北陸の経済ニュース 【10月1日05時24分更新】

タクシー特措法きょう施行 激戦地・金沢は一斉減車の足並みに乱れ
 タクシー事業適正化・活性化特別措置法(特措法)が1日、施行される。激戦区とされ る金沢も、新規参入などに対する規制強化の対象となる「特定地域」に指定されるのがほ ぼ確実な情勢だ。特措法では同一地域の事業者が協調して一斉に減車することも可能とな り、供給過剰の解消に期待が集まる。各社の意思統一が鍵となるが、一部では台数削減に 反対する業者が出ており、業界ぐるみでの需給適正化へは険しい道のりが予想される。

 特定地域に指定された地域は、まず事業者や自治体による協議会を組織する。そこでの 話し合いで減車の計画をまとめ、国に認定されれば一斉に台数を減らせる仕組みだ。

 しかし、減車に対する意識には温度差がみられる。

 「車を減らす気はまったくない」。500円タクシーを運行するカトちゃん交通(金沢 市)の加登和義社長は30日、北國新聞社の取材に対し、事業者が共同して行う減車に一 切応じない方針を明らかにした。

 同社の営業台数は現在15台で、加登社長は「これ以上減らせば雇用を確保できない。 国の勝手な都合に合わせて従業員の首を切るわけにはいかない」と強調。金沢市内の中堅 事業者社長も「台数を減らすのは経営的に難しい」と否定的だ。

 運賃格差が各社の足並みを乱している側面もある。初乗り690円で運行する大手を中 心とした事業者からは減車に前向きな意見が多いが、売り上げを伸ばしている560円組 の多くは減車に応じないとみられ、「台数より多重運賃の解消が先ではないか」(業界関 係者)との声も上がっている。

 石川県におけるタクシーの需給格差は深刻だ。北陸信越運輸局石川運輸支局によると、 県内のタクシー輸送人員は1998年度の約1724万人をピークに、最新データのある 07年度は約1395万人に落ち込んだ。

 対照的に、金沢交通圏の営業台数は02年の規制緩和後、約300台も増加。供給過剰 に陥り、売り上げ減による運転手の労働条件悪化など多くの弊害を招いた。

 県内大手である大和タクシー(金沢市)の市村祐二社長は「賛成、反対は各社の判断で 仕方ないが、現状を打開するには減車しかないと思う。行政を信じる以外に道はない」と 期待を込めた。

 金城交通(金沢市)は1日から、グループ3社の小型タクシー料金を950メートル4 60円に設定して営業する。短距離の運賃としては石川県内最安で、観光客や高齢者らの 利用を取り込む。

 従来は初乗り660円で営業していたが、560円の安値組に利用客が流れ、売り上げ が3割以上減少していた。

 新運賃は950メートルまで460円で、1・7キロまで375メートルごとに80円 を加算。それ以降は308メートルごとに80円を加える。一般的な1・7キロの初乗り 料金は620円となるが、岩本道成社長は「近距離の移動ならメリットは大きい。400 円台というインパクトで勝負したい」と話している。


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