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【栃木】

『夢と誇り』で栄冠8度 作新学院高軟式野球部

2009年9月12日

最多8回目の優勝を果たした作新学院の渡辺主将(左)と川島投手。次は国体優勝をめざし、軟式の白球を追う=宇都宮市で

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 作新学院高軟式野球部が、八月に兵庫県明石市で開かれた第54回全国高校軟式野球選手権で二連覇を果たした。史上最多、8度目の全国制覇。快挙を支えたのは、軟式に夢をかける球児たちと指導者の誇りだった。 (横井武昭)

 夏の甲子園が閉幕した6日後の先月三十日。甲子園球場から西へ40キロ離れたもう一つの“聖地”で、球児たちが日本一をかけ戦った。明石球場で行われた決勝で作新は名城大付(愛知)を3−1で下し、3回目となる連覇を飾った。

 「うちには硬式のようなスターはいない。だが、軟式のプライドは見せられた」。胴上げで優勝回数と同じ8回宙を舞った黒川陽介監督(37)が振り返る。

 甲子園の陰に隠れがちな軟式。全国大会でも代表校は16にとどまり、スタンドも満席にはならない。それでも毎年、500校が「明石」を目指す。最多優勝歴を誇る作新はその筆頭。だが今夏、硬式野球部が31年ぶりに甲子園に出場し、注目はグラウンドが隣り合う硬式に集まった。

 「甲子園の華々しさはうらやましい。でも、体力や技術的理由で硬式は難しく、軟式を選ばざるを得ない子もいる」。軟式を30年指導する前監督の塩田充夫部長(52)が打ち明ける。

 2年連続で全国のマウンドに立った三年川島祐輝投手は、小学校から野球を始め甲子園にあこがれたが「硬式では力が足りないのは自分でも分かっていた」。門をたたいた軟式野球部でひじの使い方の良さが目に留まり、未経験の投手に抜てき。花形ポジションで才能を開花させ、今大会は全4試合を完投、うち2試合を完封した。

 三年渡辺真成主将も「軟式で自分が変わった」と話す。体が細く、小技が効く軟式を選んだ。入学時はおとなしい性格だったが、主将に指名されると、昨秋と今春の関東大会で敗れたチームを声をからして鼓舞し続けた。

 「硬式では3年間背番号もなく、ベンチ入りできない子も多い。軟式で、野球ができる喜びを知ってほしい」と塩田部長。体力や技術で劣っても強くたたけば打球は弾み、ゴロでも得点できる。泥くさくても勝つことで野球人としての自信をつけてほしいと願う。

 締めくくりは、二十六日に開幕する国体。作新は大会2日目の初戦で、再び名城大付と戦う。黒川監督は「この子たちと一日でも長く野球を楽しみたい」と有終の美を誓った。

 

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