きょうの社説 2009年10月4日

◎欧州へコメ輸出 攻めの姿勢を持ち続けたい
 国内産の農林水産物・食品の輸出を政府が推進するなか、JAグループ石川がロンドン を拠点に欧州での石川県産米の販路開拓に本腰を入れ始めた。欧州への農作物輸出はまだまだ少ないが、日本食ブームの広がりで需要拡大の可能性は大きいとみられ、コメどころ北陸として積極的な取り組みが望まれる。

 新潟を含む北陸4県の自治体、農業団体などは07年に農林水産物輸出促進協議会を組 織している。コメの輸出実績はまだ乏しく、決して易しくはなかろうが、農業者が意欲を持って輸出に努力することが日本農業の体質、競争力の強化につながると認識したい。

 政府は安価な外国産品からの守りばかりではなく、高品質を武器にした「攻めの農業」 で、農林水産物・食品の輸出額を2013年までに1兆円規模に伸ばす目標を掲げている。日本の食材・食品は割高でも安全でおいしいという高い評価と、アジアなどの富裕層の増加、さらに日本食人気に伴い、04年に2954億円だった輸出額は、08年で4312億円と約1・5倍に増加した。

 08年の輸出額は水産物の減少と世界的な景気悪化で前年よりやや減ったが、農産物の 輸出は前年比217億円増の2437億円と増え続けており、攻めの姿勢を失ってはならない。

 輸出先の上位は香港(795億円)、米国(724億円)、韓国(491億円)などで 、欧州は合わせて299億円にとどまっている。品目別では、農産物が全体の半分以上を占めるが、加工食品が主であり、コメ・穀粉は245億円という状況である。

 欧州への輸出額はまだ少ないとはいえ、08年は前年より11%増の伸びをみせている 。欧州の日本食レストランは近年急速に増えており、農水省の06年のまとめで店舗数は2000店余に上る。欧州での販路拡大余地はそれだけ大きいといえ、政府が策定している輸出戦略の強化を求めたい。

 JA石川グループが石川米を扱うロンドンの小売店などをアンテナショップに認定した のは、本格的なマーケティングの第一歩として有効な方法であろう。

◎東京の五輪落選 景気浮揚の好機逃した
 2016年夏季五輪の開催都市選考レースで、東京は惜しくも「大魚」を逃した。五輪 の東京開催は、世代を超え、国民が共通の夢を見るチャンスだった。日本を覆う閉塞(へいそく)感を打ち破り、景気浮揚にも大きく役立っただろう。そのまたとない機会を失ったのは残念というほかない。

 1964年の東京五輪は、日本が若く、活気みなぎる時代だった。あのときの五輪開催 が当時の日本人に大きな自信と勇気をもたらしたように、2度目の東京五輪も、自信喪失気味の日本人が再び元気を出して立ち上がる格好の目標になったはずだ。ひとたび方向が定まれば、一致団結して、ひたむきにゴールを目指す国民性だけに、スタートラインに立つ権利がぜひともほしかった。

 直前の下馬評では、東京は最も劣勢との見方もあった。1回目こそ最下位を免れたが、 2回目の投票では1回目より票を減らし、リオデジャネイロやマドリードに完敗した。「南米初開催」を訴えるリオへの心情支援が、最終的に大きな流れとなった格好である。

 東京は財政基盤や施設の充実度などでい評価を得ながら、2回目の開催の意義が伝わ らず、世論の支持という点でも他都市に遅れを取った。昨年6月の1次選考で1位評価を受けたにもかかわらず、巻き返しを許したのは、石原慎太郎都知事が常々言っていた通り、「日本は狡知(こうち)にたけた外交は不向き」だったからでもあろう。

 石原知事は会見で、20年大会への再立候補について「都民や国民の意見をよく聞き、 JOCと考えを交換しながら、積極的に考えていきたい」と語り、含みを持たせた。リオが12年大会に続いての立候補だったように、連続挑戦は誘致運動の経験が生かせる有利さがある。ロビー活動が苦手な日本の「弱点」をいくらかカバーすることも可能だろう。

 ただ、国内の支持率が低いままでは、再立候補は難しい。五輪期間中、あれほどテレビ 中継に夢中になりながら、自国開催にはやや冷淡という理由がよく分からない。メディアの報道も含めて詳細な分析と対策が必要になる。