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【プロ野球】ノムさん CS進出 楽天創設5年目2009年10月4日 紙面から
タケシだ、鉄平だ、初CSだ! 楽天が球団創設5年目にして初のクライマックスシリーズ進出を決めた。CS進出マジック「2」で迎えた3日の西武戦。鉄平外野手(26)が3ラン2本で6打点と大暴れ。主砲・山崎武司内野手(40)も勝利を決定づける38号3ランで花を添えた。今季が契約最終年となる野村克也監督(74)が、集大成の秋を迎えた。 ◆楽天14−5西武帽子を高々と掲げた。ジャンパーのポケットには記念のウイニングボール。野村監督が控えめな笑みで、Kスタ宮城を埋めた今季最多2万901人の歓声に応えた。創設から苦節5年。球団新の1試合5本塁打で大勝し、初のクライマックスシリーズ出場を決めた。 昨年10月7日、本拠地最終戦。5位に終わり、観客の前で頭を下げた。「来年は何が何でもAクラスに入ります」。あの謝罪の日から362日。誓いを守った老将は会見で「バンザーイ」と両手を挙げて勝ち誇った。 就任4年目の今季。敵と戦う前に、球団に対抗心を燃やした。昨年オフ、「高齢」を理由に「引退の花道を飾ってほしい」と1年のみの続投を要請された。「失礼だ、年齢で人の評価を決めるなんて。勝ちまくって球団を困らせてやる」 船出は順調だった。開幕から4連勝。5月末まで2位以内を守った。だが、雲行きは交流戦に入ると怪しくなり、74歳の誕生日を迎えた6月29日から嵐に変わる。翌日から8連敗。5位まで落ちた。FA補強した中村紀ら故障者も相次ぐ。3位の西武には最大5・5差と離された。 「引退の花道ができた。負けて辞めろということや」。突然の快進撃は借金が最多の8まで膨らんだ8月上旬から始まった。岩隈、田中が復調し、鉄平が首位打者に躍り出る。山崎武は本塁打を量産。成長著しい永井が勝ち星を重ねた。チームに強固な骨組みが出来上がった。球宴後は36勝18敗。2勝1敗ペースで2位まで駆け上がった。 勝てる組織をいかに築くか。4年間、球団に煙たがられるほどの注文を付けてきた。「楽天は阪神と似とる。編成がダメや」。平均点の選手は必要ない。走力、長打力、球の速さ。特長を持つ新人の獲得を求めた。駒がそろえば、自らの手腕を発揮できる。データを重視した先発オーダーは今季137試合で121通り。日替わり打線で戦力に生かし切った。 4月に監督通算1500勝を達成した名将も、球場を離れれば寂しがり屋の素顔がのぞく。時に孤独感に襲われた。「負けても、誰も慰めてくれない。勝てば官軍、負ければボロカス。監督は因果な商売だ」。単身赴任のホテル暮らしで、唯一の楽しみがテレビ鑑賞。とりわけサスペンスドラマを好む。「テレビを見ていれば気が紛れるんや」。券売機で1000円のプリペイドカードを自ら購入し、有料放送で映画「ミナミの帝王」に見入ったこともあった。 休日は12時間以上眠り、「栄養は考えない」と行きつけの東京・代官山のレストランでは牛刺しをひたすらほお張る。運動は一切しない。不摂生な生活を送りながらも、病と無縁。74歳とは思えない健康ぶりでチームの成長を見守ってきた。 年齢と同じ74勝目で決めたCS出場。「やれやれ、第一関門突破だ。関門トンネルが2つあるのか。まだ遠い」。目標はあくまで日本シリーズ出場にある。ヤクルト時代の1993、97年には冷夏をもたらす「エルニーニョ現象」が起きて日本一を達成。今年も発生が確認されている。「何をやってもうまくいく。ノムニーニョや」。眼鏡の奥から、最も高い頂きを見据えている。 (永山陽平)
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