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鞆港埋め立て・架橋問題:広島地裁判決 「ポニョの海、残る」勝訴の原告、拍手と歓声

 歴史的景観の保全か、開発かが問われた広島県福山市の鞆(とも)の浦を巡る訴訟。1日の広島地裁判決は県に埋め立て免許の差し止めを命じる画期的な原告全面勝訴となった。判決を聞いて泣き崩れたまま言葉にならない人、おえつを漏らしながら勝利をかみしめる人、満面の笑みで応える人……。「ポニョの海が残る」と喜びがはじけた。一方で、まち再生の決め手として架橋に期待を寄せていた賛成派住民は戸惑いを隠せない。まちの活性化という目標は同じながら地元は歓喜と落胆が交錯した。【重石岳史、井上梢、矢追健介】

 「ようやった」「ありがとう」。閉廷が告げられた瞬間、広島地裁に詰めかけた原告の住民ら約50人から拍手と歓喜の声がわき上がった。

 原告団長の大井幹雄さん(69)は「大変なことをした。判決がここまで踏み込むとは予想していなかった。どしんとした重みを感じる。ここまでぴしっと結論を出した裁判長に敬意を表したい」とおえつを漏らしながら喜びをかみしめた。閉廷した瞬間に泣き崩れた原告団事務局長の松居秀子さん(58)は「感無量。歴史に残る判決。20年の歳月とともに正義が認められた」と話した。

 ◇「公共工事の幻想やめよ」--宮崎駿監督

 アニメ映画「崖の上のポニョ」の構想を鞆の浦で練った宮崎駿監督は1日、原告勝訴の判決を受け、東京都小金井市のスタジオジブリで記者会見した。埋め立て免許の差し止めが認められたことについて、宮崎監督は「とてもいい判決。(広島県、福山市の)準備、計画がずさんというのは的を射ている」と評価した。

 宮崎監督はスタジオジブリの社員旅行で04年、初めて鞆の浦を訪れた。江戸期の風情が残る町並みなどに魅せられ、05年にも長期滞在。ポニョのイメージを膨らませたという。

 宮崎監督は「開発でけりがつく時代は終わった。公共工事で劇的に何かが変わるという幻想や錯覚はやめた方がいい」と話した。【山本将克】

 ◇「生活の実態を考慮してない」--推進派の住民団体

 福山市鞆町の鞆公民館では、埋め立て・架橋計画推進派の住民団体「明日の鞆を考える会」の北村武久会長(75)と、鞆町内会連絡協議会の大浜憲司会長(61)が、免許差し止め判決を受けて記者会見した。

 大浜会長は「非常に残念で、はなはだ遺憾。鞆町は救急車も入れない道沿いに、過半数の住民が住んでいる。人々の生活実態や命の重みを考慮した判決とは思えない。これで(計画推進の運動を)終わらせるつもりはない」と憤った。

毎日新聞 2009年10月1日 東京夕刊

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