小泉改革による02年の規制緩和を行き過ぎと反省し、タクシーの運賃規制を再び強める法が10月に施行される。政権に就いた民主党も労働組合の要望を受け、再規制を推し進めてきた。500円硬貨をまねた行灯(あんどん)を乗せ、大阪の街を走り回る「ワンコインタクシー」の行方は?
平日深夜。繁華街・北新地近くの市道に、客待ちのタクシーが列をなす。一般的な初乗り660円タクシーの運転手(58)は、200メートル進むのに2時間かかった。「昨秋の金融危機以降、毎月の手取りは4万〜5万円減った。お客さんがおらん分、タクシーも減らしてもらわないかんわ」
その脇をすいすい流すワンコインタクシー。信号で止まると客の方から近づき、ドアをたたいた。北新地でバーを経営する女性(28)は「出費は少しでも抑えたい。必ず安いのを待ちます」。
国土交通省近畿運輸局が輸送実績などから算出したところ、大阪府内は緩和以前から約3800台の供給過剰だった。そこに、初乗り2キロ500円▽273メートル80円だった加算運賃を225メートル50円に▽5千円を超えた分は半額――などの割引が続々登場。今では緩和前よりさらに約3千台増え、タクシーは計2万3千台に。初乗り500円は約2千台で1割近くを占める。
ワンコインは東京など各地にも誕生したが、「ここまで成長した都市は他にない」(近畿運輸局)。価格にシビアな大阪人の気質や、大阪の繁華街から近畿圏への夜間の長距離客の存在が背景にあるとされる。
10月1日に施行されるタクシー適正化・活性化特別措置法では、増車が制限され、1年ごとに認可を受けていた低額運賃の審査も強まる。近畿運輸局は「低額を一切排除するものではない」とするが、「適正な利潤」の有無が審査され、ハードルは高まりそうだ。