2016年夏季五輪招致は「最後のご奉公」の3期目も残り1年半となった石原慎太郎東京都知事にとって、求心力回復の起爆剤になるはずだった。東京の下馬評は高いとは言えなかったものの、知事の期待が大きかっただけに、落選は政権末期の石原都政に大きな打撃となりそうだ。
「五輪招致は都政で唯一といえる明るい話題だった。失敗した今、知事のやる気、気力を維持できる政策を準備しないと、残る1年半、求心力はさらに落ちる」と局長級幹部は懸念する。
新銀行東京の経営再建、築地市場の移転…。五輪招致に熱を上げた知事はほかの課題で追い詰められつつあった。拍車を掛けたのが7月の都議選だ。
民主が第1党に躍進し、知事を支えてきた自民、公明の与党は過半数割れ。「築地移転の予算が通らなくなる」。都の幹部は頭を抱えた。
都の幹部は「招致活動費は公表している150億円どころじゃない。招致本部以外の局にも関連イベントをやらせている。総額いくらになるのか。住民監査請求が相次ぐのでは」と指摘。都内にばらまいたのぼり旗やポスターの回収、廃棄費用もかさむ。
都議会でも共産などが「税金の無駄遣い」として反対。民主は招致自体には反対しなかったが、五輪スタジアムの新設には難色を示していた。今後、招致活動の実態が追及されそうだ。
【写真説明】招致プレゼンテーションを終え、記者会見する東京都の石原知事=2日、コペンハーゲン(共同)
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