a-friends tv asahi Mail Club http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 2009.2.25. ● 報道ブーメラン 第469号 ●  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ http://www.tv-asahi.co.jp/ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 〓 目次 〓 ■01■「元・新聞記者の嘆きと腹立ち」 スーパーJチャンネル コメンテーター/轡田 隆史 ■02■記者コラム 「G7取材の舞台裏〜『三位一体』の“異常”〜」 経済部 記者/外山 薫 ■03■「テレビ朝日アメリカ」サイト更新情報 ■04■編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■01■「元・新聞記者の嘆きと腹立ち」 スーパーJチャンネル コメンテーター/轡田 隆史 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 何を隠そう、ぼくは新聞記者を半世紀もやってきたニンゲンです。 何を隠そうだなんて妙な言い方をしました。もちろん、隠すほどのこと ではないのですが、このごろ隠したい気分になることが多いのです。 恥ずかしいからです。 なぜかと言えば、麻生総理モンダイです。オバマ大統領に会うために ワシントンに出発する日の朝の毎日新聞は、世論調査の結果を報じ ました。「麻生内閣支持11%」という、サンタンたる内容です。 まだ「11%」も支持者がいるのって、凄い!てえ見方もできるかもしれ ませんが、「11%支持」という数字は、ありていに言えば、「支持する 人」は、ほとんどいない、に限りなく近い。 つまり、国民は、このヒトをほとんど見限ったということでしょう。 「国民に愛想尽かしされた首相」が、アメリカ国民に圧倒的な支持を 受けているオバマ大統領と会うわけです。これを「国益」という視点か ら考えると、どうなるのでしょうか? しかも、ほんの数日前には、「盟友」中川・前財務・金融担当相の大 醜態をかばって、恥の上塗りをしでかしたばかり。そういう日本の総 理大臣を、オバマ大統領は、敬意と尊敬の念をもって迎えてくれるの でしょうか? 20日(金曜日)の『スーパーJチャンネル』でぼくは、拙い表現ではあり ましたが、そういう疑念について語りました。 新聞の政治記事には、そもそも、そういう発想そのものがないようです。 この日本を愛してやまないぼくは、アソウもナカガワもシンブンも、 これでいいのか?と切歯扼腕つづきで、歯が折れ、腕の骨も折れん ばかりです。 あまりに情けなくて、つい飲みすぎて、ほとんど「ナカガワ状態」になり かけてハッと我にかえることもしばしばです。新聞記者だったことを 隠したくなる、哀れな心情をご理解下さい。 お叱りを受けるのを覚悟で言うなら、麻生・中川的な政治家を育てた 責任のかなりは、新聞の政治記者にあると思っています。ぼく自身も、 新聞記者のいささかの先輩として、罪の深さは同じです。 ひとのことは言えない。 一部の識者のあいだでは、テレビ報道をバカにすることが「知的態度」 という思いこみがあるようですが、わが『スーパーJチャンネル』はじめ いくつもの番組は、新聞など及びもつかない奮闘をしているのです。 以上、酩酊して書いたわけではありません。念のため。 【筆者プロフィール】 轡田隆史(くつわだ・たかふみ) 1936年生まれ。59年、朝日新聞入社。編集委員、解説委員、編集 局顧問を歴任後、日本記者クラブ、日本エッセイスト・クラブ会員と して活躍中。テレビ朝日では『ニュースステーション』の“夜桜中継” の案内役としておなじみ、現在「スーパーJチャンネル」コメンテーター。 著作には「『考える力』をつける本」「時代を動かす言葉」ほか多数。 ┌──────────────────────────┐ ★☆ 来週は、西岡研介さんのコラムを掲載予定です。★☆ └──────────────────────────┘ ──────────────────────────────── 皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。投稿にあたって、 件名は「報道ブーメランご意見」「氏名(ペンネーム可)/性別/ 年齢/職業/掲載の可否」を明記のうえ、約300字程度にまとめて 下記アドレスよりお願いします。 ・読者投稿はこちら>>> mailto:mm-houdou@tv-asahi.co.jp ──────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■02■記者コラム 「G7取材の舞台裏〜『三位一体』の“異常”〜」 経済部 記者/外山 薫 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「三位一体」といえば、「父」と「子」と「聖霊」が、一体であるとするキリ スト教の教理であるが、そのお膝元のローマ・バチカンでの中川昭一 前財務・金融担当大臣の「もうろう」騒動は、日本の「大臣・役人・記者」 の異常な三位一体ぶりを炙り出すものとなった。 本人の大臣辞任に終わらず、麻生政権に大きなダメージを与えるも のとなった問題のG7=主要7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議後の 中川前大臣の「もうろう会見」は、翌朝の新聞では一切触れられず、 テレビでも、テレビ朝日(ANN)が、朝のニュースで伝えただけだった。 その後、AP通信が世界に問題の映像を配信したのを機に、日本のメ ディア各社がやっと報じ始めた。 「あの場にいた記者は、なぜ、大臣に酒を飲んでいるのでは、と聞か なかったのか」「なぜ、他のメディアは報じなかったのか」。 会見に同席した私は、帰国後、幾度となく聞かれた。 自戒をこめて真相を書きたい。 「もうろう会見」は、現地の午後3時45分に始まった。私は直前に、エレ ベーターから降りて会見場に入る中川前大臣を見ているが、足取りは しっかりしていて、特段の異変には気がつかなかった。 しかし、中川氏は席に座るやいなや、「よろしいっすかー」と切り出した。 G7後の記者会見は、通例であれば、財務省の広報室長が、会見をは じめる旨をアナウンスし、「冒頭、中川大臣から、発言があります」と促 す。 異変はなおも続いた。冒頭、G7本会議で日本が提案した新しい貿易 金融の枠組みを大臣から表明するのだが、JBIC(国際協力銀行)を、 ADB(アジア開発銀行)と言い間違える。ろれつも回っていない。目が 半開きで言葉に詰まる。果ては、日本銀行の政策金利は、0.1%なの だが、0.25%と言い間違えるし、居眠りまでしている。 現職の「財務大臣」の発言は、かなり重い。しかもG7後の記者会見だ。 外国のメディアも入っていて、世界が見ている。特に為替に関しては、 その一言がマーケットを動かす。 私は会見場の右奥に座っていたのが、私の傍らに立っていた財務省 の玉木林太郎国際局長や大臣秘書官らの心配そうな目と半開きの 口が印象的だった。 「これ、明らかに飲んでいるよね」。私の隣に座っていたダウ・ジョーン ズの日本人記者が、あまりの大臣の異常ぶりに、笑いを堪えながら 話しかけてきた。あの場にいた記者は、誰もがこの異常に気がついて いながら、一人たりとも、「大臣、体調が悪いのですか」とも聞かなか った。 質疑応答では、「大臣は会議で保護主義に関して何を主張しましたか」 といった、G7の本会議の中身に関する質問が続いた。新聞各社は、 朝刊の締め切り間際だった。G7本会議に出ていたのは、記者会見に 臨んでいた中川前大臣と日本銀行白川方明総裁と篠原尚之財務官 のみだ。「彼らからG7会議の発言を引き出さないと」。 大臣の異変よりも翌日の紙面にG7の結果を書くことが大事だったの だ。同行の日本人記者が、国民を向いていなかったということだ。 「もうろう会見」が始まって15分。G7後の記者会見は通常、所要30分 間なのだが、広報室長から「大臣の次の予定が迫っておりますので、 残り1問とさせていただきます」とのアナウンスがされた。 私も手をあげていたが、当てられることはなく、会見は17分で打ち切 られた。広報室長に何の予定かとたずねると、「フライトが迫っている」 との答えだったが、のちに2時間かけてバチカンを視察していたことが 明らかになる。しかも、中川前大臣は、バチカン美術館で警報を鳴ら すなど、奇行を繰り返していた。 今でも後悔している。「あと1問!大臣!お酒飲んでいるんじゃないで すか!?」。声を上げていればよかった。 大臣に近寄ろうとしたが、3人のSP(警護官)に遮られた。私はかつて の取材で泥酔状態の中川氏を見たこともあり、「これは、飲んでいる」 とは思ったが、もしかしたら、何らかの理由で体調がすぐれないのか もしれない。様々な可能性を考えた。 しかし、その後の取材で複数の同行筋から「本会議後に酒を飲んだ」 との証言を得た。テレビ朝日は、朝のニュースで「もうろう会見」を報じ る。のちにわかったことだが、中川前大臣は、数回にわたって、酒と 薬を服用していた。 日本で「もうろう会見」が騒動になり始めた頃、ある新聞記者から「新 聞はせっかく各社で口裏あわせて、取り上げなかったのに、テレビが やっちゃったから、書くことになっちゃったじゃない」と言われた。 ほかのテレビ局記者は、「中川さんって、酔っ払っていることよくある から、まぁいいかなと思っちゃった。それにうちの社が口火を切っては できなかったな」と言い訳した。これはもう大臣とメディアの「共犯」で ある。 実は、中川前大臣は、本会議の前夜に日付が変わるまで4人の記者 と、財務省の幹部と酒を飲んでいる。記者が大臣と酒を飲みながら懇 談をすることはよくある。私は、残念ながら呼ばれていない。 そこに相関関係があったかはわからないが、4社のうち、2社は新聞社 で、当日の夕刊で、公表前のG7共同声明の草案をスクープしている、 という事実は添えておきたい。 また、会見の1時間前に、中川前大臣は、玉木国際局長らと、女性新 聞記者を交えてワインを飲みながらランチをとっていた、ということが 明らかになり、この2回の懇談の席に呼ばれなかった新聞社は、その 後、詳細にこの「裏懇」を報じた。週刊誌やスポーツ紙も、面白おかし く書いている。 しかし、私は、懇談自体に出たことは、全く問題ないと思う。取材の一 環だ。それだけ、取材対象者に「食い込んでいる」ということで、胸を 張っていい。私も呼ばれたら絶対に参加している。問題なのは、あの 異常な会見を疑問に思っていながら、報じなかったことだと思う。 一方、同行した役人は、なぜ、中川前大臣をここまで酩酊させ、あの 記者会見に出させたのか。 同行した幹部は、ため息まじりに言う。「(飲酒は)いつものことだよ。 手に負えない」。別の幹部は、「大臣とまともに話をできる人間がいな かった」と、大臣と事務方が、満足な意思疎通ができていなかったこ とを明かした。 また通例であれば、財務省の国際局長は、日本国内の調整と非常時 のために国内に残るのだが、今回、麻布中学・高校・東大法学部(中 川前大臣は浪人している)を通じて同窓だった玉木国際局長は、今回、 中川前大臣に同行している。 「大臣と玉木さんはベッタリだった。大臣の取り巻きは、モノ申すことは なくて、これまでも、やりたい放題を許してきた。そのツケだよ。でも、 なんで止めなかったかと言われても、大臣が行くって言ったら、事務 方は止められないよ」(国際局幹部) その後、大臣の釈明は、二転三転した。「4F(=同省国際局を指す) は、治外法権で、事の深刻さが伝わってこなかった。証言もかみ合わ ず、これが国内で起きたことなら手を打てた」と、今回の処理にあたっ た同省官房幹部は漏らしている。 馴れ合いで、異常な大臣行動を黙認しようとしたマスコミ、大臣のわ がままを許し続けた役人、そして国を代表してG7に臨んでいるという 中川前大臣の自覚のなさ。「三位一体」となって、国際舞台で日本が 失ったものは大きすぎる。(了) ・ご意見・ご感想はこちら>> mailto:mm-houdou@tv-asahi.co.jp ・ANNニュースへの情報提供はこちら>> http://www.tv-asahi.co.jp/ann/info/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■03■「テレビ朝日アメリカ」サイト更新情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ─────────────────────────────────── 【アメリカンメディア トピックス】 ─────────────────────────────────── ◇米FCC、421TV局にアナログ停波を許可 ◇オバマ大統領の記者会見に5000万人 ◇「リモート・フリー・テレビ」は究極のCM方法か ◇若者層も熟年層も動画視聴 ・詳しくはこちら>> http://www.tv-asahi.net/news/media.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■04■編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「記者は警官の不祥事を書いてナンボやで」。 新人のサツ回り時代、先輩の説教の中に、必ずこの言葉が入っていた。 不祥事ネタを引っぱってきて、それを記事化する。 そのためには、警察組織の内部に深く食い込んで情報をとり、確認。 そして、「やめてくれ」と幹部に泣きつかれながら、 突き放して記事にする。 警察の不祥事原稿は、権力の監視につながる。 ベタベタな関係になりやすい、新人サツ回り記者に、 ジャーナリズムの本質を教えるものだったと思う。 翻って、例の中川会見。同席した記者たちに、 「権力監視」の役割は果たせていたのか。 経済ニュースを伝える仕事はしたが、 ジャーナリズムの本来の役目は果たせていたのか。 情報を売る商売だと考えれば、記者に「技術」は必要だ。 そのために「慣れる」ことも大事だ。 だが、そのために本質を忘れてしまうことはなかったか。 権力との距離のとり方は、いつも悩ましい。 当事者に近づかないと、ピンピンの情報はとれないことは自明である。 しかし我々は、絶対に“当事者”になってはいけない。 2週連続で、この話題を、小欄で取り上げるのは気が引けたのだが、 2人の執筆者が、「恥ずかしい」といい、「後悔している」と書いた。 もう一度、自分も自問しておきたかったのである。 (編集長 中村 直樹) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●テレビ朝日のメールマガジン 報道ブーメラン 第469号 <発行> 株式会社 テレビ朝日 http://www.tv-asahi.co.jp <委託> 株式会社 テレビ朝日メディアプレックス http://www.mediaplex.co.jp/ <報道ブーメラン編集人> 中村 直樹 <a-friends統括編集人> 宮原 香織 ◇メールマガジンの配信停止/配信追加 http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/contents/support/how_to_agg.php ◇よくあるお問い合わせ一覧 http://wws.tv-asahi.co.jp/apps/qa/faq_room.php ◇メールマガジンへのご意見・ご感想 http://www.tv-asahi.co.jp/a-friends/contents/views/ ・メールマガジンの著作権については、 「テレビ朝日著作権について」 http://www.tv-asahi.co.jp/rights/ ・個人情報の取り扱いについては、 「テレビ朝日プライバシーポリシー」 http://www.tv-asahi.co.jp/privacy/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2009 tv asahi All Rights Reserved. |