あの人は今こうしている　三線を弾きながら歌う沖縄民謡歌手として活動している

●「昔に戻ったみたいにスルッと入り込めました」

　テレビＣＭのバックに流れる音楽からヒット曲が生まれる例は少なくない。きょう登場の桑江知子さんが歌って大ヒットさせたのはポーラ化粧品のＣＭ曲だった「私のハートはストップモーション」。タイトルを聞いて、♪ああ、私のハートはストップモーション……と歌い出した向きも多いのではないか。伸びやかで透明感あふれる歌声は今も耳に鮮やかに残っている。桑江さん、今どうしているのか。

「早いもので、今年でデビュー３０周年になるんです。それに合わせて６月に記念マキシシングル『うんじゅぬ島』をリリースしました。ＣＤとしては３年前の９月に発売したアルバム『カジマヤー〜風車』以来になります」

　総武線小岩駅から徒歩２分の沖縄料理店「居酒や　こだま」で会った桑江さん、こういってほほ笑んだ。同店でのライブ前の取材。８０人ほど入る座敷はすでに満席だ。

「“うんじゅぬ”は沖縄方言で、標準語に直すと“あなた”って意味です。作詞作曲は『ＴＨＥ　ＢＯＯＭ』の宮沢和史さん。巣立ってゆく我が子を思う母親の気持ちをつづった詞が心にしみて、初めて聞いたときから胸にジ〜ンときましてね。ライブで歌うとお客さまの反応がとっても良くて、記念シングルにさせていただきました。カップリング曲の『今だからありがとう』はワタシが作詞作曲し、編曲はふたつの曲とも『私のハートはストップモーション』と同じ萩田光雄さんです」

　午後７時すぎ、ライブは三線（さんしん）を抱えた桑江さんと、ライブパートナーの笹子重治さんのアコースティックギターでスタート。往年のヒット曲ともなると、座敷に陣取ったファンの“知（とも）ちゃん”コールが響き、メガホンにペンライトまで登場。いやはや、３０年前にタイムスリップの熱狂ぶりだ。

　さて、沖縄生まれ、福岡育ちの桑江さんは、１９歳の誕生日を迎えた直後の７９年１月に発売したデビュー曲「私のハートはストップモーション」がポーラ化粧品のＣＭ曲に採用されてブレーク。この年の日本レコード大賞最優秀新人賞をはじめ、２２もの各賞を受賞した。その後、「ロス・インディオス」のボーカルを経て、９７年から沖縄民謡に取り組んでいる。

「福岡育ちといっても、家では食事も言葉も沖縄そのものだったから、ＤＮＡに沖縄が刷り込まれてたんでしょうね。昔に戻ったみたいに、スルッと沖縄民謡に入り込めました」

　００年、「琉球民謡コンクール」で新人賞に輝き、０５年には同コンクール優秀賞を獲得。今は三線と沖縄民謡をベースにしたオリジナル曲が桑江さんの音楽活動のメーンだ。

「ライブは月に１、２回あり、２カ月に１度、東京・品川にあるホテルパシフィック東京のラウンジ『ブルーパシフィック』にも出てます。また、１０月から音楽専門ＣＳラジオでＤＪを隔週で担当することになりました」

　明３０日、六本木のライブレストラン「スウィートベイジル１３９」でデビュー３０周年「うんじゅぬ島」発売記念ライブを行う。

　今も昔も独身。

（日刊ゲンダイ2009年9月29日掲載）