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アジアの美、磨き輝く―第6部〈融合競演〉

2009年7月5日3時13分

写真ダイヤモンドの新ブランド発表会で新作を身につけるBee=東京・六本木ヒルズ、関口聡撮影

 東京・六本木ヒルズ。大都会を見下ろす52階で、先月、ダイヤモンドの新ブランド発表パーティーが開かれた。人気モデルの冨永愛や杏(あん)らとともに、Bee(31)も高価なアクセサリーを身につけてポーズを決めていた。山東省出身の在日華人だ。

 新ブランド「フォーエバーマーク」のPRディレクター、平良美樹さんは「プロ意識の高さと、身体の迫力がイベントに合っていた」とBeeを起用した理由を話す。

 本名は畢方傑(ピー・ファンチエ)。10代で中国の売れっ子モデルに。だが早い成功で、かえって刺激が薄れ、太ってしまった。「モデルをやめよう」と思っていた矢先、今の事務所にスカウトされ、減量を条件に来日を勧められた。「新しいチャレンジ」と98年に来日。毎日のランニングで体重を落とした。

 間もなく、小学館のファッション誌「Oggi」に起用された。鈴木深編集長は「日本人にない迫力。特に体のバランスが素晴らしかった」と振り返る。

 細身でありながら、肩の線がしっかりしていて、体に厚みがある。しかも腰高。日本人には少ない「迫力」ある体形を持つ一方、「日本人っぽさ」で読者との距離感をつめる。華人などアジア系モデルが求められる理由だ。「Oggi」の人気専属モデル、ヨンアも韓国出身だ。

 女性誌「MORE」(集英社)の杉野潤子編集長が「日本人に近い雰囲気がありながら、日本人にはない手足の伸びやかさを併せ持つ」と絶賛するモデルがいる。Lina(22)。本名・韓佳麗(ハン・チアリー)。中国吉林省出身で、05年に来日。今春まで3年間、「MORE」専属モデルを務めた。

 誌面では、中国語の手書きの履歴書を載せ、中国出身を隠さなかった。「読者にとって国籍は関係ない。それよりモデルの等身大の姿を見せて、距離を縮めることが大事」と杉野編集長は話す。

 BeeもLinaも、モデル事務所ニューフェイスに所属する。経営者は上海出身の在日華人、陸文平さん(42)。190センチの長身。中国のコンテストで、男性モデルとして入賞した経験を持つ。

 93年に来日。モデル事務所の仕事を手伝ううちに「アジア系、中国系のモデルに対するニーズが出てきている」と感じ、00年に独立した。

 日本で受け入れられる「かわいさ」と、中国人特有の「強さ」を兼ね備えたモデル。日本での経験から「見た瞬間に『いける』と感じた子は、必ず成功する」と確信を持つようになった。

 BeeやLinaの成功で、日本でのチャンスを求めるアジアのモデルたちから「会ってほしい」という申し込みが増えてきた。東京まで訪ねてくるモデルも少なくない。陸さんも頻繁に中国に出かけ、人材を探す。中国で発掘した原石のような若いモデルが、日本で磨かれ、「アジアン・ビューティー」として活躍する。(竹端直樹)

    ◇

 日本と中国、台湾の文化が溶け合い、市場が広がる。選手や棋士が力を高め合う。第6部「融合競演」は、大衆文化の交差点で、融合と発展を担う在日華人たちとその現場を伝える。

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