剣と魔法の世界では，強大な敵や困難に立ち向かうために，さまざまな種族がパーティを組んで冒険をする。そうした旅の仲間達には，人間をはじめとして，ドワーフ，エルフ，ホビットといった種族が登場することが多いが，今回はその中でも一，二を争うほどの人気のキャラクターである，エルフを紹介しよう。

　エルフの一般的なイメージといえば，長身，とがった耳，美形，俊敏，高い知性といったところだろう。軽戦士，射手，魔法使い，盗賊，暗殺者，魔法戦士など，多彩なクラスに就くことができる種族である。美形で万能というイメージが，多くのファンを獲得している，大きな理由の一つだろう。

　性格は，俗なことには興味を示さずドワーフと相性が悪いということになっている。ドワーフとの相性については諸説あるが，エルフが森の守護者であり，水や風を愛するのに対して，ドワーフは斧で木々を切り倒し，鉱山を掘って川を汚すことが原因であると言われている。また単に，ドワーフの頑固で実直な考え方や体型が，エルフにとっては許せないからだという説もある。
　といっても，エルフとドワーフは敵対しているわけではないので，出会っても問答無用に殺し合うようなことはない。少々異例だが，エルフとドワーフが手を組んで冒険しているケースも少なからずある。代表例としては小説「指輪物語」で，エルフの王子であるレゴラスと，ドワーフの王族ギムリが手を組んで戦っているし，国産ファンタジー小説の名作「ロードス島戦記」でも，ハイエルフのディードリットとドワーフのギムは同じパーティで冒険している。こう考えると，互いに嫌ってはいても，お互いの実力は認め合っているという状況が多いのかもしれない。

　ゲームに登場するエルフは，基本的に（人間から見て）中立であり，戦闘になることはめったにない。しかし，人間に敵対するダークエルフという種族も存在する。
　彼らは堕落したエルフとも呼ばれ，自分の利益のためなら人を殺めることも辞さない存在である。能力に関してもエルフと同じであるため，非常に俊敏であり，魔法を使うことなどもある。
　ちなみに今日のエルフ像には，「指輪物語」の影響が色濃く反映されているが，同書にダークエルフは登場せず，さらに神話/民間伝承上にもダークエルフの名は見られない。ダークエルフは比較的新しい種族なのだろう。
　ちなみに，特殊なエルフとしてはハイエルフという存在もいる。こちらは通常のエルフよりも寿命が長く，優れた魔法能力を持っていることが多い。ほかにも，エルフと人間との間に生まれた子供をハーフエルフと呼ぶが，こちらはなかなか苦労が多い種族で，エルフとしては寿命が短かく，人間としては寿命が長いというハンデを背負って生きてゆくことになる。ほかにもウッドエルフなど，エルフの亜種は多数存在しており，これらはエルフの人気を証明するいい材料といえるだろう。

　エルフの語源としてもっとも有名なのが，古ノルウェー語で妖精を表すアールヴ（Alfr）だと言われており，北欧神話に起源を見出せる。最初は妖精としての意味合いだけであり，容姿などは定まっておらず，生まれたばかりの子供を妖精界にさらい，その代わりに醜い子供を置いていく「とりかえっ子」を行ったりする，いたずら好きで陽気な妖精だった。ところがいつの頃からか人間型の妖精ということになり，「指輪物語」や「ホビットの冒険」で，J.R.R.トールキンが「美形でとんがり耳を持ち，俊敏である」といった明確なエルフ像を作ってからというもの，巷で描かれるエルフはみな，トールキン型のエルフとなっていったのである。