【経済スピークアウト】直面する国際社会の複雑な利害関係

 鳩山首相の外交デビューに注目

2009.09.17

 鳩山由紀夫内閣が発足しました。鳩山首相は来週早々、国連総会(ニューヨーク)と金融サミット(ピッツバーグ)で外交デビューします。とりわけ、金融サミット参加国は金融危機に対する鳩山首相のスタンスに注目しています。

 昨年11月の金融サミット(ワシントン)以降、世界が取り組んできた対策は4つに分類されます。

 第1は拡張的マクロ経済政策。世界経済の底割れ防止に寄与してきたものの、米国の金融バブル、中国の景気バブル、新興国の資源・穀物バブル再燃という「負の側面」が徐々に拡大しています。その結果、今後の世界経済については「安定的な成長は確約されていない」「先行きは不安定」という見方が一般的になっています。

 第2はIMF(国際通貨基金)などの国際金融ファシリティーの強化。日本はIMFへの最大1000億ドルの融資、最大5000億ドルの新規借入取極(NAB)増額などを提案しています。しかし、こうした対応が被支援国を経由したバブルにつながっている面もあります。

 第3は金融危機の原因となった金融機関行動などを是正するための規制強化。金融機関のみならず、企業、投資家、監督当局への対策が講じられており、ヘッジファンドの登録制導入、金融安定化フォーラム(FSF)の金融安定化理事会(FSB)への改編強化など、一部は成案を得ています。

 もっとも、規制強化は「欧州vs米国」「産業界vs金融界」の対立構図を生み出しており、多くの成果を得るには至っていません。足元の懸案である自己資本比率規制強化(普通株による増強)、金融機関幹部の報酬制限についても議論が続いています。

 第4は保護主義回避の動きです。一般論として異論はないものの、実際には米国、欧州、中国、インド、資源国それぞれが潜在的に経済圏の囲い込みインセンティブを高めており、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)などの動きと連動しています。

 さらに、7月のG8サミット(ラクイラ)でオバマ米大統領が「各国財務大臣が気候変動ファイナンスの議論に関与すべきである」と発言しました。排出権取引は新たな金融バブルを生むリスクもあり、鳩山首相はデビュー早々、国際社会の複雑な利害関係に直面。その手腕に注目が集まります。(民主党参議院議員 大塚耕平)