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追悼『クレヨンしんちゃん』作者 臼井儀人さん 学習院大学教授・中条省平 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:マンガ
■美化せず「家族」描いた
『クレヨンしんちゃん』の作者・臼井儀人さんが亡くなりました。この間の報道の盛りあがりを見るにつけ、いかに『クレヨンしんちゃん』が国民的人気を博していたか、あらためて考えさせられます。
『クレヨンしんちゃん』のマンガ連載は1990年に始まり、単行本はすでに49巻に及び、発行部数の累計はなんと5000万部(!)をこえています。まさに「国民的」な人気マンガだといって過言ではないでしょう。
もちろん、マンガ大国・日本のことですから、『鉄腕アトム』から『バガボンド』まで、驚異的な人気を誇るマンガは無数にあります。しかし、真に「国民的」の名に値するマンガは現在3作しかなく、その共通点としては、マンガが売れるだけでなく、テレビでアニメ化されてゴールデンタイムで長寿を誇り、子供から大人まで楽しく見られ、日本の〈家族〉を主題としているという事実が挙げられます。この条件を満たすマンガ=アニメとは、『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』、そして『クレヨンしんちゃん』の3本です。
どれほど欧米流の家族の分散化が進んでも、日本人は、個人を包みこむ〈家族〉というやさしい共同体に憧(あこが)れています。それを古い日本の保守的な心性の表れと考えることは間違っています。
フランスの歴史学者トッドの名著『世界の多様性』が論じたように、世界の民族ごとの家族形態は、政治制度やイデオロギーより深く人間の本質に根ざし、経済制度や価値観はむしろそこから作りだされるのです。日本の国民的マンガがいずれも〈家族〉をテーマにしていることには重大な意味があるのです。
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