政府の新型インフルエンザ対策本部の基本方針を基に決定されたワクチン接種のスケジュール。医療従事者を除いた優先接種対象者のうち、妊婦など最も優先度が高い人たちは、11月から接種が始まることになった。年度内には全優先接種対象者(約5400万人)への接種を終える方針だ。【江口一、清水健二】
優先接種対象となる基礎疾患(持病)について、厚生労働省は慢性の呼吸器病や心臓病など八つを示した。当初は供給量が限られるため、小児を含め、中でも最優先とする患者の基準を設定。この人たちは11月に接種を始め、それ以外の患者は12月以降接種予定とした。
接種対象の1歳~小学3年生までのうち、アレルギーなどがあって接種できない子の保護者らも新たに優先接種対象となり、1歳未満の保護者と併せて来年1月以降接種する。
対象者かどうかは医師が判断し、接種は基本的にかかりつけの医療機関で予約して受ける。しかし自治体の方針などによっては接種対象者の証明書を発行してもらい、別の医療機関や保健所などで接種することもある。
スケジュールは、対象者に4週間間隔で2回接種することを前提としている。しかし、海外では「健康な成人には1回接種で十分」との臨床試験(治験)結果が出ており、国内の結果も10月中旬には判明するため、今月下旬以降に見直される可能性もある。その場合は、優先接種対象者以外の一般国民も接種を受けられるようになる可能性もある。
輸入ワクチンは国内の治験などで安全性が確認されれば、来年1月から使用を始める。製薬会社大手のグラクソ・スミスクライン(英)から3700万人分、ノバルティス(スイス)から1250万人分を輸入するとしている。両社は副作用被害に対する免責を販売条件にしており、政府は、訴訟費用などの損失を国が肩代わりするための特別法案を臨時国会に提出する。
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■優先接種対象の基礎疾患と、その中でも最優先となる患者の基準■
対象の疾患 最優先となる患者の基準
慢性の呼吸器病 治療や綿密な経過観察が必要なぜんそくや肺気腫などの患者。特に呼吸機能の低下している患者
慢性の心臓病 「安静時には無症状だが、日常活動でも疲労や動悸(どうき)、呼吸困難、狭心痛がある」という状態より重い症状の患者
慢性の腎臓病 透析中や透析を始める前の腎不全患者。腎移植を受けた人。腎臓病と他の合併症がある人など
肝硬変 進行した患者
神経・神経筋の病気 多発性硬化症や重症筋無力症など免疫異常性の神経疾患。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの神経難病で呼吸障害などがある人
血液の病気 白血病、悪性リンパ腫などすべての造血器腫瘍(しゅよう)患者。造血幹細胞移植後、半年以上たった患者
糖尿病 ぜんそくや心臓病、腎不全などを併発した糖尿病患者や妊婦。1歳~高校生までの患者、インスリン療法が必要な患者
病気や治療で免疫抑制状態 HIV感染を含む免疫不全疾患。抗がん剤治療中の人。免疫抑制剤やステロイドを継続して使っている人
小児の病気 長期入院の子ども、ぜんそく、脳性まひ、重症心身障害児。15歳までの染色体異常症、小児がんなど
※最優先ではない患者は、基礎疾患のある人(その他)に分類される。
毎日新聞 2009年10月2日 東京朝刊