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鞆港埋め立てを差し止め 広島地裁が景観利益保護で '09/10/1

 福山市鞆町の鞆港埋め立て・架橋計画に反対する住民たちが広島県に埋め立て免許の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は、原告の大半を含む鞆町住民に景観利益があることを認定。鞆架橋計画が公有水面埋立法に反するとして、広島県知事に免許をしないよう言い渡した。

 歴史的な町並みがある地域で暮らす住民に景観利益があると認め、その保護を理由に公共事業の差し止めを命じたのは全国で初めて。国土交通省の埋め立て認可審査を含め、鞆架橋計画の行方に重大な影響を与えるのは必至な情勢になった。

 判決は、江戸時代の港湾施設や商家などが残る町並みと瀬戸内海の島々などに囲まれた鞆町の景観が、歴史的、文化的価値がある特別なものであると指摘。鞆の住民のみならず、国民的財産ともいうべき公益性があると明確に認定した。

 こうした景観は、鞆架橋計画の完成後は復元が不可能だと言及。「事業が鞆の景観に及ぼす影響は、決して軽視できない重大なもので、瀬戸内法などが公益として保護しようとしている景観を侵害する」とした。

 さらに、県が鞆架橋計画の事業メリットとして挙げた道路や駐車場、港湾施設の整備効果についても「必要性、公共性の根拠となる調査、検討が不十分か、もしくは埋め立ての必要性を肯定する合理性を欠く」と否定。埋め立て免許交付は知事の裁量権の範囲を超えるとして差し止めを命じた。

 訴訟は、鞆町の住民ら163人が2007年4月に県を相手に起こした。県と福山市が事業主体として進める鞆架橋計画を、原告は「景観を損なう埋め立ては公有水面埋立法に反する」と県に免許しないよう求めた。これに対し、被告の県は「景観への影響は少なく、大多数の住民が実現を望む事業で適法」と全面的に争ってきた。(野崎建一郎)

◇   ◇

 鞆港埋め立て・架橋計画 鞆港の約2ヘクタールを埋め立て、港を横断する長さ約180メートルの橋を架ける計画。幹線道の幅が狭い町中心部を迂回する県道を整備し、港湾施設や駐車場も造る。1983年に広島県が原案を策定した。事業主体の県、市は2007年5月、埋め立て免許を出願。県は08年6月、国に埋め立て認可を申請した。

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 広島県の藤田雄山知事の話 当方の主張が認められなかったことは残念であり、厳しい判決と受け止めている。今後の方針については、判決内容を詳細に検討した上で対応したい。

【写真説明】広島県知事に埋め立て免許差し止めを言い渡した鞆港埋め立て・架橋計画の差し止め訴訟=1日、広島地裁(撮影・高橋洋史)




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