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鞆港埋め立て・架橋問題:差し止め地裁判決 手を携え、まちづくり /広島

 ◇原告「対立望まない」 県や市に協働呼びかけ

 「これからが本当のまちづくり」「推進派、反対派の壁をなくしたい」。住民の景観利益を認め、鞆の浦の埋め立て・架橋計画を「裁量権の逸脱」と断罪した1日の広島地裁判決。原告住民は「画期的な判決」と全面勝訴を喜ぶ一方、県や市、推進派住民に対し協働のまちづくりを呼びかけた。高齢化が進む町の課題に対し、判決を機に行政と住民が今後どう取り組むか、注目される。【重石岳史、井上梢、矢追健介】

 鞆の浦・埋め立て架橋計画を巡る訴訟の判決は1日、広島地裁が埋め立て免許の差し止めを命じ、原告住民らの完全勝訴となった。原告たちは、涙を流して手を取り合って喜んだが、裁判所で「勝訴」の旗は出さなかった。勝敗ですべてが解決するものでもなく、計画への賛否で住民同士が対立することを望んでいないからだ。

 原告団長の大井幹雄さん(69)は「昨日の敵は今日の友。すぐに融合できる」と自信を見せる。松居秀子事務局長(58)は「またゼロからの出発。行政、住民共々、再度調査していきたい」と述べた。

 原告弁護団の山田延広弁護士は、計画に賛成している人たちに対し「この判決をもって、もう一度、県や福山市の説明に正当性があるか判断してほしい。そうすれば、弁護団や住民の一部が、個人的問題として反対しているのではなく、もっと大きな日本国中の利益があるとわかるだろう」と呼びかけた。藤井裕弁護士も「判決は鞆を魅力あるまちにする第一歩だ」と力説した。

 ◇県「到底承服できぬ」 控訴は今後検討

 県の丸山隆英空港港湾部長らが1日県庁で記者会見し、「景観利益が漠然と範囲を広げてとらえられており、判例に照らしても適正さを欠くもので、到底承服できない」と話した。控訴するかどうかは今後決めるという。

 判決に対して「景観は大事だとの認識はずっと持っている。漠然ととらえられた景観利益と(県が出した)投資効果との比較の中で、極めて客観性に乏しい結論だった」と批判。また、「今回の計画は景観を侵すものだとは思っていないし、公共性の高いもの。地区のほとんどすべての方が計画を望んでいる」として、「現在の案を推し進めるのが最良であるとの気持ちに全く変わりない」と話した。【加藤小夜】

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 ◇景観利益認めた画期的判決--ユネスコ諮問機関・日本イコモス声明

 ◇歴史や文化を生かしたまちに

 世界遺産候補地を調査する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・日本イコモス国内委員会は1日、広島地裁判決を受け、次のような声明を発表した。要旨を紹介する。

    ◇

 本判決により、原告の方々の主張を認め、県が埋め立て免許をしてはならないとし、事業の調査検討が十分でないこと、鞆の浦の埋め立て架橋により鞆の歴史的・文化的価値が破壊されることが認定されました。景観利益が認められた画期的判決です。

 鞆は、イコモスが高くその価値を認め、埋め立て架橋事業について懸念を表明しています。さらに、日本イコモス国内委員会は鞆の価値と埋め立て架橋問題について研究してきましたが、研究成果が裁判で認められたものと思っています。

 県と福山市は、この判決を真摯(しんし)に受け止め、控訴を断念し、埋め立て架橋事業を断念するとともに、速やかに鞆の住民の生活環境を整えるとともに、鞆の浦の歴史・文化・景観を生かし、鞆が活性化する魅力のあるまちづくりの計画を住民と専門家を交えて策定されることを望みます。

 日本イコモスは、このための専門家の派遣などの協力を惜しまないことを約束します。

 また、国土交通大臣は、鞆の歴史・文化・景観を生かし、地域主体のまちづくりへの指導と支援のための体制づくりをお願いするところです。

毎日新聞 2009年10月2日 地方版

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