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週 刊 三 橋 貴 明 〜新世紀のビッグブラザーへ〜
2009/04/20≪Vol.001≫
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中小企業診断士 作家 三橋貴明の
日本経済のボトルネックを取り去る国家コンサルティング ≪VOL.1≫
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☆☆☆☆☆☆ 日本経済は輸出依存である ☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆ 円高で日本経済は破綻する ☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆ 日本政府は財政破綻する ☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆ 日本の内需は絶望的である ☆☆☆☆☆☆
日本の新聞・テレビなどのマスメディアでは、上記のフレーズがあたかも「常
識」のように使われている。しかし、実際に数値データを調べてみると、上記フ
レーズは全て根拠が全くない「嘘」であることが判明する。嘘のフレーズが、ま
るで湿気を帯びた空気のようにまとわりつき、日本経済成長の「ボトルネック」
と化しているのが現実なのだ。
本メルマガでは、正しい数値データに基づき各種の「嘘の常識」を暴き、ボトル
ネックを取り去ることで、日本経済が着実な成長路線を進めるようコンサルティ
ングを提供する。 三橋貴明
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第一回目ということで、まずは数値データの「取り扱い手法」について解説して
おきたい。そもそも大手新聞社やテレビ局の経済報道や各種の「常識」が間違え
ているのは、報道関係者がデータの「取扱手法」について無知であるか、あるい
は無知を装っているからなのだ。
企業診断にせよ、国家コンサルティングにせよ、数値データの取り扱い方法は共
通している。もちろん、企業の数値データは「損益計算書」や「貸借対照表」な
どの財務諸表が中心で、国家の場合はGDPや国際収支などのいわゆる「経済指標」
が中心となる。
しかし、診断の対象となるデータが異なるからと言って、取扱手法まで変わって
しまうわけではない。
財務諸表や経済指標について分析する際は、三つの原則と二つのメソッドに必ず
従う必要がある。原則やメソッドに従いながら数値データを取り扱うことで、単
なる数字の羅列が、あたかも生き物のように変化し、企業や国家が抱える「真実
の問題」を露にしてくれるのだ。
まずは数値データ取り扱い時の鉄則、誰もが必ず守らなければならない「三つの
原則」についてご紹介しよう。
◆◆◆◆◆◆◆三つの原則◆◆◆◆◆◆◆
(1) 割合で見る(=絶対値で見ない)
(2) 流れで見る(=瞬間値で見ない)
(3) 相対化する(=他者と比較する)
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☆☆ (1) 割合で見る(=絶対値で見ない) ★★
例えば中小企業の利益額は、一般に大企業の利益額より小さい可能性が高いと思
う。
だからと言って、必ずしも中小企業の収益性が大企業に劣っているわけではない。
売上高対利益率(粗利益÷売上高x100%)や、ROE(純利益÷株主資本x100%)な
どの「割合」を見ない限り、この中小企業の収益性について正しい判断を下すこ
となどできない。
すなわち第一の原則「割合で見る」だ。
国家の経済指標にしても、人口400万人のシンガポールと、1億人を超える日本の
GDPを比較して、何かを語る人はいないだろう。例えば人口一人当たりのGDP
(GDP÷人口)など、割合で共通化、標準化をしない限り、正しい比較などできる
はずがない。
☆☆ (2) 流れで見る(=瞬間値で見ない) ★★
また、その企業の売上高が一見、小さく見えたとしても、実はここ数年間は継続
して売上増を続けている可能性がある。逆に、見かけ上の売上高が大きい場合で
も、実態は十年連続で減収になっているケースも、当然あるだろう。
ある一年、あるいはある四半期などの数値だけを見てその企業を評価するなど、
誰にもできない。瞬間の数値ではなく、流れで見る必要が生じるわけだ。
国家経済も同様に、数年間、あるいは少なくとも数四半期の数値データの「推
移」を見る必要があるのだ。
☆☆ (3) 相対化する(=他者と比較する) ★★
さらに、その企業が一見、収益性が低いように思えても、実は競合他社と比べる
と抜きん出て優秀なケースがある。もちろん、その逆のケースもありうる。
他者と比較して相対化しないことには、そもそもその数値が「何」を意味してい
るかなど、分かるはずがないのだ。
特に日本国家の経済を語る際に、マスメディアはこの「相対化」を必ず省く。
典型的な例として、「日本経済は輸出依存である」なる「嘘常識」を取り上げて
みたい。
「日本は輸出立国だ」
「日本は貿易立国だ」
読者の頭の中にはこの手のフレーズが、あたかも日本経済の常識として刷り込ま
れていると思う。だが、読者はこの手のフレーズが語られる際に、実際の数値を
見たことがあるだろうか。すなわち、日本経済が「どの程度」輸出依存なのか、
という数値である。
例えば、日本とシンガポールの輸出額(2007年)を比較すると、
☆日本:79.725兆円(1ドル100円で計算すると、7972.5億ドル)
☆シンガポール:2,990億318万ドル
となり、日本の輸出総額がシンガポールの二倍以上になっている。
だからといって、「日本はシンガポール以上に輸出依存」と表現するのは間違っ
ているだろう。
何しろ両国は人口の差も凄いが、GDPの規模も全く違う。経済規模に大きな開きが
ある以上、輸出額単体を比較しても何の意味もないことは誰でも分かる。
確かに、
「日本はシンガポールよりも輸出額が大きい」
という事実は分かるが、
「だから何?」
という話である。
両国の経済に輸出が与える影響を見る場合は、絶対値ではなく割合で見なければ
ならない。
両国の経済規模に対して、輸出の規模はどの程度なのか。すなわち、三つの原則
の中の(1)だ。
経済規模に対する輸出の割合を見たいのであれば、両国の「輸出依存度」を計算
すればいい。
☆輸出依存度=輸出額÷名目GDPx100%
上記の計算式に基づき、両国の輸出依存度を比較すると、
★日本の輸出依存度=15.5%
★シンガポールの輸出依存度=196.7%
何と、シンガポールの輸出総額は名目GDPの二倍近くにも達しているのである。
シンガポールの2007年における輸出額は、上記の通り2990億ドルに対し、名目GDP
は1520億ドルであるため、2990÷1520x100%で196.7%となるわけだ。
(1)の「割合で見る」と、(3)の「相対化する」の二つの原則を用いるだけで、日
本の「輸出依存」に「本当だろうか?」という疑問が生じることになる。
とは言え、
「シンガポールは通商・交易が産業の中心の人口小国なので、当たり前だ!」
と主張する人がいるかもしれないので、この日本の輸出依存度について、他の主
要国とも比べてみることにする。
★日本の輸出依存度=15.5%
★アメリカの輸出依存度=8.4%
★イギリスの輸出依存度=15.7%
★ドイツの輸出依存度=39.8%
★中国の輸出依存度=36.0%
★韓国の輸出依存度=38.3%
★ロシアの輸出依存度=27.3%
出典:JETRO(http://www.jetro.go.jp/indexj.html )
意外な人が多いと思うが、日本の輸出依存度は主要国の中ではアメリカに次いで
「低い」。
何しろ、すでに製造業が衰退してしまったイギリスよりも低いのであるから、半
端ではない。
ちなみに筆者は各国の輸出依存度を計算する際に、JETROのサイトを参照してい
る。特に、秘匿されたデータではなく、公開された情報を使っているにすぎない
のである。
誰でもアクセス可能なJETROのデータを参照するだけで、「日本経済は輸出依存で
ある」なる常識が嘘である事が一目瞭然になるわけだ。この状況にも関わらず、
マスメディアでは未だに「日本経済は輸出依存」があたかも常識のように報道が
展開されているわけである。
日本のマスメディアの知的レベルの低さは、率直に言って三歳児レベルだ。
繰り返しになるが、なぜ日本のマスメディアで「日本経済は輸出依存である」な
る根拠無しのフレーズが蔓延っているかといえば、報道関係者が、数値データを
扱う際に、上記の三つの原則をまるで無視しているからだ。
逆の言い方をすれば、三つの原則を用いて数値データを扱うだけで、マスメディ
アが常日頃報道している「常識の嘘」が次々に暴かれることになる。
本メルマガは、日本という国家の経済に対するコンサルティングが目的である
が、マスメディアで広まっている「嘘の常識」を前提にすることは決してない。
全て一次ソースに遡り、情報の正確性を確認しつつ、診断作業を進めることにな
る。
次回は、数値データを扱う際の二つ目の重要ポイント「二つのメソッド」につい
て解説する。
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■マガジン名 週 刊 三 橋 貴 明
中小企業診断士 作家 三橋貴明の
日本経済のボトルネックを取り去る国家コンサルティング
■発行者 三橋貴明
■所属事務所 三橋貴明診断士事務所 http://takaaki-mitsuhashi.com/
■ブログ http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/
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