起点は妙典(仮)

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help リーダーに追加 RSS 『追悼のざわめき デジタルリマスター版』を見た。今日も元気にカルト映画館〜第29回

<<   作成日時 : 2007/08/20 21:29   >>

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8/19 キネアティック 試写会にて。




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一応、年内公開映画に関して、このスタイルでのエントリーを作ってます。
さて、この映画。1988年に最初の公開になったんですよね。
んで、このエントリで作るかどうか迷ったんですがチラシなどを見ると「デジタルリマスター版」で製作年月日が2007年扱いとなっていたので心置きなくこのスタイルでのエントリー掲載にさせていただきます。

あらすじは同作品公式サイトより。
大阪市南部、若い女性たちの惨殺事件が続発する。
被害者たちは下腹部を切り裂かれ、その生殖器が持ち去られていた。

犯人は廃墟ビルの屋上で暮らす孤独な青年、誠(佐野和宏)。
彼は「菜穂子」と名づけられたマネキンを愛し「愛の結晶」が誕生することを夢想していた。
次々に若い女性を惨殺し、奪った生殖器を菜穂子に埋め込む。

やがて彼女に不思議な生命が宿りはじめ、様々な人間が、 誠と菜穂子が暮らす「魔境」=廃墟ビルへと引き込まれていく。

現実の街並みは、いつしか時間感覚を失い、傷痍軍人や浮浪者など、 敗戦直後を思わせるグロテスクなキャラクターが彷徨しはじめる。
純粋に二人だけの世界で生きていた幼く美しい一組の兄と妹(隈井士門、村田友紀子)。 遊びといえばケンパしかしらない。かれらもまた、菜穂子がいる廃墟へと導かれてゆく。

菜穂子と産まれてくる子供のために、誠は、小人症の兄妹(日野利彦、仲井まみ子) ふたりきりで営まれる下水道清掃会社で働きはじめる。
福田の妹・夏子は誠に心ひかれてデートに誘うが、路上で暴漢に襲われ、無残にもレイプされてしまう。< 深い絶望は、自分の醜い火傷姿が男たちに愛されたことで癒されるが、 誠に、愛する「女」がいることを告白され、孤独と嫉妬に打ちひしがれる。
街をさまよい、やがで廃墟ビルへ…。

廃墟ビルの屋上。
幼い妹は菜穂子に「母」の面影を見る。
兄は、その姿に激しく「性」を感じる。

そのとき、廃墟ビルに引き込まれた人々に残酷な運命が訪れる……。


※ <参照:youtubeより動画予告>
・追悼のざわめきデジタルリマスター版 新予告編
・追悼のざわめき 15秒予告1
・追悼のざわめき 15秒予告2
・追悼のざわめき 15秒予告3


この手の映画の通の間ではカルト的人気がある作品なんですね。
DVD化もされていなければ上映もそれほどない。
たまに思い立ったように各地でポツリポツリと上映会が催される程度で、そこでしか拝見できないという作品。

そんな『追悼のざわめき』がデジタルリマスター版として手を加えられ、渋谷のシアター・イメージフォーラムでついに上映されるという。
その上映に先立ち、完成披露試写会を開催するというのでここぞとばかりに応募。
そして、当選した! (たぶん当選するかなーという感触はあったんですが、なんでそんな感触を感じてたのかはナイショ。)

さて、そんな映画を一足お先に観て来たわけですが・・・。

うん、いろいろなものに挑戦している映画ではあるなとは思いました。
最初に、公園の鳩を逝っちゃってる青年・誠が惨殺するシーンから始まるんですが、頭を叩いたのか動かない鳩を一匹捕まえて軽く首をコルク栓のように捻り切り、無造作に捨てるようなシーンから始まりただならぬ空気はそこでもう感じ取れるようになっている。

そのような"危険"な雰囲気で始まるこの作品は音楽は極力使わずに常に淡々と進んでいく。
全編を綴るモノクロ映像からは白と黒のコントラストであらゆるものを表現していくわけですが、爽やかな夏の正反対に存在するべきむさ苦しさを露呈していく。

殺人、色欲、嘔吐、腐乱死体、フリークス兄妹、親近相姦、人種差別、障害者差別、ホームレス、下水道、そしてカニバル。あらゆる醜さを表現している作品ではあった。
試写会の前にプロデューサーの挨拶があり「体感してください」と言っていた。
今のこの季節街を歩けば、滲み出てくる汗のようにどこかその社会の裏側にひっくり返されて路上に放置されているようなものを魅せられ、恐らく製作側の意図どおりに人々の裏に眠る好奇心を刺激されていた気がする。普通に口にするのも憚れるような奇麗事を抜きにした好奇心。

もしかしたら、それこそ白と黒のコントラストなのかもしれない。

けれど、この映画に関しては白に当る陽の部分って言うものが非常に少ない。とことん闇で作られていく。
フリークスな妹が通りで暴漢に襲われ輪姦されてしまうなんてシーンがあったが、首下から右胸を丸ごと覆うほどの醜い体であり、かつフリークスということである彼女が犯されたことによって、"女"に目覚めてしまうなんていうシーンもある。
とことん闇に私には見えるのですが、もしかしたら劇中の彼らにはこれが何かの兆しに捉えたのかもしれない。
地獄に堕ちた者への救いの一本の蜘蛛の糸のような。
まあ、その救いの糸も軽く断ち切れるんですがね。

そうした狂気に彩られながら、話は1軒の廃屋で全てをリンクさせる。

狂気の映画は、冒頭の「はとぽっぽ」であったり、フリークス妹の口ずさむ桜田淳子の「青い鳥」であるような微笑ましい歌の塗り薬を使いそのドロドロしたものを増幅させている。
青い鳥で思い出したが、この映画には冒頭の鳩といい、フリークス兄妹の飼ってるインコだったり女子高生(中学生?)が話していた不気味なカラスの話だったりと鳥について思い返せば挿入されていたようなことがあった。
小さく、か弱く、自由の象徴でもある鳥たち。その鳥たちを握りつぶしたり、惨殺したり。
生まれ持った障害だったり、愛しい異性が血の繋がった妹だったり。
なんとなくなんですけどね、そんな象徴なのかなと思ったんですよ、鳥に関しては。
そんな「青い鳥」ってことで。

仕事場の下水道で、縁のなかった(と思われる)女子高で、歪んだものだけ集まってきた廃屋で、公園で。あらゆる場所で彼らはもがく。 差別、軽蔑、不自由な想いにもがく。
鳥を殺せば得られるものなのか、人を殺して、臓器を抜けば得られるものなのか。

さて、作りに関してちょっと思うところを書いてみようと思う。
最初に忘れないうちに難点を挙げるとするならば、あまりにも淡々と描かれているだけあって設定説明が少し伝わりにくいところもあったとは思う。誠の下水道の仕事というのも単に下水道で鬱憤をぶつけてるだけの画にも見えなくもな。また、特別関係を説明するわけでもないので中高生くらいの若い兄妹の関係も淡い恋人同士にも見えなくもなかった。
私は、チラシ、サイトなどで少し概要をかじり見していたのでわかってはいたが、伝わりにくいものはあったのではないかとは思う。そのような設定説明には些か不恰好さを感じましたかね。
とはいえ、インディーズにしては中々よく出来ている映画だなというのが素直な感想。
モノクロということで、少しぼかしたようなところもたぶんあったのだろうけれど、上記にも書いたようにモノクロのコントラストがやけに聞いていて、映画の雰囲気に合っていたと思います。
恐らく予算がもっとあれば、エグいシーンなどももっと直感的に作れたのかもしれないなとは思うところもありましたけどね。だから、「惜しい」ところも正直随所に見られたことも実際の私の感想です。バックボーンを考えると仕方が無いところもあるのかなと思うこともできましたが。
また、これも邪推にすぎませんが、ゲリラ撮影多くなかったですか?

youtubeに予告がアップされている例の燃やすシーンとかなど警察、消防などの車も何台も来ていたし、とてもインディーズ映画で協力要請できるようなもんでもないと思うのですが。
(実際、あっさりいくものなのかわからないけど)
また、女子高にフリークス妹がキチガイ乱入していくのも、恐らくエキストラなどは雇えるような状況でも無いだけにゲリラ撮影っぽい空気がするんですよね・・・。
そう見えただけにリアリティもあったし、中々興味深かったです。

もし、ゲリラ撮影であるならば、バカ正直に(←褒め言葉)正面から色々なものにぶつかりながら作品にしていったんだなという感想は出てきます。


日本のインディーズ映画などもCSやDVDでたまに見たりします。
けれど、安っぽいのはしょうがないにしろ、どこかで手ぬるさが出ているんですよね。
だからどうも楽しめないって言うか。
この映画も正直、私のような人の好奇心というものを刺激しようという意図も結構あったと思うんですよ。
それを見透かして映画評論家(笑)のおすぎのようにこの映画に罵声を浴びせる人もいます。
そんな人もいますが、私は充分に好奇心を揺さぶられたのであれば、それはそれで認めなきゃいけないと思うんですよね。

気持ち悪い、汚い。
それだけで終わりにしたい人は終わりにしてもいいのだと思います。
しかし、せっかく汚いものを並べているのならば普段の世間の映画ではオブラートに包んでしまってるものを直視できるのであれば素直に観ればいいと思うんですよ。

色々とタブー視されているようなネタが凝縮されている映画であることは否めないし、それで客を釣ろうというところがある映画だとも思う。
しかし、とりあえずそういうものに向き合って評判や揶揄などのリスクも背負って作られていることは事実だとは思う。今はどうかわからないが、1988年の当事は海外の上映でも税関の許可がでなかったことがあったなどの逸話も聞いた。内容が内容なだけにいろいろと障壁もあることも恐らく覚悟はしていたと思う。

それほどに向き合って作られたことだけは少なくても事実だとは思う。

そのインディーズ映画ではあるものの人の好奇心を刺激しまくる2時間30分。
飽きることは全くなく、その淡々と綴られる絵図をスクリーン越しに眺めることができる。

体験する映画なのだろうか?観察する映画なのだろうか?
モノクロの黒い箇所と白い箇所。どちらから眺めればいいのか、それは映画を見た人が決めればいい・・・と思う。


最後に。
この作品を知っていろいろ情報を漁ってるとDVDになるという話が2月ごろでたようなのをどこかで読んだような気がする。

・・・でも、フリークスをあまりよろしく扱わない映画が日本でDVDで販売できるものなのでしょうか・・・。
いや、もちろんされるといいんですけどね。もう1回くら見てみたいですしね。


・評価:★★★★★★★★★★
     ★★★★★★★☆☆☆ (17)
・公式サイト



・理解不能度:★★★☆☆   
・キ●ガイ度:★★★★★ 
・グロゴア度:★★★☆☆ 
・おバカ様度:★★☆☆☆ 
・御エロ様度:★★☆☆☆ 

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