ワンコイン側は12業者が連携し、再規制反対の署名運動を始めた。タクシー運転手の平均年収は325万円(08年度)。他社から移籍後、年収が3割増えたという「ワンコイン八尾」(大阪府八尾市、70台)の大石益沢(みつさわ)運転手(61)は「利用者の支持があるから売り上げが伸びる。安いから待遇も悪いと言うのは短絡的だ。既存業者は経営努力もせずに我々を『悪貨』扱いし、行政と一緒に締め出そうとしている」。
9月25日に大阪地裁であった行政訴訟判決では、個人タクシーの初乗り480円への値下げ申請を却下した近畿運輸局に対し、安全を損なうような不当な価格競争が起きる具体的な恐れはないとして、認可を命じた。
一方、既存業者側は「ワンコインは客の多い時間しか見かけない。公共交通としていかがか」と反発する。既存組を中心に約170社が加盟する大阪タクシー協会の井田信雄常務理事は「人件費が7割の業界。稼ごうとすれば無理に働き、過労や事故につながる恐れがある」と語る。(多知川節子)
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〈タクシー規制〉 02年2月の改正道路運送法施行に伴い、運賃設定は大幅に自由化された。初乗り運賃は上限の1割安まで自動認可。下限を下回っても、国交省がコスト構造に無理がないと判断すれば認可された。野党側修正案を盛り込み今年6月に成立した特措法は、供給過剰の大阪や京都、神戸などを「特定地域」に指定。新規参入と増車は新たな需要に対してのみ認められる。道路運送法の運賃認可基準も、「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」と改められた。