現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. 映画
  5. 記事

「のんちゃんのり弁」緒方明監督に聞く

2009年10月2日

■ヒロイン叱るつもりで作った

 離婚を決意した31歳の女性をヒロインにした「のんちゃんのり弁」が、東京・有楽町スバル座などで公開されている。同名のマンガを原作に、「いつか読書する日」の緒方明が脚本と監督を手がけた。今年50歳を迎える緒方監督は「20歳年下の女性を叱(しか)るつもりで作った」と話している。

 駄目な夫に愛想を尽かした小巻(小西真奈美)が、幼い娘を連れて、東京の下町にある実家へ戻ってくる。心機一転、仕事を探すも、面接ではどこからも相手にされない。小巻が唯一得意とするのは、娘ののり弁を作ること。試行錯誤の末、彼女は弁当屋を始めようとする。

 緒方監督は00年の長編デビュー作「独立少年合唱団」がベルリン国際映画祭で新人の作品に与えられるアルフレート・バウアー賞を受けるなど、海外でも高く評価されている。長編の監督が3作目になる今回、初めて原作ものを手がけた。

■物語より人物の魅力に重点

 「これまでは、物語を強固に構築する映画作りをしてきた。しかし今回はバツイチの女の子が弁当屋を開くだけのシンプルな話。物語より人物の魅力に重点を置き、テンポある映画を目指しました」

 小巻は男性中心社会の荒波をかぶるが、観客の同情を引くヒロインではない。行き当たりばったりで、他人への繊細さに欠ける。自由気ままに生きてきたツケが回ってきたようにも見える。

 「身近にいたら、かなり迷惑な存在でしょうね。しかし映画の歴史をひもとくと、寅さんもそうだけど、周囲に迷惑をかけつつもバイタリティーあふれる主人公が、魅力的に描かれてきた。最近、映画が現実を模倣し、どこにでもいる人物が多いようだが、それじゃいけない」

 原作は95〜98年、「モーニング」に連載された。連載開始時、原作の入江喜和はまだ20代。小巻より年下だった。10年たち、原作者の立場も少し変わっているようだった、と緒方監督は言う。

 「入江さんと打ち合わせした時、『小巻を映画の中で説教しないとまずいんじゃないか』とおっしゃったんです。当時の31歳と今の31歳はかなり違う。この10年でものすごく幼くなった。だんだん腹が立ってきたりするんですよ」

 映画では、小巻に料理を教える小料理屋の主人(岸部一徳)が、人生の厳しい指南役にもなっている。

 「20歳年下の彼女たちの幼さを、怒るのではなく、ちゃんと叱ろうと思って作りました。最近の映画は、観客に共感してもらうことばかり考えている。この作品は、迷走している彼女たちへの激励になればいいなと思っています」(石飛徳樹)

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内