2009年9月29日0時36分
16年夏季五輪の開催都市を決める10月2日の国際オリンピック委員会(IOC)総会に向け、東京五輪招致委員会が盛り上げに躍起だ。東京を応援するために総会があるコペンハーゲンに向かう「弾丸ツアー」には、多数の東京都職員が自費で送り込まれる。背景には、IOCに指摘された「五輪支持率の低さ」を何とかしたいという焦りがある。
■コペンハーゲンへ約250人
10月1日、約250人の都民らがコペンハーゲンに向けて出発する。招致委が企画した「開催都市決定 東京応援ツアー」。一般向けだが、参加者の3割に当たる約70人が都職員だ。
8月中旬から募集を始め、4日間で宿泊費(ホテル1泊、機中2泊)込み7万4800円と割安だったが応募は低迷。締め切り予定だった今月11日時点で集まったのはわずか約80人だった。招致委は締め切りを1週間延ばし、都や外郭団体、協賛企業に内部での募集を依頼し、ようやく定員に至った。
都職員はいずれも自発的な参加といい、費用は自己負担。招致委幹部は「五輪を待望する熱意を現地で示すには、人数が必要」と話す。ツアーは総会がある10月2日早朝にコペンハーゲンに着き、市庁舎前の特設大型モニターで総会の中継を見る予定だ。
招致委の要請を受け、都議10人も29日から公費で現地を訪れる。マラソンなどで「世界一周」に挑戦中のタレント、間寛平さんも30日に現地入りし、一行が出迎える。「応援に来た様子が現地テレビなどで流れれば、IOC側にも世論の高まりが伝わるだろう」と招致委幹部。地元メディアに取材を依頼しており、東京のPRに結びつけたいという。
■支持率、独自調査で「81%」
招致委が世論の盛り上がりにこだわるのは、支持率の低さが招致の成否に影響するのを恐れるためだ。
今年2月にIOCが実施した候補4都市の支持率調査で、東京は最低の56%だった。08年と12年の夏季五輪候補都市では、最低だった大阪とニューヨークがいずれも落選。支持率は招致結果を左右する要素とされる。
IOC調査に落胆した招致委は今年4月、独自の全国調査を行い、「81%」との結果を得た。ただ、この調査はIOC評価委員会が東京を視察し、大きく報道された直後に実施されている。関係者は「世間の関心が集まった時期を狙った」と明かす。
今月2日に公表されたIOC評価報告書は、56%の支持率を「相対的に低い」と指摘。招致委内には「IOC委員の投票に影響しては困る」との危機感が強まっている。
石原慎太郎都知事は25日の定例会見で、招致委の独自調査の結果を念頭に「盛り上がってきて、非常に心強い」と強調した。だが、都幹部は「知事も実は低さを気にしている。56%という数字は、まさに呪縛だった」と説明する。
支持率に悩む東京が今、期待するのは、28日にIOC総会出席が正式発表された鳩山首相。石原知事は同日、「大きな推進力になると確信している」との談話を発表した。(岡雄一郎、別宮潤一)