＥＲうるぐす」などで活躍中。明るさが見込まれてＴＢＳに大抜擢された。

　ＴＢＳは秋改編で「総力報道」の大幅テコ入れに踏み切る。「好感度の高い堀尾アナで主婦層を取り込みたい」（同局関係者）の期待に、果たして応えられるか？

（日刊ゲンダイ2009年9月25日掲載）