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きょうの社説 2009年9月30日
◎来年度予算編成 景気の下支えをより前面に
2010年度予算の基本方針が閣議決定され、鳩山政権の予算編成が本格的に動き出し
た。各省庁が8月末に出した概算要求を白紙に戻し、10月15日までに予算を再提出することになったが、編成作業は例年より1カ月半遅れとなり、閣議決定された「年内編成」へ向け、まさに時間との競争になる。鳩山由紀夫首相は基本方針に関して「無駄排除と景気刺激策を同時に進める」と述べた 。景気は持ち直しの兆しが出てきたとはいえ、足取りは弱く、「二番底」の不安も消えていない。来年度予算も景気の下支えをより前面に出した中身が求められるのは当然である。 予算編成は政策決定プロセスの抜本的な見直しと同時並行で進むことになるが、あれも これもと手を広げれば混乱が生じかねない。政府予算案が遅れれば景気刺激どころか、景気回復に水を差し、地方の予算編成にも大きなしわ寄せが及ぶことを認識する必要がある。今年度補正予算の見直しを含め、景気浮揚と地方への目配りを忘れないでもらいたい。 民主党はマニフェスト(政権公約)で子ども手当など初年度だけで7兆1千億円の新政 策を約束した。それらの財源を生み出すために予算の無駄遣いや不要不急の事業を根絶するとしている。予算増額にしのぎを削ってきた各省庁が概算要求段階から減額を目指すのも自民党政権ではあり得なかったことである。 財源に限りがあるなかで公共投資の大幅な見直しは避けられないとしても、抑制が過ぎ れば景気の下支え効果が損なわれる恐れもある。事業の必要性については景気対策という観点からも十分に吟味してほしい。 予算編成の中心になるのは菅直人国家戦略担当相なのか藤井裕久財務相なのか、今ひと つ役割が明確でないのも気掛かりである。指揮命令系統が円滑に機能しなければ迅速な予算編成は難しいだろう。かつて非自民の細川連立内閣が予算編成に手間取り、景気悪化に拍車をかけたと批判された苦い教訓を鳩山首相は十分承知のことと思う。年内編成という内閣の約束を果たす上で最も重要なのは鳩山首相の指導力と決断力である。
◎静岡便のてこ入れ 石川側も「主」のつもりで
搭乗率の低迷が続く小松−静岡便のてこ入れを図るため、フジドリームエアラインズ(
FDA、静岡県牧之原市)が11月から新たな割引制度を導入することを発表した。予約した時期ではなく、空席率に応じて割引率が変わる仕組みで、こうした割引制度は日本初という。同社は、普通運賃の引き下げや鹿児島への乗り継ぎ運賃の新設にも踏み切るとしており、路線の生き残りをかけて相当に思い切った手を打ってきたという印象を受ける。FDAは、静岡空港の開設に当たって静岡側の主導で設立された経緯があるものの、地 方空港と地方空港を小型機で結ぶ同社のビジネスは、北陸新幹線金沢開業後の小松空港の有効活用策を考える上でも注目に値する挑戦である。仮に、小松−静岡便がこのまま減便や廃止に追い込まれれば、緒に就いたばかりの地域間交流に水を差す恐れもある。同社の支援に関しては、石川側も「静岡側が主、こちらは従」という意識を捨て、主体的に知恵を絞りたい。 7月23日に1日2便体制で就航した小松―静岡便について、FDAは搭乗率65%を 目標に掲げているものの、現時点での実績はそれをはるかに下回る水準で推移している。7、8月には49%だった搭乗率が、9月は30%程度にまで落ち込む見通しであり、不況や高速道路の休日値下げなどの影響を割り引いても、危機的な水準と言わざるを得ない。 こうした現状を受けて、石川県は、利用者を対象とした緊急アンケート調査などを実施 する方針である。利用者の声にしっかりと耳を傾けて、運賃やダイヤなどあらゆる面でより使い勝手がよくなるよう、FDAとともに考えていく姿勢は大切だ。 ただ、過度の支援はFDAの危機意識を薄れさせ、逆効果となりかねないこともわきま えておく必要がある。たとえば、能登―羽田便のように搭乗率保証に踏み込むことについては、慎重であるべきだろう。そのあたりもよく考慮して、静岡側とも緊密に情報交換しながら、ほかに何ができるか検討してもらいたい。
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