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 第11回
 もーろー日記
 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!



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2009年09月30日
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第12回 映画館側から見たアニメ映画戦略 ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(1)
    -東京テアトル・太田取締役&沢村番組編成担当に聞く-

斉藤守彦

 従来リクープの軸足をパッケージ・メディアに置いていたアニメ作品だが、昨今ではDVDマーケットの縮小もあり、映画館での上映が見直されていると聞く。「これまでは、パッケージ・メディアのプロモーションのために、地上波の深夜ワクを買い取ってオンエアしてたんですが、この、いわゆる“ナミ代”が、いつまで経っても下がらない。ならば映画館で興行を行おうという声が多くなってきたようです」とは、さる事情通の弁。
 また「自分たちの作ったアニメ映画を映画館で上映し、お客さんが見ている光景をぜひとも見たい!!」という、スタジオ側の声も反映されることとなったようだ。
 そのきっかけとなったのが、アニプレックス「劇場版空の境界」全七章の東京・テアトル新宿における興行的成功であり、8月8日から公開された第七章も予想通りのヒットを記録した。
 その「空の境界」や「時をかける少女」などで、アニメ・ファンの認知度も高いテアトル新宿に加え、この8月22日から従来の1スクリーンから2スクリーン体制となり、「ホッタラケの島」「センコロール」、そして「空の境界・第七章」と、旬のアニメ映画をズラリならべた番組編成で話題を呼んでいる池袋テアトルダイヤ。両劇場をはじめ、都内で複数の映画館を経営する、東京テアトルの太田和宏取締役映像事業部長と、番組編成実務を手がける映像企画部マネージャー・番組編成担当の沢村敏さんに、これからの同社におけるアニメ映画戦略を聞いてみた。アニメ映画を上映する、映画館の立場からの見解や戦略を、ぜひお読みいただきたい。

【「アニメ色を、あまりつけるな」と、指示を出した。】

−テアトルダイヤの新しいスクリーンって、キャパ何席でしたっけ?
沢村
71席と143席です。

−かつてのテアトル池袋アニメシアターみたいに、1年中アニメを上映するのではないと思いますが、都内に複数の映画館を持っている御社が、アニメ映画を今後どう扱っていくのか、今日はそれをうかがいたいんですよ。
沢村 
つくづく思うのは、1本当たった映画があると、それによってつくイメージって大きいですねえ、映画館の。2006年に「時をかける少女」と「パプリカ」を上映して「アニメ、やってるんだねえ」というイメージがあり、2007年から「空の境界」上映し続けているんで、そのイメージが強いんでしょうね。

−テアトルダイヤは「センコロール」が入っているらしいですね。
沢村 
71席のほうに振り分けたら、全回満席です。
太田 
テアトルダイヤは2スクリーンにして良かったですよ。

−これから色んなアニメが出てきますけど、テアトルさんの映画館としては、それほど本数はやってないんですねえ。
太田 
数はやってないですよ。むしろ「アニメ色を、あまりつけるな」と沢村に言ったぐらいです。逆にそこが良いのかもしれない。確率が高いんですよ。

−当たったものしかやってない。
太田 
そうなんですよ。感じから言うとある程度矛盾しているんですが、数字の底上げは、今邦画が弱いからアニメに頼らざるを得ないけど、アニメ色をつけていくと、やっぱり本興行にも影響が出てくる。
確実に当たるものを選別していくほうが、何というか、映画ファンには「アニメ色がなんとなくあるなあ」程度でありながら、アニメ・ファンには「あそこがやってるのは、確実に特色がある」というバランスが出せるかな。だから、数は多くないですよ。

−常々言われているように、「作家と対話が出来る映画館」というポリシーの中に、たまたまアニメがあったということですね。
太田 
おっしゃるように、そうです。

−でも、ヒットしたアニメ映画が多いから、アニメをやってくれというオファーも多いんじゃないですか?
太田 
多いよねえ。
沢村 
「空の境界」みたいな成功例が出てきて、それはひとつのビジネスモデルとして今までなかったし、DVDも含めて成功している。だからこのパターンで、というオファーは多くなりましたね。同時に情報も集まりやすくなりました。

−編成される立場として、何を基準に上映するかしないか決定されていますか?
沢村 
僕自身の中では、特にアニメも邦画も分けていません。基本的に作家の作品であるかということが大きいと思いますね。
当然、作家の持ち味や特徴が反映されているものには惹かれます。あとは座組のところで、コアなところの指数を計ってみたり。そういうことは当然やっています。

【アニメ・ファンの「3C」攻略が、コンセプト。】

 映画館の上映番組の編成という仕事は、早い時は1年先の作品を、どの映画館で、いつから上映するのかを決めなくてはならない。
 いわば1年先に何が流行り、それが興行にどのような影響を与えるかまでを読まなくてはならない、大変な仕事だ。そこには戦略的な思考も、大胆な行動力も必要とされてくる。

−これだけ当たってる作品があると、勝ちパターンが出来ちゃうじゃないですか。そのパターンにハマるものを選んでいるのか、そうではないけど、うまく行きそうだという作品を選んでるのか?
太田 
今度テアトルダイヤを2スクリーンにしましたので、新宿とダイヤをグルーピングすることによって、そのパターンが出てくるのかな。というのは、今までダイヤは番組が縛られてましたから。空いた時にしか出来ない。新宿もアニメはレイトで空いた時があればやってた。もともとアニメは、番組が空いたとこでやる新人作家的のものが良いんじゃないかと言っていた。
そういう隙間を埋めてたのが、ダイヤが2スクリーンになることで、展開がようやく出来るようになったということですね。実際ダイヤを2スクリーンにする時、何回も経営会議やったんですが、その時ダイヤの71席のほうを年間何本展開するかっていうのを、4本って言ったんだっけ?
沢村 
そうですね。4本。
太田 
まず4本、新宿と合わせてやっていこうと。で、キーワードは「3C」。よく言われるように、クリエイティビティ、コミュニティ、コレクションという、アニメ・ファンの生態で言われる3Cでやっていこうというのが、コンセプトです。

−やっぱりねらい撃ちしてるわけですね。
太田 
そうです。ダイヤもアニメ専門にはしないって形にしたんです。だけど、軸はアニメで作ろう。それが今後新宿と合わせてやってくことで、軸が出来てくるのかな。

−それって微妙なバランスですよね。
太田 
微妙です。新宿が2スクリーンとかあれば。まあ老朽化しているので、再開発の際には2スクリーンにしますけど。

【テアトルダイヤ2スクリーン化は、大成功。】

−池袋の地域性を加味して、テアトルダイヤを2スクリーンにしたんですか?
太田 
加味しました。1年ぐらいかけて、レイト上映とかを見ていると、かなり動きがあったんです。これはポテンシャルが高い。その上で2スクリーンにできないか?と聞いたら技術的には可能だと。

−池袋というマーケットは、アニメだけではなくて、他の作品もやりようによってはもっと伸びる、その可能性を見出したんですか?
太田 
そうです。それはお前のほうが、あったんじゃないの?池袋ってポテンシャルあるの?
沢村 
あると思いますね。特にサンシャイン通りに関連したショップも多いですし、目的が映画館だけじゃないので、他の地域より強いと思います。そのへんの回遊性とかも、優れてるんじゃないかな?

−アニメ映画を都内複数の映画館に編成している時、地域性を考慮して編成していきますか?
沢村 
いや、作品によりますよね。
太田 
基本的にクールアニメでしょ。今、殻にしているのはクールアニメ。「アンパンマン」とかはまた別で。ただクールアニメっぽいものって、渋谷がダメなんですよ(笑)。

−渋谷、ダメなんですか?
太田
「空の境界」をシネセゾン渋谷でやったことがあったんですよ。なぜか分からないけどダメ。1回やってダメなんで、もうやめちゃったんだけど。

−でも、渋谷は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」が大ヒットしているじゃないですか?
太田 
ヱヴァだと客層が広いんですよ。一般映画として認識される。

−それもまた、微妙なところですよね。
太田 
そうなんですよ。だから「空の境界」みたいな映画って、思想的な部分が強くて、一般の人の映画ではないので、渋谷向きではないのかもしれません。

−シネセゾン渋谷の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、ひと興行でいくら行きますか?
沢村 
興収で6500万円です。

−ちょっと近来ない成績ですね。
太田 
いやあ、ないですよ。

(2)  アニメ・ファンと鉄道マニアの生態は、共通している?
(3)  ネット主体の宣伝でヒットした「センコロール」

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

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posted by animeanime at 2009.09.30
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