国技館に朝青龍吹っ飛ぶ「ユキオ」コール

　訪米から帰国したばかりの鳩山由紀夫首相（６２）が２７日、東京・両国国技館を幸夫人（６６）とともに訪れ、大相撲秋場所で４場所ぶり２４回目の優勝を果たした横綱朝青龍（２９）に内閣総理大臣杯を手渡した。表彰状を読み終えると、この日誕生日の横綱を「おめでとう」と祝福。朝青龍と笑顔で、土俵上でのカメラ撮影にも応じた。政権交代の主役登場に、場内も「ユキオ～」「鳩山～」の大歓声。鳩山氏は全方位に頭を下げ、手を振り、友愛精神全開で初体験を終えた。

　友愛がモットーの鳩山氏らしい心配りだった。表彰状を読み上げ、再びマイクに向かった。政権交代を果たしたばかりの総理が何を話すのか、注目の中、鳩山氏は「（優勝と）併せて、今日は朝青龍関のお誕生日とうかがっている。おめでとうございます」。２９歳の誕生日と４場所ぶりの優勝が重なった横綱に、観客と拍手を送る心憎いパフォーマンス。４０・８キロある内閣総理大臣杯も、ほぼ助けを借りずに手渡した。朝青龍は、優勝インタビューで「総理にお越しいただき、ありがとうございました」と笑顔をみせた。

　取組が通常より長引き、鳩山氏が土俵に登場したのは午後６時。ＮＨＫ生中継終了後というハプニングはあったが、胸元には定番の金ネクタイを光らせた。「これより３役」直前、幸夫人を伴い場内に入ると、拍手が起きた。「漢字間違うな」とヤジが飛んだ前任者とは対照的。鳩山氏の周辺に観客が押し寄せ、ＳＰが緊張感を漂わせても、握手や写真撮影に気軽に応じた。「ユキオ～」「鳩山～」コールが起き、「みゆき～」と夫人への激励も。夫妻は、一緒になって声がする方向すべてに体を向け、手を振り、頭を下げる「友愛外交」で応えた。

　朝青龍対白鵬の一番が優勝決定戦にもつれ込むと、準備のため主役が去った土俵の下で、鳩山氏が主役を奪った。場内全体が「はっとやま、はっとやま」コールに包まれた。珍しいケースだという。７割台という高支持率で船出した内閣に対する、国民の期待をうかがわせるシーンだった。

　就任直後の首相が、東京場所の千秋楽に国技館を訪れる“慣例”は、民主党の鳩山内閣でも受け継がれた。ただ、国技館入りの３０分前までは官邸で、平野博文官房長官や菅直人副総理兼国家戦略担当相らと会い、内政課題の報告を受けた。日本航空の再建問題、亀井静香金融担当相が唱える中小企業の借入金や住宅ローンの返済猶予制度創設への対応など、難題は山積み。ゆっくり休日を過ごす余裕はなかった鳩山氏だが、表彰式後、国技館近くのちゃんこ料理店に立ち寄り、幸夫人らと食事をとった。

　外遊や国技館デビューも終わり、２８日からが本格始動。この日の期待に応える働きができるのか、試練の時がいよいよ始まる。

　［2009年9月28日8時43分　紙面から］