NPO法人ブロードバンド・アソシエーションは28日、有識者やIT業界関係者、アナリストなどで構成する「IT国際競争力研究会(俗称:超ガラパゴス研究会)」がとりまとめた「通信業界への5つの提言」を発表した。
「超ガラパゴス研究会」は、慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏が委員長を、日立コンサルティング取締役マネージングディレクターの芦辺洋司氏が副委員長を務める。通信業界、電機業界、コンテンツ業界を対象に、日本のIT企業の国際競争力を強化するために何が必要かを4月以降、議論してきた。今回はまず、通信業界に向けた提言をとりまとめた。
「超ガラパゴス研究会」の委員長を務める慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏 | 「超ガラパゴス研究会」の副委員長を務める日立コンサルティング取締役マネージングディレクターの芦辺洋司氏 |
5つの提言の要旨は以下の通り。
1)日本の通信業界は先進的な技術を用いてグローバル展開できるポテンシャルがあることを認識すべきである。
2)日本の通信端末メーカーはグローバルに通用するマーケティング力とコスト競争力を保有すべきである。
3)日本の通信端末メーカーはハードとソフト、サービスは切り離せないものであることを理解すべきである。
4)日本の通信関連企業の経営者は経営陣の多様性を取り入れるべきである。
5)日本の通信キャリアは海外展開をするのかしないのか、各社のスタンス、考え方、長期戦略を明確にすべきである。
提言1 | 提言2 | 提言3 |
提言4(1) | 提言4(2) | 提言5 |
議論の背景には、日本では世界でも類を見ない高度な携帯電話サービスが提供され、ブロードバンドインフラもトップレベルである一方で、「日本だけの特異な進化を遂げすぎ、世界で通用しない」という“ガラパゴス論”がある。これに対して研究会では、「特異であるということはそれだけ差別化ができるということであり、見方によっては強みである」とし、逆にこの点を生かして世界に通用するIT産業を生み出すことを目標としている。
28日に開いた5つの提言の発表会において、委員長の夏野氏は、通信端末メーカーのマーケティングやデザインなどの戦略の問題についてつきつめれば、提言の4点めに挙げた経営陣の問題にいきつくと指摘した。
「ダーウィンの言う種の交配ではないが、ガラパゴスと言われるゆえんは、雑種交配がないから。ガラパゴスを超えるには、雑種交配すること」と述べ、長い間、同じ会社で日本のマーケットだけを相手にしてきた国内役員だけで経営陣を構成するのではなく、海外などの異なる視点や、女性、他の業界、さまざまな年代などを取り入れることで、技術力など日本の企業が持っているポテンシャルを生かすことができると強調した。
また、特に携帯電話メーカーに向けては、出荷台数が減少傾向から、今後は国内市場だけでは立ちゆかなり、いずれは海外に進出するか、携帯部門から撤退するしか選択肢がなくなると指摘。少なくとも、国内市場だけでは楽観視できる状況にはなく、「提言を聞いてくれないメーカーは、1年後はまだ存続しているかもしれないが、5年後、10年後には携帯部門がなくなっているだろう」とした。