インドネシア・西スマトラ州で30日発生した地震で、強い揺れに襲われた同州の州都パダン。同地にあるホテルにいた現地の男子学生(17)は取材に「寝ていたら大きな揺れが来た。慌てて外に出て身の安全を確保した」と驚いた様子で話した。この学生によるとホテルは倒壊せずけが人はいなかった。周囲では多数のけが人が出ているという。【野口由紀】
火山帯が連なるインドネシアでまたも地震が住民を襲った。現地のスマトラ島では、死者が出たほか、多数の住民が倒壊建物の下敷きになるなどの被害が伝えられている。04年12月にはマグニチュード(M)9・0のスマトラ沖大地震が発生。大津波による被害を含め死者・行方不明者が22万人以上となっただけに、被害の拡大が懸念されている。
インドネシア付近はオーストラリアプレート(岩板)の沈み込み帯に当たり、スマトラ沖大地震以降、5700人以上の死者が出た06年5月のジャワ島中部地震など、地震活動が活発になっていた。地震予知連絡会会長の島崎邦彦・東京大名誉教授(地震学)は「今回の地震はプレート内部で起こっており、プレート境界で起きたスマトラ沖大地震とはメカニズムが異なる。だが、位置が近いのでまったく無関係ではないかもしれない」と話す。
島崎さんによると、M7・6という規模はプレート内部の地震としては「かなり大きい」という。「震源は深いが規模が大きかったため、ほぼ真上にあるパダン周辺で大きな被害が出たのだろう。(日本時間30日未明に起きた南太平洋の)サモア沖の地震とはプレートも異なるので、関係はない」とみている。
スマトラ沖大地震の後、被害状況を把握するため現地を訪れた関西大の河田恵昭教授(地震学、危機管理)は「震源はスマトラ沖大地震の震源に近く、この周辺で地震が起きるのは不思議ではないが、前回は津波、今回は揺れによる被害だ」という。04年は人口密集地域に津波が押し寄せ、民家が流されるなどして多くの犠牲が出たのに対し、今回は直下の地震による揺れで建物が倒壊した。
「現地の関係者は、スマトラ沖大地震の後『(プレートのひずみがこれで解消され)地震はしばらく起きないだろう』と考え、他の地域の地震に注意が向いていた」と河田教授は指摘する。【西川拓、元村有希子】
毎日新聞 2009年10月1日 東京朝刊