聖女淫辱

〜『ユトナの聖女達』より〜

作・おき わいお

「んんんっ……んぶぅううっ……」
 着衣を乱した栗色の髪の美しい女が体を揺するたび、くぐもった呻きと粘着質の音が響いていた。
「ほら、どうした。もっと腰を振りな」
「右手がお留守だぜ。そんなんじゃいつまで経っても終わらねえぞ」
 美女の周りを囲んだ男達が、口々に囃す。彼女は仰向けになった少年の腰に跨って自ら淫行に耽り、両手と口とで群がる男達の欲望に奉仕していた。ひそめられた眉は、彼女が望んでの行為ではないことを証していたが、必死にしゃぶり立てしごき立てる様子はどう見ても自発的な行動に見える。
「んっ…んむっ……」
 神秘的な容貌の美女は、命じられるままに腰と手の動きを強めた。ぐちゅぐちゅといやらしい音が高まり、少年の喘ぎがそれに重なる。
「う…く…は、母上……やめて…ください…っ! ダメです…こんなヤツらの…言いなりになっては…! くぅう…!」
 唇を噛んで何かに耐えつつ訴える金髪の少年の言葉に、着衣を乱した美女は哀しげに目を伏せながらも、上下に揺れる腰の動きをゆるめることはない。
「く、んっ……はは、うえ……僕達は……親子なのに、こんな…許されません……!」
 苦言を重ねられ、息子を犯す母親の動きが一瞬止まった。とてつもない背徳感と罪悪感に苛まれていることは想像に難くない。
「怠けるんじゃねえよ。早くしないと神官共がお陀仏だぞ? いいのか?」
 勃起に口唇奉仕を受けている男が、顎先で一方を示した。そちらには、神官衣をまとった何人かの者達が石畳に倒れ伏している。彼等の神官衣は一様にボロボロに斬り裂かれ、血に染まっていた。時折指先を痙攣させているので生きてはいるらしいが、呼吸は浅く、見るからに出血量が多いため、放置すれば遠からず息絶えるのは間違いない。
「んんっ……」
 慌てて、美女は奉仕を再開した。


 彼女の名はシルフィーゼ。ウエルト王国のマルス神殿の神官長を務める、リーベリア大陸6賢者の一人エーゼンバッハの娘にして、同じく6賢者たるアフリードの妻。年齢に似合わぬ少女のような外見の、《聖女》とまで呼ばれる清楚な美女である。
 ほんの小一時間ほど前まで、神殿はいつもと変わらぬ平穏の中にあった。ユトナの聖痕を持つ水の巫女の行方を求めて、ガーゼル教国の教皇たる《闇の司教》グエンカオスが現れるまでは……。
 グエンカオスは禁断の闇魔法ザッハークで賢者エーゼンバッハを討ち滅ぼし、巫女がこの場にいないと見ると、転移魔法で神殿を去った。だが、彼は暗黒教団の手のものを残し、後の始末を命じていったのだった。神殿に仕えるマルス神官達は、魔法の書を駆使してガーゼルの暗黒兵達と勇敢に戦ったが、肉薄されてしまうと敵の振るう鉄塊に対する備えを持たず、たちまち斬り立てられ、瀕死の傷を負わされていった。
 囲まれ、癒しの杖を取り上げられたシルフィーゼは、仲間達の救命を懇願した。だが、グエンカオスが後を任せていった暗黒司祭ダゴンが突きつけた交換条件を耳にして、聖女の顔は羞恥と屈辱に歪んだ。
 いわく――
「我ら全員を射精させたら、治療を許してやる」
 それを聞いて、シルフィーゼより先に、魔道書を取り上げられた金髪の少年が怒り出した。
「やめろ、貴様ッ! 母上に何と言うことを!」
 だがその怒声が、さらなる絶望的な条件を引き出す結果となった。
「そうか。あれはお前の息子か。――それでは、彼奴に犯されながらやるのじゃ。しっかり腰を振るのじゃぞ。さもなくば我らに奉仕させてやらぬからな」
 躊躇する間にも神官達が弱っていく。シルフィーゼは項垂れて、無残な条件を受け入れる他なかった……。


 少年を受け入れる準備を整えるため、まずは自慰を命じられた。ことさら服を脱ぐよう言われるわけでもなく、シルフィーゼは裾を手繰り上げ、自らの股間に細い指を這わせた。急がねばならない。焦って秘裂を掻き分ける指先は痺れるような微痛をもたらし、快感を覚えるどころではなかったが、粘膜を守ろうとする生理的な反応により、次第に潤滑液が分泌され、蜜音が鳴り始めた。滑りがよくなれば、鋭すぎる刺激も程よく緩和され、美女の唇からは押し殺した喘ぎが上がり始める。
「ん……ふ、んん……っん…」
 頬を染めて人前で自慰行為に耽る、若く美しい実の母の姿に、少年の幼い劣情も否応なく反応する。少年の股間は、いつしか布地を押し上げて膨らんでいた。
「よし、始めろ」
 無慈悲な命令と共に、少年は兵士達に仰向けに押さえつけられる。抵抗のそぶりを見せるが、呪文書がなければ非力な少年が屈強の戦士に抗えるはずはなかった。
「は、母上……」
 悲痛な眼差しから目を逸らしながら、聖女は無言の命令に従って、実の息子の股間に手を伸ばし、衣服をはだけさせていった。
「ごめんなさい……マルジュ……」
 か細い声でそう告げて、聖女は少年の若い勃起を露にする。いまだ皮が剥け切っていないそれは、それなりの大きさに膨張してはいたが、色といい形といい少年の段階を抜け切れず、可愛らしい印象が先に立っていた。
 これから始めなければならない背徳の行為に表情を曇らせながら、焦燥に背を押された美女は、意を決して少年の股間を跨いだ。少年のいきり立った性器に手を添えて角度を調節し、そこに自らの粘膜を押し当てる。
 腰を落とすと、少年のペニスはあっけなく母親の膣内に呑み込まれていた。マルジュが生まれてきた場所へマルジュ自身が回帰した瞬間だった。
「くぅう……」
「あああ……」
 母と息子の口から洩れたのは、快美の声ではなく絶望の呻きだったろう。
 シルフィーゼが腰を揺すり始めると、ようやく男達は自分の肉槍を聖女の眼前に突きつけていった。血管の浮いたどす黒い肉の凶器に、シルフィーゼは目を瞠った。こんなに近くで勃起した男性器を見たことなどないが、それでも行方知れずの夫のものよりも遥かに禍々しい代物であることがわかる。
 だが、このおぞましい淫柱から速やかに精を搾り出さねば、神官達の命は失われるのだ。
 おそるおそる両手を伸ばし、繊手に肉棒を絡め取る。おずおずと扱き始めるが、まったく射精させることができない。腰の動きが弱まると直ちに叱咤され、手淫に集中し切ることもさせてもらえなかった。
 一方、母に犯される少年の方は、初めて味わう女の肉穴の感触に喘ぎを上げていた。
「うあああっ! ぬるぬるして…絡み付いて…し、痺れる……! ああ、母上、ダメです…何か、何か込み上げて……うわああっ!」
 激しく頭を振って背筋をぞくぞくさせる未知の感覚に耐えようとする。だが、強情な少年のやせ我慢を、母の肉襞が優しく揉み解し、溶かしていった。マルジュの限界は速やかに訪れた。
「あっ! ……くぅうううっ……!」
 喉をさらして苦悶の声を発し、少年はびくびくと背を跳ねさせて、母の胎内に精を放った。
「ああっ……!」
 聖女の表情にも哀しげな翳りが浮かぶ。だが腰の動きを緩めることを男達は許さなかった。マルジュの射精とは何の関わりもなく、男根を扱く女の律動は続けられる。
「うあっ、そんな……ダメです…また、また……」
 情けない悲鳴を上げて、初めてのセックスの絶頂の余韻が引けきらないうちに刺激された少年は再度の噴出に至った。
「うああああっ!!」
 絶叫と共に二度目の、大量の白濁液をシルフィーゼの膣内に注ぎ込む。その間にも、男達にせっつかれるままに、聖女の腰振りは休まず続けられていた。
 堪え性のない少年と違い、男達はいっこうに絶頂に達する様子がなかった。
「ああ……お願い……早く、早く出してください……」
 気ばかり焦って、シルフィーゼは懇願を口にしていた。
「そんなやり方じゃダメだな」
 男の一人がそう切り捨てると、シルフィーゼは縋るように見上げる。
「どうすれば、よいのですか……」
「よし、それじゃ教えてやる。しっかり覚えろよ」
「はい…お願いします…」
 男達の指示に従って、聖女は男の欲望に奉仕する方法を学んだ。配下の暗黒神官、暗黒兵達が賢者の娘に淫戯を仕込んでいく様を、暗黒司祭は邪悪な笑みを浮かべながら黙って観賞している。
「もっと強く握れ」
「カリをくすぐるように」
「鈴口を指の腹で擦ってみろ」
「手だけじゃいつまで経っても終わらねえぞ。口にも咥えろ」
「唇を締めて頭を振れ」
「舌も使え。舐めたり絡めたりするんだ。裏筋も舐めろ」
「吸い出すようにしてみろ。鈴口も舌先でくすぐれ」
 息子と背徳の行為を重ねながら奉仕をしなければならない――。気が狂いそうな屈辱に涙がにじむが、仲間達の命が懸かっているのであるから、逆らうわけにはいかない。意欲が上達を早め、シルフィーゼは急速に淫らな技巧を高めていった。
 そしてついに、聖女は男の一人を射精に導くことに成功した。口に咥えて奉仕していた男は一声唸ると、奥まで肉柱をねじこみ、シルフィーゼの頭を押さえつけた。
「うぐぐ……っ!」
 苦しさに呻くシルフィーゼの喉奥に、男の欲望が弾けた。
「うぶっ! ぶぅううううっ!!」
 粘る汚液が口中を満たす。たまらない生臭さが口に広がった。吐き気を覚えるが、男はがっしりシルフィーゼの髪を掴み、逃れることはできない。
「うううう――――っ……!」
 苦悶の涙を浮かべるシルフィーゼ。男は突然、シルフィーゼの鼻を摘んだ。
「……!?」
 呼吸を阻害され、パニックに陥るシルフィーゼ。男は無慈悲に命じた。
「飲めっ! 全部飲み干せ!」
「…………っ!!」
 生理的嫌悪よりも窒息の恐怖が勝った。喉を鳴らし、おぞましい流体を嚥下していく。腐った汁を飲み込む気分。込み上げる嘔吐感を抑え、喉に絡む粘液を無理やり胃袋に送り込んだ。
 命令通り飲み干すと、鼻と髪が解放される。一部が気管に入ったのか、シルフィーゼは咳の発作に襲われた。
 咳が収まり、力なく伏せる目元に、次のペニスが突きつけられる。
 休むことは許されない。拒むことも。
 どちらも、傍らで横たわる神官の死を早めるだけの行為なのだ。
 男達は奉仕を強制はしない。だがシルフィーゼは、色情狂のように男にむしゃぶりついていくしかなかった。彼女から進んで奉仕しなければならないと言うのが、暗黒司祭の要求の悪辣なところだった。
「ああああっ……!」
 マルジュが三度目の精液を子宮に向けて噴き上げた。年若い少年の精力は強く、まだまだ濃密かつ大量の射精が、膣道を埋め尽くさんばかりに溢れ返る。遅れて、手で奉仕していた男達も絶頂に至る。聖女の美貌に白濁が弾け、淫靡な化粧を施した。
「はぁあ……」
 体の内外に奔騰する汚液の感触に吐息をつき、哀しげに目を伏せつつ、シルフィーゼは次のペニスに自ら指を絡めていった。息子の精を搾り出すための腰の動きも、緩めさせてはもらえない。
「は、は…うえぇ……」
 少年の呻きが心を苛む。決して許されない罪を犯している事実を改めて認識させられた。十数年前に行方が知れなくなり、既に半ば以上生存の可能性は諦めている夫――だが、かつて寄り添って生きていくことを誓った相手を裏切っている。妻として許されない行い。加えて実の息子と――母として許されない行い。さらには、ほんの半刻前に父が落命したその場で――人として、許されない行い。
 幾重にも積み重なった背徳が、聖女に気も狂わんばかりの罪悪感を与えていた。衆人環視の元に秘すべき淫戯をさらしている羞恥をも忘れさせるほどに。
 シルフィーゼは胸を焼く恥辱を一時でも忘れるべく、敢えて何も考えないように努めた。マルジュの、男達の精液を搾ることだけに集中して、機械的に手と口を動かし、腰を振り続ける。牛の乳を搾り出すかのように――。


「うおっ…!」
 シルフィーゼにしゃぶらせていた男は、一声喚いて腰を引き、ペニスの先端を彼女の頭頂に押し当てて、そこで射精した。艶やかな髪を精液が染み伝い、頭皮を不快な温かさがぬめり伝う。額の生え際から鼻筋に向け、どろっと濁ったしずくが一筋流れ落ちた。
「はあっ……はぁあっ……」
 聖女は目を閉じ、荒い息をつく。
 今の男で七人目。二人の暗黒神官と五人の暗黒兵を射精に導くことに成功していた。その間ずっと腰を動かし続けていたために、足腰は限界に近付き、膝ががくがくと震えている。
 姉にしか見えない母に跨られている少年魔道士は、虚ろな眼差しで宙を見ながら喘ぐだけだった。もう何度シルフィーゼの体内に精を放ったものか、放った方にも放たれた方にも判然としない。
「さて……それでは、ワシの番じゃな」
 最後に残った黒衣の司祭が進み出る。本当はもう一人暗黒兵がいたのだが、凌辱が始まるより前に姿を消してしまっていた。
「ああ……」
 法衣の前をはだけて眼前にさらけ出された逸物を目にして、シルフィーゼは息を呑んだ。長さは他のものと変わらないが、野太くごつごつといびつな肉茎。黒ずみ方も群を抜いており、黒檀を削り出したかのようだ。
 ダゴンは敢えて促さないが、我に返ったシルフィーゼは唇をいっぱいに開き、自ら咥え込んでいく。今さら躊躇していては、何のために恥辱に耐えて淫らな奉仕を続けたのかわからなくなってしまう。
「む…んぶ…っ!」
 顎がはずれそうな思いをしながらも、シルフィーゼはかろうじて暗黒司祭の太竿を口内に収めた。いっぱいに満たされて動かしにくい舌を無理に動かし、男に快楽を与えていく。立て続けの奉仕で、頭のいい聖女は既にコツを飲み込みつつあった。口唇奉仕は意外に巧みに男の弱点を攻め立てる。
「ふふふ。なかなかよいぞ」
 だが、薄笑いを浮かべる暗黒司祭は余裕たっぷりだった。いきり立った肉棒をどれほど熱心に愛撫されても、一向に達する気配がない。シルフィーゼは腰を振るのも忘れて愛戯に没頭したが、必死の奉仕も通用しないとわからせるかのように、ダゴンはそれを咎めるでもなく、泰然と佇むばかりだった。
 今のままでは、この男を射精させることはできない――。
 ついにそうと悟って、聖女は涙目で邪神の司祭を見上げた。縋る眼差しを向けられて、ダゴンは嘲弄の笑みを深くする。
「ん? どうしたのじゃ?」
「――どうすれば、よいのですか……?」
「ふふ、何のことじゃ」
「どうすれば……貴方をイかせることが…できるのですか」
「お主の力が足りぬせいであろう」
「――――」
「足りぬ部分を補う方法を知りたいか?」
「……はい」
「ならば、伏してこいねがうがよい」
「ああ……」
 シルフィーゼは屈辱に身を焼きながらも、マルジュの未熟なペニスに跨ったまま、暗黒司祭の足元に額をつけて這いつくばった。
「ど……どうか私に……」
「司祭への礼が抜けておるぞ」
 唇を噛みつつ、聖女は言い直した。
「……お願いいたします、司祭様……どうか私に……至らぬ部分を……教え導きください」
「何を導けと言うのだ?」
「そんな……ああ……だ、男性に……射精を促す、技法について、です……」
「ふむ。聖女殿は、男の精液を搾り出す方法について教導を欲するものだと、そう申すのだな?」
「…くぅ……は、はい……」
「間違いないな?」
「間違い…ございません…」
「ほう。淫らな聖女もいたものよな。――では、あらためてそう申してみよ、淫らな聖女殿」
「…あああ……お、お願いいたします、司祭様…どうか…こ、この淫らな聖女に……男性の精液を、搾り出す方法について…至らぬ部分を、教え導きくださいませ……」
「よかろう」
「あああ……」
 淫女の懇願と言うしかないセリフを口にさせられ、シルフィーゼの目元がこれまで以上の恥辱に染まっていた。頬を羞恥の涙が一筋伝う。
 シルフィーゼの前で、ダゴンはくるりと後ろを向いた。
「―――?」
 困惑する美貌に、暗黒司祭の声が背中越しに投げかけられる。
「我が衣をめくるがよい」
 黒い法衣をめくり上げると、既にズボンも肌着も下ろされているため、たるんだ尻たぶが露になる。不快な光景にひるむシルフィーゼに、極め付けに不快な命令が発せられた。
「不浄の穴にくちづけよ」
「――――!?」
 絶句する聖女に、命令が重ねられる。
「早くせよ。仲間達を見捨てたいか」
 それを持ち出されては逆らうことはできない。
「ああ……こんな…こんなこと……」
 一瞬目を伏せ、気丈な美女は人の尊厳を捨てる決意を固めた。強烈な屈辱に震えながらも、尻たぶをかきわけ、露出させた汚らしい窄まりに震える舌先を近付けていく。
 ぴちゃり。
 舌先が触れた。一拍遅れて、刺すような苦みが感じられる。他人の肛門の味――そう意識すると共に、発狂しそうな屈辱が精神を切り裂いた。
 ダゴンは容赦しなかった。シルフィーゼはそのまま菊座への執拗な口淫を強いられる。アナルへのキスに始まり、舌で皺の一本一本を伸ばすように入念に舐めさせられ、さらに舌先を肛門にねじ込まされ、奥の奥まで舐め清めた。絶え間ない嘔吐感を抑えるだけで必死だった。
 アナル奉仕の要領を教え込んだところで、ダゴンはそのままペニスへの手淫を命じた。腰の前に手を回し、太い幹を握り込む。先走りを塗り込むように扱き立て、雁首を、鈴口を指先で愛撫させられた。さらにもう片手は玉袋に導かれた。やわやわと揉み転がす動きを教えられる。
「んあああ……!」
 途切れることなく涙が伝い落ちる。いまだ男達に肌をさらしてすらいないのに、シルフィーゼは既に全身を穢されたような汚辱感に苛まれていた。
「ふふふ……その調子だ、聖女殿。身を売る女でもここまではせぬ。今お主は、娼婦以下の淫売ということだ……!」
「はは…うえ……」
 暗黒司祭の侮蔑と、少年魔道士の虚ろな呟きが、聖女の精神を極限まで抉り抜いた。
(あああああああああああああっ!!)
 シルフィーゼの無言の絶叫と共に、掌にダゴンの汚濁が吐き出された。魂まで汚された証のように感じられた。ほぼ同時に、激しい締め付けを受けたマルジュも、弱々しく呻いて薄い精を少量放った。最後の樹液を噴き上げた少年は、とことんまで絞り尽くされて、ついに意識を失った。


 息子の腰に跨ったままがっくりと項垂れ、動くこともできないシルフィーゼの前に、暗黒司祭が杖を差し出した。奪われていた《遠癒しの杖》である。
「あ……」
 泣き濡れた顔を上げる。恥辱にまみれ、誇りを打ち砕かれた表情は、少女のようにあどけなかった。
「約束通り、神官共の治療を許そう。今ならまだ命だけは助かるだろう」
 恥辱の沼に沈んでいた意識に、本来の目的がよみがえり、シルフィーゼは慌てて杖をつかんだ。傷つき倒れた仲間達に治癒の魔力を送る。確かに効力を発揮した手応えを感じて、シルフィーゼはほっと息をついた。癒しの力は死者には効力を持たない。力が発揮されたと言うことは、死んではいないと言う証だった。今の治癒で傷は塞がったはず。当面、命の危険はないだろう。
 シルフィーゼはまだマルジュの上に座り込んだままだった。腰が萎えて、立つこともできないのだ。安堵と疲労に肩を落として喘ぐ聖女に、ダゴンは背筋を凍らせる言葉をかけた。
「たっぷりと息子の精を搾り取ったようじゃな。――孕むやもな」
「ひっ――」
 恐ろしい予測に、全身が強張る。
「息子の子を産む母か。くく、丈夫な子が産まれるようガーゼル神に祈っておいて差し上げよう」
「あ、あああ……」
 妊娠が確定したような言い方をされ、シルフィーゼの視界が絶望に暗くなった。
 と――ダゴンが懐から、小さな磁器の瓶を取り出して見せた。
「もっとも、これを使えば孕まないがな」
 見せつけるように小さく振る。シルフィーゼの視線は否応なくその瓶に引き付けられた。
「使って欲しいか?」
 からかうように問われ、聖女は一も二もなく頷いた。マルジュの子を宿す――それだけは、何を置いても許されることではない。何を代償にしても避けねばならなかった。
「ふふふ。まあ、我らも鬼ではない。少し質問に答えてくれれば、これをお主に使ってやろう」
 ダゴンはそう前置いて、シルフィーゼに水の巫女の行方を問い質した。わずかに逡巡してから、聖女は諦めの表情で素直に答えていく。病に倒れた山賊の首領に泣きつかれ、トーラス山地に治療に赴いて、その後戻ってきていないこと。少し前に、リーザ王妃の姪でもある天馬騎士を捜索に派遣したこと。巫女の名と、外見の特徴。
 必要なことを聞き出すと、暗黒司祭は頷き、暗黒兵に命じてシルフィーゼを立たせた。少しは力が戻ってきたのか、立たせられると何とか自分で立てるようになる。
「素直に答えてくれた褒美じゃ。約束通り、これをお主に使ってやる。じゃが、直接子宮に入れねば効果がないのでな。まずは服を脱いでもらわねば」
「ああ……」
 吐息をついて、シルフィーゼは求めに応じて自ら服を脱ぎ、肌をさらしていった。ほどなく、一糸まとわぬ裸身が露になる。
 顔は十代と言っても通用する清楚な美貌だが、体の方は二十代半ば過ぎの成熟を見せていた。見事に張り出した乳房と尻にはたっぷりと脂が乗り、腰は細くくびれ、匂い立つ色香を放っている。股間は髪と同色の焦茶色の叢に覆われていた。
「これではよく見えぬな。まずはこちらを使おう」
 ダゴンはシルフィーゼを座り込ませると、懐から別の瓶を取り出し、蓋を開けて聖女の足の付け根に傾けた。とろみのある透明な液体が注がれる。
「――あっ!」
 ちりちりと皮膚を焼く痛痒感がシルフィーゼを襲った。皮膚に馴染む成分らしく、肌に沿って粘り広がっていく。しばしぷちぷちと針の先で軽くつつかれるような刺激に耐えさせられた。
 ダゴンは手巾を水に濡らし、刺激が治まったシルフィーゼの股間を拭った。
「え!?」
 聖女は自分の目を疑った。性器の周囲に生い茂っていた恥毛が、きれいさっぱりなくなっていたのだ。一見幼女のような外見を与えられたそこは、産毛すらなく、艶々と光っていた。今の薬液に毛根ごと焼灼され、二度と生えてこなくなったことを、シルフィーゼはまだ知らなかった。
「これで見やすくなった」  悦に入って呟く暗黒司祭。ダゴンに命じられた暗黒兵が、シルフィーゼを転がし、頭を下にして膝を顔の横に折りたたむ窮屈な姿勢を取らせた。自然、股間を天に突き上げる態勢になる。
 隠すものなく秘所を見つめられる恥辱に聖女は頬を染めた。
「ではゆくぞ」
 確認されると、それでもシルフィーゼは頷く。妊娠の恐怖と背徳の罪悪感がすべてに優先していた。
 ダゴンは瓶の蓋を取ると、シルフィーゼの秘唇のすぐ上で傾けた。先程のような液体が注がれることを無意識に予期していたシルフィーゼは、次の光景に目を剥いた。
 逆さまになった小瓶から、細長い肉色の塊がぬめり落ちてきたのだ。
「――ひィっ!?」
 秘所の上に落ちたそれは、女の媚粘膜に触れると、ぐねぐねと蠢きながら、自ら襞の合わせ目に首を潜らせていく。それは――生きている《蟲》だった。
「あああっ! はいって――入ってくる! いやあ! 助けて! 何なの、これは……っ!!」
 もがくシルフィーゼだが、暗黒兵に押さえつけられているため、逃れることはできない。《蟲》は重力の助けを得て、マルジュの精液に満たされた膣道をほとんど何の抵抗もなく滑り落ちていった。
「ひっ…! ひィい――――ッ!」
 得体の知れない異形に体内を這い回られる恐怖に、シルフィーゼは狂ったように首を振って暴れる。抑える暗黒兵達の腕に筋肉の筋が浮いた。恐慌が常軌を逸した筋力を呼んだものか、屈強の兵士がかなりの力を使わねば押さえられないもがきようらしい。
 だが必死の抵抗も叶わず――《蟲》はあっさり終着点に至る。膣の奥、閉じた子宮口を、ぬめった先端でくすぐりほぐし始めた。執拗に繰り返されると、根負けしたように入り口が緩む。待ち構えていた《蟲》は嬉々として頭をねじ込み、ぬるぬると子宮の中に潜り込んで行った。
「いやぁ……お腹の中に……入って……くる……」
 蛭かナメクジのようなそれが全身を収めると、子宮口は元のようにすぼまり、胎内に異形を飲み込んだまま口を閉じてしまう。
「ああああ……」
 常軌を逸した体験を強いられた聖女は、狂乱の反動でぐったりと脱力していた。
「ふふふ。これは、我らガーゼル魔道軍が、召喚した魔物を改造するうちに偶然できたものを改良した代物でな。女の胎に好んで寄生し、寄生された女は妊娠しなくなる。これでお主が息子の子を孕むことはない。安心したか?」
 気味の悪い魔物に寄生されてしまったと知り、解放されたシルフィーゼはぺたんと座り込んで、茫然と自分の下腹を押さえる。
「――もっとも……その《蟲》の効力は、それだけではないがな」
「――え?」
 青ざめた顔を上げたシルフィーゼが、びくんと身を震わせた。
「あ――あ……」
「ほう。もう始まったか。さすがは賢者エーゼンバッハの娘御だけのことはあるようだ」
「な――何……何が……?」
「その《蟲》は、宿主の魔力を吸って成長を始める。その魔力が強いほど成長が早まるのじゃ。まあ誰でも潜在的に魔力を持っているわけじゃが、普通の女であれば、成長し切るのに三日ほどかかる。そして、成長し切ってしまえば、もうこの《蟲》を取り除く方法はない」
「そっ……そんな……!」
 腹の中を掻き回される感覚。子宮の中で、《蟲》が膨れ上がっていくのが明確に感じ取れた。腹を食い破られる恐怖が聖女を慄然とさせる。
「た……助けて……」
 かちかちと歯を鳴らして哀願する美女を見下ろし、ダゴンは薄笑いを浮かべた。
「脅えずともよい。別に食われたり、卵を産み付けられたりはせぬ。この《蟲》の名を教えてやろう」
 ダゴンの笑みがひときわ邪悪な色を帯びた。
「《淫隷蟲》と言うのじゃ」


 シルフィーゼの子宮に寄生した《淫隷蟲》は、宿主の秘めた強大な魔力を吸収して、僅か数分で成体に成長した。女性の握り拳程度の大きさに膨れ上がった《淫隷蟲》は、体中から偽足を伸ばし、子宮壁を貫いていく。苦痛など与えない。むしろそれは同化と言うべきだったかも知れない。子宮そのものが、女を別の生物に作り変える異形の器官に変換されていく過程。
 それは、女を牝に、人間を奴隷に造り変えるために生み出された魔性の生物だった。
 子宮を貫いた偽足は極めて細い無数の繊毛に分かれ、宿主の全身に伸びていく。神経を強化し、感覚を増幅する第二の神経網を構築する。同時に体中の細胞を侵食し、別種の機能を併せ持つように改造していく。絡み合った繊毛が脳にまで到達し、性感を司る部位に融合を果たした。《淫隷虫》は子宮に位置する第二の脳と化し、過剰な快楽による脳の過負荷を防止する。そして最後に――。
 体中を駆け巡る違和感に震えていたシルフィーゼは、最後にその違和感が胸部前面に集中していくのを感じて、脅えた喘ぎを洩らした。
「あああっ……胸……胸が……!」
 ひときわ張りと重量感を増し、ひと回り膨れ上がったように見える乳房を両手で抱きしめる。
「――くあああっ!」
 乳房の先端が爆発したような心地に襲われ、シルフィーゼはのけぞった。自らの両手で圧搾された乳房の先端から、白い液体が噴き出していた。恐ろしいほどの官能の電撃が乳肉を、脳を満たす。
「あああ……なんで……お乳が……」
 呆然と乳首を眺める聖女に、暗黒司祭が懇切丁寧に説明してやる。
「《淫隷蟲》は、女を奴隷に変える魔蟲。お主は発情と共に乳を噴き出す体になったのじゃ。最初のこの噴乳は、奴隷の肉体への変化が完了したと言う証でもある。それにしても、ほんの数分とは――最短記録じゃな」
「奴隷に変える…魔蟲? 奴隷の肉体…って……」
 恐ろしい宣告に、聖女の顔色は青を通り越して白くなっていた。
「男の精液なしにはいられない、奴隷の肉体じゃ。男の精液を子宮に注がれぬ限り、満たされることはない」
 そう言って、ダゴンはさらに絶望的な注釈を付け加えた。
 肉体の改造が完了してから一昼夜のうちに注がれた精液の持ち主にしか、その奴隷を満たすことはできない。マルジュの精液を胎いっぱいに満たされている今、このまま放置すればマルジュにしか肉の渇望を満たすことができない奴隷に変貌する。自らマルジュの精を求めて尻を振る淫女と化す――。
「それを避けるには、《淫隷蟲》が一人の精液の味を覚えてしまわないうちに、別の精液を味わわせねばならん」
 言わんとするところは明らかだった。
 暗黒司祭の言葉は出任せかもしれないが……もし、真実だったら?
 シルフィーゼに選択の余地はもはや残されていなかった。
 が、ダゴンはわざとらしく彼女に背を向けた。
「では、教皇睨下のお命じになった、水の巫女捜索の任を果たしに行くとしよう。者共、トーラス山地へ向かうぞ」
「は」
 連れ立って立ち去りかける暗黒教団の使徒達の背に、シルフィーゼは慌てて呼びかけた。
「ま、待って! 待ってください!」
 立ち止まり、首だけで振り返る暗黒司祭。
「――何ですかな?」
 意地の悪い笑みを浮かべ、あらためて問い掛けられると、シルフィーゼは口篭もった。あまりにも恥知らずな懇願をしようとしている自分に気付く。
「あ、あ……」
「用がないのなら、引き上げさせていただきますぞ、聖女殿」
 再び背を向けかけるダゴンに、シルフィーゼは血を吐く思いでその言葉を口にした。
「待って――お願いします……私を、どうか私を……犯してください……」


「あっ………あ、ああああああああっ!!」
 四つん這いにさせられ、無造作にペニスをねじ込まれた。ただそれだけだった。
 たったそれだけなのに、信じられないほどの快美感がシルフィーゼの全身を貫いた。
 男が腰を引くと、快楽は倍になった。粘膜を擦り立てられるのがたまらなく気持ちよかった。
「ひぃいいいっ! こんなっ……こんなぁっ!!」
 圧倒的な、未知の刺激。いまだかつて味わったことのない壮絶な官能に、聖女と呼ばれた知性的な美女は身も世もなく泣き叫んだ。
「へへ……どうだい、聖女さんよ。気持ちいいか?」
 一番槍を任じられた暗黒兵が、腰を前後に振って肉の槍を送り込みながら、下卑た口調で問い質す。
「気持ちいい……こんなの、こんなの初めてっ!!」
 悦楽が脳内を埋め尽くし何も考えられない。問われるままにシルフィーゼは答えていた。
「そうかよ。じゃあ、たっぷりよがりな!」
 言いざま、叩きつけるように突き込む。
「あっひぃいいいいいいいッ!」
 甘く哀しげな悲鳴が神殿に響き渡った。
 一度放出しているためか、男には余裕があった。たっぷり時間をかけて美女の淫襞の感触を味わい尽くす。ペニスが牝肉を掻き回すたび、快楽はどんどん増幅されて引くことがなかった。体は際限なく官能の炎を燃え立たせ――それでいて、一度たりとも絶頂に達することはない。シルフィーゼは法悦の業火に炙られながらも、燃え尽きることのない焦燥感を延々と味わわされた。
 男の腰の動きが加速し、ついに胎内に射精する。脈動と共に白濁の粘塊が膣奥を叩く。
「あっ! あひぁあああああああああああ…………ッ!!」
 ぎゅうっと背を逸らし、とてつもなく高い場所へ一瞬で翔ばされるシルフィーゼ。全身の筋肉が引き絞られ、括約筋に肉茎を締め付けられた男が呻きを上げる。腕の力が抜け、聖女はがっくりと床に額をつけて喘いだ。
「――ひッ!?」
 その背がびくっと震える。離れた男の代わりに、別の暗黒兵が肉の凶器の先端を押し当てたのだ。
「あ……ま、待って、あんな凄いの、まだ…ちょっとだけ、休ませ――くぁあああああああああ!」
 哀訴する美しい獲物を、男は一気にむさぼった。
「あ、ああ、あああ! ひぁあ、感じ――すぎ! て、あぅああああああッ!」
 信じられないほどの愉悦に甘い悲鳴を上げ続ける聖女を見下ろして、暗黒司祭が冷たい笑みを浮かべていた。
「ふふふ。どうじゃ、《淫隷蟲》もそう悪いものではないじゃろう? 孕むことはないからいくら中に出されても平気。宿主を守るため、怪我や病気にも強くなる。まだ完全に確かめたわけではないが、老化が停まるのではないかとも言われておる。寿命まで長くなるわけではなかろうがな。そしてその快楽じゃ。気が狂いそうなほどの悦楽じゃろう。もっとも、《淫隷蟲》が宿主の発狂など許さぬがな」
 ダゴンの言葉も理解できぬまま、シルフィーゼは全身を貫く凄まじい快楽に意識を埋め尽くされていた。すぐにでも昇り詰めそうな圧倒的な性感。だが、子宮に精を注がれない限り決してイくことはできない……。魂を蜜で煮崩されている心地だった。
「ダ…ダメぇええええ! こんなの……た、耐えられない! ああああああっ! もう、もうダメ、私、私ダメになっちゃうぅううううううっ!!」
 かろうじて上体を支えていた肘も崩れる。石床と体の間で乳房が潰れ、発情を証す牝のミルクが乳首を中心にびゅうっと洩れた。それがまたさらなる快感をもたらし、体内で荒れ狂い絡みあう別種の性感にシルフィーゼは悶え泣いた。
 暗黒兵はシルフィーゼの腰をつかむと力任せに反転させた。後背位から正常位に変わる。
「あひぃ!」
 ペニスにごりごりと膣壁を抉られ、快楽の涙に瞳を潤ませた美女が甘い悲鳴を上げる。暗黒兵はシルフィーゼの背に腕を回し、胸の中に抱え込んだ。
「あうっ!」
 座位になり、肉柱がより深く胎内に突き刺さる。先端が子宮口をこじるのが明確に感じ取れた。
 そして――男はそのまま立ち上がってしまった。
「ひぃ……」
 空中に抱え上げられたシルフィーゼは、脅えた声を上げて男にしがみつく。彼女は背後から近付く暗黒兵には気付いていない。
「――ひああああああああっ!!」
 突然アナルを抉られ、聖女は悦楽の悲鳴を上げた。ほぐれていない排泄孔を蹂躙されているにもかかわらず、生理的なおぞましさと共に信じられないほどの快美感が湧き上がる。《淫隷蟲》に改造された肉体が、あらゆる性交を常軌を逸した快楽に変換するのだ。
 体内で二本の男根がせめぎ合い、思いがけない方向から子宮が揺さぶられる。異常な快楽が脳裡を埋め尽くしていった。
「す、ご……凄いぃいいいいいっ! あああ、狂っちゃう! ダメダメダメぇっ! …ひぃいいいいいんっ!!」
 陰唇を貫く暗黒兵が肉槍の穂先から白い媚薬を噴き上げた。精神を漂白されてしまうような絶頂に襲われて、聖女はびくびくと背を震わせ、射精とリズムを合わせるように断続的に母乳を噴き出した。


 五人の暗黒兵と二人の暗黒神官、そして暗黒司祭。
 八人分の精液をたっぷり胎内に、腸内に注がれ、全身を男達と自分が放った淫液に汚して、聖女は石床にぐったりと仰向けに倒れていた。最後のあまりに激しい絶頂のため、意識を失っている。
 気絶するまで追い上げたダゴンは、散々弄んだ女体を見下ろして歪んだ笑みを浮かべた。
「なかなかいい奴隷になりそうじゃ。ゾーアの谷に連れ帰って性奴隷として飼ってやってもよいが……今は水の巫女の捜索が先決じゃな」
 少し考え、暗黒司祭は呪文を唱えると虚空から何かの道具を取り出した。
 それは表面に無数のイボが埋め込まれた、黒光りする張型だった。男根を模した形状の淫具である。後端にはベルトや金具が何本もぶら下がっている。
 ダゴンは張型をシルフィーゼの秘所にねじ込んだ。ぶじゅっと音を立てて精液と愛液のミックスされた液体があふれ出る。ベルトを下半身に巻きつけ、金具を組み合わせると、最後に恥丘に集まった錠にがっちりはまり、固定された。
 ぐりぐりと張型の裏側辺りを踏みにじられ、肉襞を抉られてシルフィーゼは目覚めた。
「…あああぅん……。…あ、私……え、これは?」
 股間に嵌められた淫らな貞操帯に気付いてうろたえる。張型からは前と後ろに2本ずつベルトが伸び、排泄には支障ないよう作られていた。
「それは鍵がなければ外すことはできぬ。鍵はこの国の宰相に預けておく。外したくば、宰相に会いに行くことじゃな」
 それだけ言い置いて、ダゴンは配下のものを引き連れ、神殿を立ち去った。


 神殿を離れながら、暗黒神官の一人がダゴンに話し掛けた。
「よろしかったのですか?」
「聖女殿か。なに、宰相へのみやげにはなろう。コッダと言ったか。あやつはよい操り人形になってくれそうじゃからの。多少はよい目にあわせてやれば喜んで尻尾を振ってくれるじゃろうよ……」
 事もなげに答えて、聖女の運命を徹底的に弄んだ悪魔は、邪悪な笑みを浮かべた。


 神殿に置き去られた聖女は、茫然と呟いた。
「ああ……そんな。どうしたら……」
 汚液にまみれ、取り返しのつかない淫らな改造をその身に受けた哀れな美女は、腿を伝い落ちる粘っこい精の感触にぞくりと身を震わせた。
「あああ……」
 性感を信じられないほど鋭敏にされてしまったことを改めて認識させられる。体を起こすと、僅かな動きでも胎内の張型がごりごりと肉襞を抉り、快感の火花を掻き立てた。
「そんな…これでは……」
 快楽は次第に募っていくことだろう。だが、鍵が外れない限り……子宮に精液を注がれない限り肉の欲求が決して満たされることがない事実は、骨身に染みて理解させられていた。
 起き上がろうとするが、腰が立たずに神殿の石床にへたり込んだ。ぺたりと座り込んだ格好になり、張型の後端が石盤と擦れてごりっと重い音を立てた。
「――きひィああぁあっ!」
 体の中――体内で電撃が弾けた錯覚に襲われ、聖女は跳ね上がった。と、さらに衝撃が重なる。
「ひっ、ひィいい――――っ…」
 喉を絞ってかすれた悲鳴を上げる。衝撃は下腹部に染み渡ってから、強烈な快感に変換された。
 シルフィーゼは声もなく喘いだ。
 ガーゼル教団の淫具は、巧妙に計算された女責めの逸品であるようだった。表面のイボは無秩序にちりばめられているのではなく、わずかな動きを劇的に増幅して牝襞を掻き乱し、さらにはことさら女の弱点を集中して抉り抜いてくるよう、精妙に作り込まれている。
「ひっ……ひん……ぁひっ…ひぁん……っ」
 意思なき器具に膣内を抉られ、シルフィーゼはじっとしていられずに腰をもじつかせる。わずかな身じろぎと張型が床と擦れる振動が、擬似男根の蠢きとなって美女を責め立てた。淫らな循環を断ち切ることができず、聖女は小さく甘い苦鳴を洩らしながら身を揺すり続ける。
 さきほど憂慮した通りに、淫熱が子宮を中心に蓄積され始めるのを彼女ははっきりと自覚した。だが、それを解き放つ手段はシルフィーゼの手の中にはないのだ。
「だ、ダメ……とまって……止まるのよ……」
 脳髄を煮崩されそうな深く静かな悦楽に耐えながら、自分に言い聞かせるように呟くシルフィーゼ。しかし、微妙な腰の蠢きは、精神の制御を受け付けようとはせず、一向に止まる気配を見せない。
 以前よりも明らかに一回り大きくなった乳肉が、体動に合わせて、あるいは僅かに遅れて重たげに揺れる。その度に乳房の中心にも淫火が灯り、胸肉全体に延焼していくのがはっきり自覚できた。白い乳房の先端では乳首がピンと綺麗な円筒形に勃起し、乳輪もいっぱいに張り詰めてドーム状に盛り上がっている。それは女の象徴に満たされ、ぱんぱんに膨れ上がった欲情を明示しているかのようだった。
 全身の肌を覆い、長く艶やかな髪にまで染み込まされた精液が生乾きになり、強烈な牡臭を放つ。不快なはずの生々しい臭いが、聖女の牝の本能を否応もなく揺さぶり立てていく。
「ダメ、ダメよ……こ、こんなこと……していたら……」
 倒れ伏す神官達やマルジュの傍らで、裸のまま精液にまみれ、淫具で自慰を続ける自分の姿を意識し、意志力を奮い立たせようとするシルフィーゼ。
 だが、結果から言えばそれは逆効果だった。
「ああ…ど、どうして、どうして……」
 治まるどころか、ぞくぞくと背筋を震わせて加速していく情欲に、若々しい容貌を歪めて狼狽する美女。
 耐えられる限度をはるかに超えた背徳と屈辱を味わわされた彼女の理性は、その時与えられていた別の刺激に集中することで心の平衡を守ろうとした。恥辱を淫欲に変換する道筋が、シルフィーゼの中に生まれかけていたのだ。そして宿主の精神崩壊など許さない《淫隷蟲》が、強力にその後押しをしていた。
 ――神官家直系のシルフィーゼの、極上の魔力を餌に育った《淫隷蟲》は、この魔物を創造したガーゼル魔道軍も予想しなかったほど高度な成長を遂げていた。この《淫隷蟲》はある種の知性をすら獲得し、邪悪な意図をもって体の内側から、聖女を牝奴隷へと調教し始めていたのだった。
 簡単に言えば、彼女は内的外的要因により、恥辱に欲情するマゾ奴隷の精神性を獲得しつつあった。
「くぅうううっ……!」
 だが――あらゆるものを強靭な意志力で一時的にねじ伏せ、シルフィーゼは立ち上がった。萎えかけた膝が震え、その度に張型が膣内を甘く抉るが、歯を食いしばって無視しようと努めた。淫欲の内圧は高まり、今にも破裂しそうな心地に襲われるが、これにも辛うじて耐え切る。
「とりあえず……服を、着て……みんなの、手当てを……看病を……しない、と……」
 脱ぎ捨てた服の中からとりあえずローブだけ被る。
「――――ひあっ!?」
 ぞくぞくっと甘い痺れが走り、腰が砕けかける。限界を超えてしこり立った乳首と布地がこすれ、鮮烈な快感がシルフィーゼを襲った。以前よりもバストサイズが増しているのに加え、その先端で彼女自身見たことがないほどに勃起してしまっているのでは、摩擦から逃れる術はない。
 息を荒げながら、美女は乳首がこのまま最大勃起状態から戻らないのではないかと言う、確信に似た予感を覚えてぞくっと背筋を震わせた。
 見下ろすと、体の線が出にくいぞろっとしたローブであるにもかかわらず、布地を突き上げる乳房の丸いラインと、ぴんと突き出した乳首の形がはっきりと見える。
「あ……」
 何て、いやらしいの……。
 自分でもそう思うほどだった。他人が見ればさらにその感想は露骨だろうと思う。
 だが、胸のラインを隠すために布地の多い服を着たりすれば、乳首がくじられ続けて快楽に耐え切れなくなってしまうだろう。それ以前に、たとえ肌着であっても、服を着ているだけで常時胸を愛撫されているのと同じ状態になる。
 羞恥が込み上げ、思わず胸を覆い隠すシルフィーゼ。
「――あひぃ…!」
 ただ押さえただけで、膨らんだ乳肉の中でたまらない快感が渦巻くのが感じられた。かくんと膝が抜け、またぺたりと床に座り込んでしまう。
 ――ごすんっ。
 張型が床と衝突した衝撃がシルフィーゼを突き上げた。
「! ――!! ――――ッ!!!」
 声もなく絶叫する哀れな美女。視界が一瞬漂白される。おぞましいほどの快楽。
 本当ならば、この時彼女は絶頂に翔ばされていたはずだった。だが、《淫隷蟲》に淫楽の制御権を奪われた牝奴隷は、男の精を注がれなければ決して頂点に至ることはできないのだ。
 今ようやくシルフィーゼは、暗黒神官の告げた残酷な宣告を、揺るがせ得ない真実として受け入れ始めていた。
「はっ……はぁ……はぁあっ……」
 腰を揺らし、胸を抱きしめて際限なく欲情を高めながら、もはや聖女と呼ぶにはためらわれる痴態を曝す美しい牝は、必死で状況を打開する方策を模索し続けた。
「どうしたら……どうしたらいいの……」
 思考を堂々巡りさせながら、シルフィーゼは絶望の吐息をつくばかりだった。
 もとより答えは一つしかあり得ない。
「……宰相……。宰相に、会わなくては……」
 がくがく震える膝で立ち上がり、酔ったような足取りと熱に浮かされた表情とで、彼女は神殿の出入り口へ向かった。素肌にローブ一枚まとっただけで、全身に浴びた牡汁も拭われないままのあられもない姿を気にする様子もない。脳を冒す発情の微熱が、正常な判断を下せなくしているのだ。必死に取り戻したはずの理性は、とっくに愛欲に曇らされてしまっていた。
 シルフィーゼは悶焦に思考力を奪われ、宰相に会いさえすればこの苦しみが終わるのだ、とだけしか考えられなくなりつつあった。刻々と募る淫悦を解き放つことで頭がいっぱいになり、息子や仲間を介抱することも既に忘れている。歩を進める度に張型がごりごりと膣襞を抉り、本来聡明な精神を白く濁らせる。絶え間なくとろとろと溢れ出す淫蜜が、内股を伝って踵まで濡らしていた。
「はぁあああ………っ」
 欲情に頬を染め、瞳を潤ませてよろめき歩く淫靡な様子の美女は、いつしかマルス神殿を背にし、南の森へと道を辿っていた。彼女の通った後にはぬめる淫液のしたたりが残されたが、それも一刻と経たぬうちに乾き、土埃にまぎれてしまう。彼女の行方を探す者達が、その微かな痕跡に気付くことはなかった。


 神殿から消えた聖女。
 ――マルジュ達がその消息を知ることは、二度となかったと言う。




後書き

 本作はティアサガの二次創作(ひらたく言えばエロパロ)小説です。
 このお話は、Studio Min.様のSS付きCG集(同人ソフト)『ユトナの聖女達』のために書き起こしたものの、改定再収録版です。とらのあなメッセサンオーメロンブックス等同人委託販売ショップにて発売中。DL−Siteでも販売予定だそうです。本作を含め、筆者(おき)は3作ほど寄稿しております。気になった方は上記の名称で検索して探してみてください。
 ソフトの方は、ゆきむら様の美麗被虐CG付き。必見です。

 ――これの続きもそのうち書こうかと思っていたり。



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