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追悼『クレヨンしんちゃん』作者 臼井儀人さん 学習院大学教授・中条省平 (2/2ページ)
このニュースのトピックス:マンガ
それでは、『サザエ』や『ちびまる子』と比して、『クレヨンしんちゃん』の独自性はどこにあるでしょうか。『サザエさん』が描くのは戦後日本の高度経済成長の前期、1950〜60年代の日本の家族であり、『ちびまる子ちゃん』はその後期、70年代の家族です。つまり、この2作が描くのは、すでに失われたノスタルジーの対象としての家族なのです。
これに対して、バブル崩壊前夜に始まった『クレヨンしんちゃん』は、日本的な家族をノスタルジックに美化することなく、人間の生きるエネルギーの源泉として、家族の姿をいきいきと描いています。これが『サザエ』や『ちびまる子』とは違う『クレしん』の力強いリアリティーであり、今を生きる子供から大人にまで受けた理由です。
とくに劇場版『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』は、大阪万博に象徴される高度成長時代への憧憬(しょうけい)を示しながら、美化されたノスタルジーをありがたがる人々を痛烈に風刺した傑作で、大人の観客の熱い共感も呼びました。〈現在〉に立脚したこうした懐の深さが、『クレヨンしんちゃん』の人気とパワーの秘密なのでしょう。
原作者亡きあとも、新たな『クレヨンしんちゃん』の展開に期待したいと思います。
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