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招き猫は何を招いているの? | ||
なぜ右手上げと左手上げがあるの? | |||
招き猫の色に何か意味があるの? |
手にかかわること | 色にかかわること | |
右手挙げと左手挙げ 手の高さ / 手の向き |
三毛 / 白猫 /黒猫 赤猫 / 金猫 /其他 |
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持ち物にかかわること | そのほかの雑学 | |
首輪 / 鈴 涎掛け / 小判 |
性別 / 姿 / 眼 |
● 右手挙げと左手挙げ
二頭身に垂れ目という典型的な招き猫を創出したのは常滑と言われています。その常滑で招き猫を買いましたら、箱の中に『招き猫の由来』と題されたビラが入っていました。その中には「右手を挙げている猫は『銭を招くもの』、左手を挙げている猫は『客を招くもの』、といわれているようです」と書かれてあります。
他にも、いろいろな文献や資料を調べてみたものが下の表です。ご覧のように巷では右が金を招き、左が人を招くとする見解が多いようです。
右左逆(右=人・左=金)とする説もあったのですが、その説をどこで見聞きしたのか失念してしまいました。
右手 左手
一般的には お金を招く 人を招く または 福を招く 客を招く オス メス 『幸せの招き猫』
『来る福 招き猫手帳』『ねこグッズ』お金を招く
(京都では)昼の商売向け人(客)を招く
(京都では)夜の商売向け『開運! 招福縁起物図鑑』 お金を招く お客を招く 『招き猫の文化誌』 お金を招く 人(客)を招く 『monoマガジン No.349』 幸福を招く「一般家庭用」 客を招く「商売用」 常滑焼き 銭を招くもの 客を招くもの 京都の豆猫(*1) 堅気商売 水商売 住吉神社 家内安全 商売繁盛 豪徳寺 人を招く 難波神社 商売繁盛(金) 千客万来(銀) 今戸神社 ○ 法林寺 神の使い (民間のもの) *1 京都の豆猫 京都で売っている小さな招き猫の能書き。 右手挙げはお金を招き、左手挙げは人を招く――何か根拠があるのでしょうか? その根拠に言及している資料はほとんどありません。
数少ない招き猫の挙げる手に関する文献を探してみますと、まず、『招き猫の文化誌』(宮崎美子著)という本に次のような記述があります。仏教では左手が不浄といわれ、招き猫の手は、右で招くものが本当などといわれる。通説では、右手はお金を左手は人(客)を招くといわれている。
招き猫は稲荷信仰の影響が考えられますから、仏教云々というところが気になります。実際、古い招き猫には左手の招き猫が多く存在しますから、仏教云々という話はあまり当てにはならないでしょう。
もう一つ、招き猫の手について言及している文献は『京都民俗誌』(井上頼寿著・昭和8年刊)があります。 これもまたお寺関係です。三条大橋東づめの壇王(今の法林寺)の主夜神の神使は猫なので、招き猫を出す。緑色の猫で右手をあげる。徳川時代は民間では左手の方の招き猫より他はつくらせなかったという。
この記述を引用して、永野忠一氏は自著『猫の幻想と俗信』の中で、「招き猫のポーズを制限するほどの権威があったのだろうか。この招き猫は今は亡い」と疑問を呈しています。左右の意味も不明ですが、参考までに。
ところで、右手を挙げた招き猫と左手を挙げた招き猫とでは、どちらが多いのでしょうか? 調べてみましたので、興味のある方は〔招き猫の統計学〕へどうぞ。
招き猫の挙げた手をよく観察すると、耳の辺りまでしか挙げていない猫や耳を超えて高く挙げている猫がいます。この手の挙げる高さにも意味があり、高ければ高いほど遠くの福を招くといわれます。
このことに関してはどの文献も一致していますが、根拠があってのことではないようです。我々も遠くの人を手招くときに、手を高く挙げて大きなジェスチャーをします。おそらく、その辺りから、高くてを挙げた招き猫は遠くの福を招くと考えるようになったのでしょう。
招き猫にはドルキャットと呼ばれる青い目をした招き猫がいます。外国人のおみやげ用に作られたものでしょう。小判の変わりにドル硬貨を持っています。手招きのジェスチャは手の甲をこちらに見せるという、日本とは逆のジェスチャです。
STARFIELDさんのご協力を得て、この手招きジェスチャについて調べてみました。興味のある方は 〔招き猫の手〕をご一読下さい。
1999/2/6
常滑で招き猫を買いますと箱の中に『招き猫の由来』と題されたビラが入っています。その中に、
招き猫は何を招く?
三 毛 幸運を招く 白 福を招く 黒 病除け・厄除け 金 金運を招く 赤 病除け・魔避け・無病息災 ピンク 恋を招く その他 黄色や緑など、風水絡みで最近増えている 京都の称念寺の白と黒の招き猫は、白が『福を招くもの』、黒は『病を防ぐもの』、また金猫は『金運を招くもの』として珍重されています。
と書かれています。
このように、招き猫の色についても意味付けがされています。白猫、金猫についてはどの資料もそれぞれ「福を招く」「金を招く」とほぼ共通ですが、黒猫、赤猫については微妙に違っています。
白に黒や茶色の斑のついた猫。招き猫にはこの三毛猫が圧倒的に多いようです。洋の東西を問わず、三毛猫のオスは幸運を招くとして珍重されています。遺伝子上、三毛猫のオスは数が非常に少ないうえに、生殖能力を持たないオスが多からです。このことは1946年に京都大学駒井卓博士によって遺伝学的に証明されています。三毛猫のオスが珍しいというのは経験的に古くから世界的に知られていました(『猫の歴史と奇話』平岩米吉著)。
● 白 猫
白猫と三毛猫の区別をつけるかどうかの問題はありますが、ここで白猫は純白の猫のこととします。などともったいをつけたところで、なぜ白なのかは不明です。清潔、純粋を意味するとする本もあります。キツネの土人形の流れをくんでいるのでしょうか。
この【招猫倶楽部】をご覧になったゴン太さんから、キツネ人形の色について次のようなメール(抜粋)を頂きました。招き猫の豆知識の中にある猫の色についてですが、その中でも白猫については自分の推論ではありますが、伏見稲荷のキツネと関連してちょっと述べさせて頂きたいのです。
まず、狐についてですが、これは中国の五行説によって土気の生き物として昔から尊ばれてきました。その体毛の色が黄色である事が土気の獣たるゆえんです。土気が繁栄する事は、そのまま豊かな実りにつながります。つまり、ここで狐=豊かさの象徴という図式が出来上がったのです。その狐がなぜ白くなったのか。これも五行説における相生の理に基づきます。相生の理とは木気は火気を生じ、火気は土気を生じ、土気は金気を生じ、金気は水気を生じ、水気は木気を生じると言うものです。これらの五気にはそれぞれ対応した色があり、木気は青、火気は赤、土気は黄、金気は白、水気は黒といった具合です。
これらのことから、土気の獣たる狐は、金気を生み出すと考えられ、その金気をもっとも強く持つ白い(つまり金気を帯びた)狐は福を呼ぶ象徴とされたわけです。
長くなりましたが、もし白猫が白い狐の流れを汲むものであるならば、狐に当てはめられた上記の推論がそのまま猫にもあてはまりはしませんでしょうか(白い猫=金気の獣)?
※ゴン太さんは何かの本で、このキツネの色に関する考察を読まれたということです。『狐』というタイトルではなかったかと記憶されているそうです。貴重な情報を頂いたゴン太さんに、この場を借りて御礼申し挙げます。もし、招き猫が狐の土人形の流れをくむものならば、白い招き猫というのは「金気」を持つものと考えられます。
● 黒 猫
魔除けの意味があると考えられています。京都では客を呼ぶといわれているそうです(『幸せの招き猫』藤田一咲+村上瑪論著)。
また、黒い招き猫は「厄難を払い、家内安全を祈ります」(『縁起物大集合』)とする説もあります。
江戸時代、労咳すなわち肺病の患者は、身辺に黒猫を飼うと全快するという俗信がありました。「青白い娘のそばに黒い猫(天二信2)」という川柳が残っています。「飼い猫が黒ければ娘は良縁にこと欠かない」ともいわれていました。しかし、この俗信はどちらかといえば後述する「赤」の病除けです。
こうした俗信と招き猫との関係は不明です。黒猫には魔力があるという俗信から、招き猫に結びついたのは間違いないと思います。
『DIME 97年No.23』の記事によりますと、「今、OLたちの間で”黒い招き猫”が人気」だそうです。黒招き猫の魔除けが転じて、ストーカー除けとしてウケているということです。※『DIME』の情報は、vikkeさんに提供いただきました。この場を借りまして、御礼申し挙げます。
● 赤 猫
赤は疱瘡の神が嫌う色だといわれ、麻疹や疱瘡(天然痘)を避けるためといわれます。病気除けのお守りでしょうか。
「魔よけ、無病息災。燃えるような赤は悪魔を威圧し退散させます」(『縁起物大集合』)という説もあります。● 金 猫
最近よくみかけます。お金を招くという意味でしょう。「西側に置くと尚良し」(『DIME 97年No.23』)だそうです。
● 其 他
ガラス玉の宝石をちりばめたものやら、ピンク、ブルー、いろんな色の招き猫が登場しています。最近、特に多いようです。JR東京駅地下街にあるアクセサリーショップには金銀ガラスをちりばめた招き猫をたくさん置いていました。そこの店員の若い女性が、「招き猫を毎日磨いていたら願いが叶うらしいですよ。報告にこられるお客さんが最近多いんです」と言っていました。
ピンクの招き猫をよく目にしますが、これは恋愛運向上(『DIME 97年No.23』)だそうです。1999/2/6
日本における猫の首輪の歴史は相当に古く、「猫渡来後間もなくできた奈良春日神社宝物の太刀にも、ちゃんと首輪を着けた猫か模様となって彫られている」(『猫・ねこ・ネコ』粟津きよさと著)そうです。
時代はずっと進んで、江戸時代の元禄の頃の書物『本朝食鑑(ほんちようしよくかん)』小野必大著(元禄5〔1692年〕)にも、「本邦古来宮中多く之を愛す。頸に錦繍を纏ひ、金鈴を著け、或は之に名づくるに美称を以て喚び、懐抱し之を弄す」とあるそうです。古来から宮中では錦繍の首に巻いていたことは間違いないでしょう。
田村水鴎作「振袖美人図」の一部
出典『肉筆浮世絵III』『卯花園漫録』(文化6年〔1809〕)には、「猫、狆又矮狗なんどの首へ赤き布にて輪を入れて結ぶを”くび玉”と云ふ。これは”首だが”ならん」とあり、江戸時代には赤い布の首輪を巻いていたことが解ります。当時は、首輪ではなく、「首玉」「首たが」と呼んでいたのでしょうか。
今では赤い首紐といえば、緋縮緬(燃えるような紅色)をイメージします。緋縮緬は江戸時代、玄人(遊女、芸者)の女性が身につけるものとされていました。遊女達が好んで巻いたのではないでしょうか。
左の絵は田村水鴎作「振袖美人図」です。振袖の美人が猫に赤い首輪を巻き、赤い紐でつないで散歩をしています。
芳年作「風俗三十二相 うるさ相」
出典『浮世絵鑑賞事典』オスだから(冗談)。江戸時代、猫に鈴をつけるのが流行りました。
首輪の項でも紹介した『本朝食鑑(ほんちようしよくかん)』に「本邦古来宮中多く之を愛す。頸に錦繍を纏ひ、金鈴を著け、或は之に名づくるに美称を以て喚び、懐抱し之を弄す」という記述があります。江戸時代、猫は高級品で、逃げないように縄で繋いでいたようです。首の鈴もどこにいるのかすぐに解るようにつけたのでしょう。
右の絵は芳年作「風俗三十二相 うるさ相」という浮世絵です。明治二十年前後の作ですが、寛政年間の遊女の風俗を描いたもののようです。猫が緋色の首輪に金の鈴をつけています。
● 招き猫の涎掛け
招き猫の涎掛けについての考察は〔涎掛けをする招き猫〕をご覧ください。
猫に小判(冗談)。お金を招いて欲しいという願望がストレートに表現されているだけでしょう。
招き猫が小判を持つようになったのは、最近のことです。おそらく、常滑系の招き猫が小判を持ったのが始まりではないでしょうか。しかし、昔から縁起物と小判はつながりがありました。江戸時代の土人形に小判の上に乗った狐や鼠がいるのです。招き猫にも小判の上に乗ったものがあります。乗っていた小判を持つようになった――というところでしょうか。
『吉祥招福 招猫画報』(日本招猫倶楽部編)によりますと、招猫の小判は首の金の鈴が発展したものではないかということです。古い招き猫には金の鈴の代わりに小さな小判をぶら下げているものがあります。また、首に巻いた涎掛の絵から発展したとも思われるそうです。涎掛には「福尽くし」といって、縁起の良い絵柄(お多福の面、大福帳、当たり矢等)が描かれていますが、その中に小判も含まれていたのです。
小判を抱えた招き猫のデザインは常滑にはじまるといわれますが、縁起の良い小判を強調する意味で、首にぶら下がっていた小さな小判が強調されたデザインになったのではないでしょうか。
招き猫の小判には、「千万両」や「開運」など縁起のよさそうな文字が書かれています。小判の文字について調べてみましたので、興味のある方は〔招き猫の統計学〕へどうぞ。
1999/2/6
豪徳寺の招き猫は雄なの? 右手を挙げているのが雄猫といわれます。雄といわれる豪徳寺の招き猫は右手を挙げています。
左手を挙げているのが雌猫といわれます。客を呼ぶ招き猫が左手を挙げている由縁でしょうか。遊女が男を誘うというわけです。
【二頭身】 二頭身から三頭身の招き猫が多いようです。これは、日本猫の特徴といわれます。平安期以降、日本で飼われてきた、いわゆる日本猫は、中型、太い胴、大きな頭、丸い顔、太い足、長い尾を特徴としています。
【裃】 裃は江戸時代の正装です。正装で客(金)を招こうというのでしょうか。もう一つの縁起物、福助との合体した招き猫もあります。
【礼】 これも福助との複合体でしょうか。
【他】 寝転がっている招き猫、ぶら下がる招き猫。落ち着きがありません。転移運動としては当っているかもしれませんが、個人的趣味としては感心しません。なぜなら、招き猫が好きなのであって、ネコが好きなわけではないからです。
招き猫の眼に関しての考察は〔招き猫の眼〕をご覧ください。