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ゲームファンを意識してるのは好感

「PlayStation Network」責任者に聞く、今後の展開〜「映像配信拡大」「コミック」「PSP goゲーム」はどうなる?〜
SCEのネットワーク戦略の立て直しに成功しつつある正田純二氏へのインタビュー。

海外勢に制されつつあるダウンロードソフト市場、ソーシャルアプリ市場

ダウンロードソフト市場は、AppleのAppStore、MicrosoftのXbox Live Arcade、ValveのSteam、ソーシャルアプリ市場もfacebookと中国の巨大SNSが握っています。電子書籍においてはAmazonのKindleとAppleの競争も見逃せません。

デジタルコンテンツ配信という分野で、日本は優秀なデバイスを作れているにも関わらず、ワールドワイドでの存在感がありません。日本の携帯電話のコンテンツ市場は、世界にも類を見ないほどの秀逸なコンテンツ配信市場に育ちましたが、世界に出て行けない。まあ海外に出て行くのが馬鹿馬鹿しくなるほどの閉ざされた楽園であるとはいえ・・・・。

ゲーム機においては、Xbox Live Arcadeが非常に育ってきており、特に海外市場では1000円〜2000円の価格帯のゲームが100万本近い数字を狙えるマーケットになっています。Xbox Live ArcadeとSteamは100円のアプリがあふれているAppStoreとは、完全に異なる性質のマーケットを形成できています。

iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた
記事に対する意見は2つに割れていますが、コンテンツの中身が良ければ高くても売れるというのは間違いで、マーケットごとの性質が大きく左右するのが現状です。無論、供給側はマーケットの性質にあわせた売り方を考えるのが仕事ですが。

携帯電話、iPhone、DSiWare、WiiWare、Xbox Live Arcade、PlayStation Network、Steamと、スクウェアエニックスは、ほぼすべてのダウンロードソフト市場にソフトを供給しているパブリッシャーであり、現状はどの市場でどういうソフトをどんな風に売ったらいいかを模索しているのでしょう。日本の大手パブリッシャーにとって、ダウンロードソフト市場はリサーチ段階です。


任天堂への失望とSCEへの期待

では日本のゲーム機メーカーはどうか?

任天堂は最大の普及台数をほこるWiiにおいて、WiiWareマーケットを育てるのに失敗しつつあり、今世代での巻き返しはなかなか困難になっています。DSやWiiにはカジュアルユーザーが多く、ネット接続率が低いというユーザー層の性質の問題が大きいのですが、任天堂の誤った施策の影響も大きいですね。

体験版の軽視やショッピングサイトの出来の悪さ、そして内蔵ストレージの少なさによるコンテンツ制限の厳しさ。SD起動ができるといっても、Wiiの内蔵ストレージにコピーしてから起動しており、PSPのメモステのように大容量のゲームが起動できるわけではありません。

ダウンロードソフト市場で大容量が必要なのかといえば、必要です。事実、マイクロソフトは、Xbox Live Arcadeにおいてソフトの容量制限を徐々に拡大しており、50MB→150MB→350MB→2GBと、配信最大サイズが大きくなっています。

HDDを搭載していないモデルが存在するため、サードパーティの意見を聞き、メモリーユニットの容量を考慮しながら、少しずつ制限を取り払っているのですね。サードパーティの意見がなかなかフィードバックされない、どこかのプラットフォームとは違うわけです。

結果として、マイクロソフトは数百円の安物ゲームではなく、1000円以上の価格帯のゲームが売れるマーケットを育てることに成功しました。特徴としては、グラフィックは美麗な3D表現でも、内容は2Dのゲームが多いこと。フルプライスのゲームは3D空間を動き回るゲームが多く、ダウンロードソフトは実質2Dのゲームが多いことで、うまく棲み分けています。フルプライスのゲームの合間に遊ぶにも適しています。

一方、SCEはマイクロソフトのXbox Live Arcadeをよく研究しており、PSNもXBLAのように価格の高いコンテンツでも売れるマーケットに育ってきています。薄型PS3の投入で普及に弾みがつき、さらにマーケットが拡大する期待感が出てきました。


ゲームファンを重視した施策

SCEの基本姿勢として好感がもてるのは、ゲームファンを重視していること。PSはゲーマーにとってわかりやすいアイコンですからね。
プレイステーション・ユーザーというのは、根本的に「まずはゲーム」が重要です。ユーザー視点で見れば、まずはゲームの体験版やトレーラー映像といった「無料」のコンテンツを目的に、PlayStation Storeを利用されます。次に最近は、ゲームに関する有料の追加コンテンツの売上が、PS3、PSPともに、非常に好調で、相当数いらっしゃいます。
そういうユーザー層を意識した上で、まず親和性が高いコンテンツとしてアニメを増やし、次に映画・ドラマ・ミュージッククリップとコミックを配信する。非常に明快なストーリーです。

確かにある時期、SCEはとても迷走していました。しかし今や、ノンゲームと言い出したSCEはゲームユーザーを重視しており、ゲーム会社の代表格だった任天堂のほうがよほどノンゲーム路線を突き進んでいます。

PS市場を支えたゲーマーがSCEにそれを望んだからであり、SCEが謙虚にユーザーの声に耳を傾けたからでしょう。事実、PS Storeのインターフェースの改善、PSPでのPS Storeの展開、アドホックパーティなど、サービスの内容にゲームファンを大切にする姿勢が現れています。


携帯機のコンテンツ配信はどうあるべきか

もう1つ、SCEの方針で感心するのは、「据置機と携帯機で同じコンテンツを楽しめる」をできる限り満たそうとしている点です。映像コンテンツとゲームソフト(PSアーカイブ)双方で、その努力を続けています。
iTunes Storeでの映像配信が実現していない日本の場合、PSN向けくらいしか選択肢がない。アクトビラの場合には一部機種のみの対応で、しかも長時間の変換作業を必要とするし、携帯電話向けの配信は、画質と映像の長さの点で大きな問題がある。

とはいえ、現状ではHDの映像コンテンツをPSPに持っていけません。対応を検討しているようで、そこは期待したいですね。BDとDVDの併売が続いている状況では、なかなか難しい問題もあるでしょうが。

逆にコミック配信については、PSPのみ。これは単純に、大画面でコミックをそのまま表示してどうするの、というコンテンツの性質の問題ですね。コミック配信は、リブリカと組んだことで、潤沢に供給されます。すべてではないものの、ほとんどのコンテンツがPSPの画面サイズにあわせた調整をされ、『ドラゴンボール』のようにフルカラーの作品も。

Wiiでコミック配信を立ち上げるはずだったリブリカがどうしてWiiでのビジネスを諦めて、PSPに注力しているのか。事情は不明ですが、Wiiにおけるコンテンツ配信市場の現実を見た思いです。



おまけ

最後に、PSP goでUMDゲームがプレイできるかどうかという点。海外では正式発表するまでは、「絶対にない」などと断言する傾向もあり、一部におかしなデマも流れたようですが、現状はまだ「検討中」が正しいようです。
 では、その「検討の結果」はどうなったのだろうか? 同社広報からの、現状での正式な回答は以下になる。
「継続して検討は続けて参りますが、現時点でご案内できる情報はありません」
まあ短期間で解決するかどうかはわからないし、すべてのゲームが対応できるかも不明なので、購入するなら、一応、覚悟はしておいた方がいいでしょう。

パッケージとダウンロードの併売タイトルについても、基本的には多数のタイトルで同時発売していくようです。
今後については、多くのタイトルで、同時発売を検討していただいています。その中には、プラットフォーム隆盛のキーとなるタイトルも含まれます。それらを、順次発売させていただく予定です。
当然『モンハン』次回作は、ダウンロード併売でなければならないでしょう。有力タイトルのダウンロード併売が進むのは、PSP goを持ってないユーザーにも、メリットのあること。ゲームファンの快適なゲームライフのためにもがんばって欲しいですね。

まあAmazon専売タイトルのような形も出てきてますから、いきなり「今後はすべて併売しか認めません」とはいかないでしょう。SCEはそこまで頭の硬いプラットフォームホルダーではない。PSPの世代で「問題点の洗い出し」と「調整」をおこない、次の世代でさらに一段先へ進む。チャレンジャーこそが先行者利益をつかむことができます。


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