第346話
テーマ:その後のエッセイ一度は完全に断ったはずの覚醒剤にまたもやどっぷりハマってしまった私。
同棲相手もいないから一人きり。自分のペースで好きなだけできる。止めてくれる人なんていない。
もちろん最初の頃は仕事に行っていた。丁度、ラトゥールからセラフィに移動したばかりの頃だった。
実はここで、完全に私のアイデンティティは崩壊してしまったように思う。
覚醒剤のこととはまた別の話なんだけど、今日はその事について書きますね。
私が仙台で働いていた大手の水商売チェーンは、何店舗もキャバクラやクラブを経営していた。
そこでは『ラトゥール』→『セラフィ』→『サテラ』と店をランクアップしていくのが、
ホステスのエリートコースだと言われていて、私も順当にその階段を駆け上がっていくはずだった。
私が『ラトゥール』に入店した時、丁度トップ3の女の子が『セラフィ』に昇格したばかりだった。
私が入店する以前に『ラトゥール』のNo1だったナナちゃんという女の子は、伝説のホステスで
まぁ、すこぶる評判が良く、指名本数も圧倒的だったみたい。
彼女はその後『セラフィ』に移動して、もちろんNo1を張っていたわけ。
で今回の『サテラ』リニューアルオープンにあたってのホステス大移動で、
ナナちゃんを含む『セラフィー』のトップ4が『サテラ』に昇格。
『ラトゥール』のトップ4の私達が『セラフィー』へとスライドしたわけなのよね。
もちろん元々『セラフィー』で働いていた子達とミックスされることになる。
『ラトゥール』では顔だった私や栄子もセラフィに移ればまず新人というわけだ。
でさー、その『セラフィ』にとんでもない美人が二人いたの!
みぃちゃんとゆぃちゃん。 双子みたいに同じような雰囲気の可愛い子で。
いやー… まじ芸能人顔負けの美しさ。 東京で生まれてたら完全に芸能界!レベル。
彼女達はなんと! 『ラトゥール』すっとばして『セラフィ』デビューというサラブレットだったわけ。
つーかね、私も自分が一番可愛いと思ってた。その天狗の鼻を圧し折られた気分…
たしか当時二十歳くらいだったんじゃないかなぁ。あたしよりも3つくらいは若かった。
しかも! 全然ホステスっぽくないの! なんともナチュラル… 自然体&天然!
営業もさ、全然気張ってなくて、のんびりおっとりだよ!!
こっちが「あっは~ん♪ うっふ~ん♪」って胸を寄せあげて色営業かましてるのに、二人は
客の話をうんうん笑って相槌打ってるだけとか。つーか!会話力ねぇ!あきらかに仕事できねぇ!
なのにさー いわゆるアイドル営業っていうの?
客は見返りなしに「可愛いから応援してあげる」みたいなファン心理になってんのか、
とにかく人気があるわけだ!
なんだこれ! 納得いかねぇ!! (苦笑)
彼女達二人は、私にとってはコンプレックスを究極にえぐられる存在だった。
負けたくない、その一心で私はどんどんケバケバしくなっていく。飾り立てないと不安だったんだ。
これでもかってくらい叶姉妹も真っ青ってなぐらいの気合だった。 ほとんどオカマw
ところが、みぃちゃんとゆぃちゃんは店の制服をメイクルームで脱いだ後のミーティングで
ジーパンに白いコットンのシャツとかで登場するわけよ!!!
ぎゃあああああああああ!!!! むかつくうううううううう!!!!!!!!
なに君達。。。学生?! ペキペキ(化粧が罅割れる音)
世の中には天性の美少女というのがいる。私のような後天的に作りこんだエセ美女とは格が違う。
しかも彼女達は幼い頃から蝶よ花よで育っているから抑圧的じゃなくて屈託がないのだよ。
なんというか彼女達を見ていると自分の汚れっぷりが露呈されるようで
私は卑屈にならずにはいられなかった。
あたしだって男だったら、彼女達みたいな女の子に惚れちゃうよ!
「なんで、こんな子がホステスやってるんだろう?」みたいなギャップ!
それに比べて私はどこからどう見ても「ホステス大御所さん!乙!」みたいなね…
なんというか、汚れてないかんじって演技ではどうにもならないものだよね。哀しいことに。
そんな苦労知らず(あくまでも私の主観だけど)のお嬢さんが、なんの苦労もせずに指名を取っている!
くやしーー! むかつくーーー!!! 女の嫉妬とは醜いものである。
で、妙に店の雰囲気がピリピリしちゃっててさ、そんな時にまた例のアレだよ! トーナメント!!
指名本数を競うイベントがはじまったわけ。 女の意地とプライドがぶつかり合う。
あたし必死。どうしても負けたくない。負けられない勝負だった。
もう全部の客に無理させまくって店に呼んだ。
「今日、店に来てくれなきゃ死ぬ!」 みたいな脅しも
「今日来てくれたら一緒にホテル行く!」みたいな見境ない嘘もなんでもアリで。
で、みぃちゃんとかゆぃちゃんも可愛い顔して、やる気まんまんですよ!
全然そんな風には見えないのが曲者で、しっかり営業してんね。
とにかくすごい客入り。ラトゥールの半分しかない箱のセラフィは常に満卓で長打の列。
しかもキャバクラじゃなくてクラブだから回転が悪い。
せっかく来てくれた客に待ってもらえるかどうかがまず勝負だった。
でトーナメント終盤、あたしとみぃちゃんの一騎打ちになったんだけど、どうにか最後は私が優勝した。
でもそれで終わり。 実力的には私の完敗だったと思う。 無理しまくって自分も客もライフゼロ。
もうちょっとの余力も残ってないよ… というか、嘘つきまくってフォロー不可能。
こんなやり方をすれば自滅。ゲームオーバーだ。
疲れを飛ばすためにスピードキメるから、変に痩せこけて、目の下クマつくって瞳孔開きっぱなしでさ、
フリーでついた客に「君、悪いことやってるでしょ、わかるよ」とか言われてたりして…
あたしそんなに変なんだろうか、とガクガクブルブル。
いやー、たぶん明らかにおかしかったんだろうな…
そーいうわけでさ、セラフィに移動して早々のトーナメントで意地の優勝をしてから
私は長期休暇にはいったのだった。
「すいません、少し休ませてください」 消耗しきった私は言った。
本当だったら店側も「おまえに抜けられたら困る」って言うはずなんだけど、そうは言ってくれなかった。
店の上層部ではすでに私に対する話し合いがもたれていたようで、
腫れ物に触るかのように「無期欠勤」を承諾してくれた。
こうして、私は
『恋』と『仕事』自分のアイデンティティだった二つの柱を失った。
つまりこれは、らぶどろっぷの主題でもある「自分の居場所」と「存在価値」を失ったということだ。
世界は自分の内面を投影したイマージュだ。 自身が崩壊すれば世界も当然のように崩落する。
次回は、その後のレンとの話を書こうと思います。
話がぽんぽん飛んでしまいますが、許してくださぃね。 また!
続きを読みたい人はクリックしてね
携帯らぶどろっぱーはこちら
人気ブログランキング
同じテーマの最新記事
- 第345話 11月06日