財務相発言に円相場が右往左往、市場関係者から困惑の声
9月29日18時48分配信 ロイター
拡大写真 |
9月29日、藤井裕久財務相の発言を受けて、円相場が右往左往している。写真は18日撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai) |
[東京 29日 ロイター] 藤井裕久財務相の発言を受けて、円相場が右往左往している。財務相は市場が発言を曲解したと主張しているが、市場関係者には財務相の為替をめぐる発言は一貫性に乏しいと映っている。
投機筋が売買を仕掛ける口実となっている面もあるが、市場では通貨当局のトップとして、明確なメッセージを出してほしいとの声が上がっている。
市場関係者が驚きの声を上げたのは28日。ドルが朝方の取引で一時88.23円まで急落して8カ月ぶり安値を更新、1月に付けた14年ぶり円高水準まであと1円に迫った直後、財務相は最近の円相場の動きについて「異常ではない」との認識を示したと一部通信社が伝えた。
これまでも財務相は「輸出のために(円が)安ければ安いほどいいという考えはおかしい」(17日)、「常識的な範囲で(介入)はあり得ない」(同)と「事実上の円高容認スタンス」(シンクタンク)と受け取れる立場を表明してきた。
今回の発言も「これまでと変わらず」(外銀の為替責任者)として直接的な影響は限られたものの、前週末からドルがわずか1日で3円超下落する急ピッチなドル安/円高が進んだ直後の発言とあって、ドル/円を売り仕掛けた当の短期筋からも「そんなことを言って大丈夫なのか」(外銀のチーフディーラー)と案じる声が上がった。
しかし、その数時間後に発言は一転。正午過ぎには最近の円高が「やや一方に偏ってきているとの印象を持っている」とコメントした。市場では「財務相がついにスタンスを修正した」(都銀関係者)との見方から、短期筋が円を売り戻すきっかけとなった。
財務相がスタンスを修正したとの見方が市場で広がり、関心が一段と発言に集まり始めたことで、円相場は発言に神経質な値動きとなり始める。
だが、財務相は午後の講演でも、ガイトナー米財務長官との会談での発言が「いつの間にか円高是認と言う話になったが、そういうことは一言も言っていない」と日本が円高を容認したとの見方を否定したものの、同時に最近の円高は「一時的な現象」と言及。
それと前後して、円高が進んでいると記者団が問いかけたのに対し、財務相が「本当かい」と答えたと一部通信社が伝えると、市場では「いい加減にしてほしい。一国の通貨当局トップとしてメッセージを送っている自覚があるのか」(在外都銀の為替担当)と憤慨する声すら上がった。
財務相発言に強い関心が集まり円相場が敏感な反応を示したのは、政権を担って間もない民主党政権の為替政策が、まだ不透明なことも底流にある、と受け止める声がマーケットでは多い。
民主党が内需型経済へのシフトを強調していることで、為替市場では従来より円にやや上昇圧力がかかりやすくなるとの見方が大勢。その一方で財務相が介入に否定的な発言を繰り返したことで、ドル安地合いの中で自国通貨高にけん制発言を繰り返しているスイスやカナダ、豪、NZなどと比べて「日本は介入に距離を置いている」との見方が海外勢の間でも広がり、円が短期筋の買い仕掛けのターゲットになってきたわけだ。
この日も財務相は、午前に最近の円相場の乱高下は「誤差の内だ」としたが、正午前には再び「円高是認など一言も言っていない」。しかし、財務相発言を手掛かりとした短期筋の売買が一巡しかけたこともあり、市場では「さすがに見慣れてきた」(先の都銀)とようやく反応が鈍り始めた。
ある邦銀のチーフディーラーは「まだ政権を取って間もないせいか、発言に一貫性がなく慣れていない印象を受ける。短期筋は一言一句を捕らえて売買を仕掛けるかもしれないが、真意の見極めには少し冷静に、長い目で見る必要がありそうだ」と話している。
(ロイター 編集:田巻一彦)
最終更新:9月29日18時48分
ソーシャルブックマークへ投稿 1件
この話題に関するブログ 3件
関連トピックス
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます
- 中川氏急死、政界に衝撃=麻生氏「自民にダメージ」(時事通信) 12時16分
- 公明党 代表代行の浜四津参院議員、今期限りで引退[photo](毎日新聞) 3日(土)12時16分
- 中川昭一元財務相が死亡=自宅ベッドで、妻が発見−外傷なし、東京・世田谷(時事通信) 10時17分