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2009年08月31日
0藤津亮太のテレビとアニメの時代 ][ 第9回 '70年代の到達点としての'79年 ]
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第9回 '70年代の到達点としての'79年 後編

藤津亮太

 番組を見ると、アニメがブームになっているということが端的に感じられる番組が二つある。
 一つは、『未来少年コナン』を皮切りに、 NHKが週1回30分放送というフォーマットのTVアニメを放送開始したこと。
 もう一つは、特撮番組である「ウルトラマン」の新シリーズ『ザ・ウルトラマン』がわざわざアニメで制作されたこと。
 どちらも「アニメ」がある種のトレンドだったからこその企画といえる。

 また'78年に始まった日本テレビのチャリティ番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」の中で、テレフィーチャー『100万年地球の旅 バンダーブック』が編成されたことも印象的な出来事といえる。
 虫プロ倒産後、久しぶりにアニメ制作を手がけた手塚治虫だが、その『バンダーブック』にの中核には「愛」と「ロマン」が据えられていた。これは間違いなく、「愛」と「ロマン」を売りにした、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』以降だからこその内容といえる。
 このように'78年になると劇場版『宇宙戦艦ヤマト』の影響が、TVアニメにも見られるようになった。具体的にいうと、玩具主導のロボットものが一服し、「宇宙SFもの」が増加した。ただしこれは『ヤマト』だけではなく、'77年にアメリカで、'78年に日本で公開されブームを巻き起こした『スター・ウォ-ズ』の影響も非常に大きい。

 この状況を状況を『TVアニメ25年史』(徳間書店)は'78年の項をこう記している。
「『スター・ウォーズ』による、世界的な宇宙SFもの大ブームの影響をまともに受けた作品群が際だって目立った。『キャプテンフューチャー』『銀河鉄道999』『スタージンガー』『ハーロック』さらに『ガッチャマン』『ヤマト』もPARTIIが放映されている。とにかく、宇宙というだけでロマンと目新しさを感じさせた時代であった。――この年の夏公開された劇場用長編『さらば宇宙戦艦ヤマト』と、翌年の『銀河鉄道999』の大ヒットの背景には、TVアニメでつちかわれた隠れアニメファンの顕在化、世界的宇宙SFものブームの2大要素があったのである」
 ここで『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『SF西遊記スタージンガー』がいずれも松本零士が関わった作品であることは一点無視できない。というのも現在ではほとんど語られることがないが、第1次アニメブームは、松本アニメブームでもあったからである。
 が、これについてはまた別の機会に触れることにしよう。

 ここで確認したいのは、'77年から'79年にかけてのヒット作の登場により「TVアニメでつちかわれた隠れアニメファンの顕在化」が起きた、ということである。
 そして、ファンの顕在化は、興行成績や観客動員数といった直接的数字が出てくる劇場版において明らかになった。その点で、「アニメブームという事件はまず劇場で起きていた」のだ。
 それに対しTVは、劇場での変化を追いかける状況にあった。その事件の余波は押し寄せてきつつあるが、TVアニメはまだ「アニメブームを牽引しているアニメファン」が見えていない。ひとつには小学校低学年に団塊ジュニアという人口のボリュームゾーンがあり、マーケティング的にはそちらにフォーカスするという選択肢も十分にあったからだ。
 だからであろう。『TVアニメ25年史』(徳間書店)は'79年の項に以下のように記す。
「飛躍的に作品本数が増えた、この年から数年間が、まさしくTVアニメの黄金期となる。動物物、ロボット物、ギャグ物、メルヘン物、魔女っ子物、スポ根物、ホームコメディ物、宇宙物と、ありとあらゆるジャンルのオンパレードであった」

 アニメは人気がある、というのが既成事実となっていても、「どんなアニメが誰に人気があるのか」まではTV局もまだ意識ができていない。その結果が、多様な企画となって現れていたのだろう。
 その後、『機動戦士ガンダム』のヒットにより、10代のアニメファンの存在完全に社会に認知されることになる。それが具体的にTVアニメの企画に反映されていくのは当然ながら'80年以降のこととなる。
 そういう意味では、'79年は歴史的な年であった。それはTVで『機動戦士ガンダム』、『赤毛のアン』、映画で『ルパン三世 カリオストロの城』『エースをねらえ!』『銀河鉄道999』といった傑作が並んだからではない。
 アニメファンを意識してアニメを作るということが本格的に始まる直前の時期であり、その多様性が'70年代を通じて形成されてきた「TVアニメ」というイメージの一つの到着点であるように思うからだ。

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posted by animeanime at 2009.08.31
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