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自民への迷い 将来に希望持たせて

2009年09月26日

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牧草の刈り入れも終盤。国の補助で新規購入できる見込みだったトラクターも「予算が見直しされて凍結されるかも」

 仕事を終えた16日夜、国会に初登院した民主の新人議員たちをテレビで見て、県中部で酪農を営む鈴木育夫さん=仮名、40代=は改めて若手の多さに驚いた。だが、「政治の世界に染まっていない若い人が多いのは逆にいい」。

 牛乳の消費量がピークを迎える6〜9月は繁忙期。朝5時から仕事を始め、作業が午後10時ごろまで続くこともある。8月30日の投票日にも以前から予定があり、期日前投票に行くつもりだったが、結局、行けなかった。

 「結果は最初からわかっているようなもの」と、どこかさめた思いもあった。

 今回、初めてマニフェストを読み比べた。長年支持してきた自民へ投票するかどうか迷ったのは、農業を積極的に支援してくれるか疑問を感じたことが大きかった。

 今年、畜産機器を購入する際、その一部を国が負担する補助事業は、積極的に申請を受け付けるようになった。鈴木さんも、この補助事業でトラクターやサイロ、堆肥(たい・ひ)散布機器などの申請がすべて受理された。

 一方、税制措置などの支援を受けられる認定農業者の数は増えず、中小農家の労働環境は改善しない。「利益を出して、さらに設備投資をして利益を拡大させる構造を作らなければ本質的な改革にならない」

 ここ2、3年、需要減に苦しんでいた乳業界は今年改善し、乳価は今春10円上がった。昨年の同時期に1キロ60円台だった輸入牧草の値段は現在約40円まで下がり、コスト負担も軽減している。それでも「悪すぎた過去2年を回復しただけ」と楽観はし
ていない。

 民主のマニフェストで、生産者にとって一番の不安要素はFTA(自由貿易協定)の交渉促進だ。牧草代が下がると喜んではいられない。自由化によって、国内の生産者が低価格競争に苦しむ姿は、91年の牛肉の輸入自由化の時に見てきた。「自由化で安価な輸入農産物が入れば入るほど、価格が下に引っ張られ、乳業界にも必ず影響は出る」

     □ □

 8月にハローワークに求人を出した。年齢制限なし、寮に住み込み可能で未経験は月給15万円から――この条件で何人来てくれるか、と思っていたが、募集翌日から、毎日数件の問い合わせが来た。結局、今までで最も多い約50人と面接した。「明日からでも働けます」「正社員で少しでも安定した職に」。自分と同年代で、期間労働者として働いていた牛乳製造工場の契約を打ち切られたという男性が切実に訴えた。雇用不安が広がっていることを、改めて痛感した。

 仕事の合間をぬって、仲間と農業生産の宿泊研修施設の準備を進めている。「好きで酪農をやってるから、牛乳以外でも収入の道を模索して続けていく道を探すしかない」

 民主のマニフェストにも疑問はある。だが、「民主でも自民でも一長一短ある。それでも民主で何かが変わるならば、その場しのぎの資金投入でなく、将来に希望を持てるよう経済を構造的に立て直して欲しい」。今は、動き出した新政権の動向を見守っていきたいと思う。

 鈴木育夫さんは20代で親元を離れて酪農家になり、県中部で牛約150頭を飼う。海外で酪農について学んだ経験もあり、その時に知り合った妻との間に2男1女のいる5人家族。

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