内閣の要所に幹部級の政策通を配し、党務は小沢一郎幹事長に任せる新政権の布陣は、政治刷新に向けた熱意を伝える。少なくとも総裁選候補者の層の薄さを見れば、自民党ではこのレベルの人事はできないと思う。
スタートを切った鳩山政権に期待したい。
新政権は「政官業」のしがらみの外に身を置き、何が必要かの優先順位を決めて、少子高齢化の不安におののく市民生活に安心感を与えてほしい。この際、自民党政権下で定着してしまった政治家=利権のイメージも払しょくできるはずだ。
内閣には国家戦略局(室)や行政刷新会議など脱官僚政治の仕掛けがなされたが、首相の意志にまさるものではない。
その点で、鳩山由紀夫首相の温室効果ガスの削減宣言(90年比25%)は、リーダーの決断を示すものだった。
90年比8%減を掲げた前政権からの大転換で、経済界のしがらみの薄い民主党のなせる業だ。まさに政権交代効果だと言えよう。政策のフリーハンドを得るためにも企業団体献金廃止の主張は苦しくても貫くべきだ。
政策の現場でも戦いが始まる。ミスター年金、長妻昭氏は厚生労働省のしがらみの渦の中に飛び込んだ。民主党が国家プロジェクトと位置付ける年金記録漏れの解決は容易ではなく、後期高齢者医療制度の廃止、最低保障年金の創設など厳しい制度設計が待ちかまえる。
弱者どうしのパイの配分にも及ぶ、厚労行政に絡む既得権の調整は、一刀両断にはいかない。官僚との対立構図を作るだけでは制度は動かせず、「野党だから文句が言えた」の反証に期待する。
一方で民主党は小沢氏を中心に連合と二人三脚を組み、自民党に近かった業界団体との関係も構築しようとしてきた。参院選に向けて関係はさらに強化されるだろう。
オープンで抑制的な陳情の吸収システムを作らなければ、前政権と同じてつを踏むことになる。古い自民党政治への逆戻りはもうごめんだ。
毎日新聞 2009年9月17日 東京朝刊