戦争犯罪と軍律会議 補足に入る前に、一般的な戦時犯罪というものについて簡単に説明します。戦時犯罪は大 きく分けて二種類あります。国際法違反(交戦法規違反)と自軍に対する違法な敵対行為の二 種類です。 交戦法規違反は「 war crime 」と呼ばれ、戦争犯罪や戦時重罪、戦律罪などと表記される 事が多いようです。自軍に対する敵対行為は一般に「戦時反逆 war treason 」に分類されま す。
戦時反逆に該当する行為については、当事国が(国際慣習の枠内で)自由に定める事がで き、国際法に違反していない行為も犯罪として処罰することが可能です。わかりやすい例 をあげると「間諜」があります。間諜・スパイ行為は国際法で認められていますが、当事国(さ れた側)の軍事規則に違反するという理由で処罰を受けます。 その他、敵軍の将兵を匿うなどの行為も国際法には違反しませんが、一般に敵軍幇助として 戦時反逆の罪(軍律違反)で裁かれます。敵軍の侵入を誘導するなどの行為も、交戦法規に は違反しませんがやはり軍律違反で裁かれます。 交戦法規違反「 war crime 」についてですが、交戦法規に違反するような行為は、軍の安 全を害する行為や軍事行動を妨害行為する行為として軍律にも違反する事になります。です から国際法違反についても特殊な例を除いて軍律会議によって処罰されます。
上記、戦争犯罪と軍律会議で説明したように、国際法に違反しない行為であっても、占領 軍に対して何らかの敵対行為を行う目的での偽装と判断されれば「戦時反逆」に該当する ので処罰対象になります。
敵国の軍人を、自軍の勢力圏内(必ずしも占領地域に限らず、実質的な勢力圏内・作戦地 域)で敵国の兵士を発見した場合、軍律が適用されます。正規軍人が民間人などに偽装した からといって即交戦法規違反になるわけではありません。これは偽装した軍人によるスパイ行 為(間諜)が交戦法規に違反しないという事からも明らかです。 しかし、軍律では交戦法規に違反していなくても、自軍にとって有害であると認めた場合には 処罰対象とする事ができます。敵国の軍人が制服着用で勢力圏に入れば「軍事的脅威」と して無条件で攻撃の対象になります。偽装した敵国の軍人についても「軍事的脅威」であ ることは変わりないので「戦時反逆 war treason」を構成するとして処罰が可能です。 南京において安全区に潜伏した兵士についても同様で、敵対行為の有無とは無関係に「戦 時反逆 war treason」を構成しますから処罰を避ける事はできません。
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