名古屋にて2008-10-11 Sat 23:24
明日から始まる日本私法学会に参加するため、前日の今日（どうでもいいですが私の29歳の誕生日）に名古屋入りしました。JALの50人乗り小型ジェット機に乗って、閑散とした小牧空港経由で名古屋の中心部のホテルに泊まり、今夜は中高大と一緒だった友人と食べ飲みしました。
学問を研究しながら試験勉強も同時並行で行った者として、自分の専攻との関わり方については常に再考を迫られる日々が続いているように思います。学問は狭く深く自分の情緒を込めながら、試験勉強は浅く広く機械的に、それぞれをこなさなければなりません。事実、私は今回の新試験で「公法系」は160点台前半という点数を頂きながら、専攻であるはずの「民事系」は190点台しか頂くことができませんでした。こういうのを下手の横好きというのかもしれませんが、これからはあくまでも民事法系の学者として生きていく私にとって、専攻の広く深い理解は不可避かつ不可欠なものです。明日からの2日間で、勢いに飲まれることなく、冷静にそれを自分のものとすべく観察してきたいと思っています。 受験指導については、地元に帰ってからまたお手伝いできることがあればいたしますので、14日以降までしばらくお待ちください。LANを無料で使えるので、ウェブはなるべくこまめにチェックします。 テーマ:ロースクール（法科大学院） - ジャンル:学校・教育 |
息抜きの話題2008-10-08 Wed 20:03
堅苦しい話が多いので、ちょっと緩い話題を提供します。
fc2ブログを選んだ理由として、豊富なオプションが標準で設定できることがあるのですが、アクセス解析でホストを見るのが日課になっています。 一般のプロバイダ経由の方で、リピーターになって頂いている方や、会社コンピュータを使用（私用）されている方（社会通念上適正な範囲内でお願いします）もいらっしゃいますが、たまにもろに大学名が表示されることがありまして。 大学のホストからご覧になっている方ではあまりリピーターはいらっしゃいませんが、今のところ以下のような学校からのアクセスがあります。 灯台：受験情報が手に入らない環境だから仕方ないよね… 兄弟：要件事実と理論教育の架橋がうまくいってないのかな？ ソフィア：葉玉どうっすか？ 都の西北：既修認定替え時かもね ブルガリアヨーグルト：苦戦の理由は憲法？刑法？ 楽天：ビリ脱出おめでとう！ ちなみに私の現在の所属大学は、ホスト名の追跡ができないようになっているので、これには引っかかりません。 どこの大学の方でも陰ながら応援しております。 テーマ:ロースクール（法科大学院） - ジャンル:学校・教育 |
学内向けレクチャー（公法系）の総括2008-10-08 Wed 14:30
昨日・今日と、今回一発で合格された３期既修の方の代役として、少人数向けに今年の問題の公法系について、私なりの視点からゼミ形式でのレクチャーをさせて頂きました。
やはり少なからぬインパクトを与え（てしまっ）たようです。違憲審査基準をかっちりと提起していなかったり、訴訟要件を十分に検討していないのにこの点数（１６０点台前半）がつくのはどういう理由なのか、私なりの解釈を述べたつもりですが、従来「手本」とされてきた答案スタイルとは大きく異なるものであるため、少なからぬ戸惑いをもたれたことも事実です。 その場にいらっしゃった方にはお話ししたのですが、私が今回このような（専門外の）科目の解説を引き受けたのは、端的に言えば「統計的バイアスの軽減」目的です。私の現在所属する大学ではＯＢの弁護士を中心とした勉強会組織がかなり発達して（幅をきかせて）いるのですが、試験という制度に必定の現実として、彼らが「模範」「理想」とするものと、実際に「点数」が入るものとには少なからぬ乖離が存在します。しかしながら、定型的な指導を目指す場合、どうしても「自分たちのスタイルにはまっていて高得点のもの」「自分たちのスタイルにはまっていなくて低得点のもの」は直視するのですが、「自分たちのスタイルにはまっているが低得点のもの」「自分たちのスタイルにはまっていないが高得点のもの」については目を背けがちなのです。私はこの４分法でいくと、最後の類型に該当する者ですが、その現実をお示しすることにそれなりの意義があると思って、今回のお話をお引き受けした次第です。 しかし私のような考え方は、見る人が見れば相当リスキーな答案作成の方針であって、少なくとも安全パイとはいえないものです。これを彼（女）らがどのように消化して、自分のものとするか、あるいは受け入れずに従来の方針を貫くかは、彼（女）らの自己責任によるものです。「生兵法（なまびょうほう）はけがのもと」といいますが、私がおそれるのは、彼（女）らが僕の答案スタイルをみて無理矢理従来のものとのミクスチャーを作り出さないか、ということです。それをするのだとしたら、私はかなり罪作りな人間だと自戒すべきなのかもしれません。 法科大学院在学中から、私の考え方や着眼点が多くの人と異なっていたことは事実ですし、それは研究者コースに移った今ですらそうです。しかし、学者はいい意味でも悪い意味でも無責任な存在であって、自分たちは試験を作って採点する側ではあっても、採点される側ではないのです。それに対して、彼（女）らは、司法試験委員のお眼鏡にかなう（あるいは彼（女）の要求水準には達しないが合格点がつく）答案を作成することが至上命題な訳です。私がもしそれに支障を来すような指導をしてしまったのであれば、率直にお詫びを申し上げないといけません。 彼（女）らに早く、よい順位で合格してほしいという気持ちは、受験指導者と何ら異なるところはありません。そして、彼（女）らには、私の答案の特異性と特徴を十分にダイジェストする力があると信じて、昨日・今日のようなご説明を心がけたつもりです。 彼（女）らを含む、このサイトをご覧の受験生の皆様のご健闘を、心より祈念申し上げます。 p.s. そこで要望のあった、憲法百選の中で特に私が重要と考える判例リストについては、順次暇を見て作成していくことにしますので、気長にお待ちください。私は民事法系の学者の卵ですから（笑）。 テーマ:ロースクール（法科大学院） - ジャンル:学校・教育 |
追記�◆�民訴法対策について2008-10-01 Wed 14:00
標記の件でご質問を受けましたので、公開の形でお答えしたいと思います。ご質問のコメントを頂いた方がこの回答について公開扱いとすることに抵抗をお感じになる場合は、私までご連絡頂ければ、直接メール等するなどして回答に代えたいと思います。
過去３回の民訴法の問題を見てみたのですが、確かに「●●をやれば得点できる」ということをいうことは非常に難しい感じがします。また、「正攻法」としての勉強法というものもいかにして確立するかなかなか判断に窮する観もあります。 しかしながら、私はここに一定の共通項を見出すことは不可能ではない、という感触も得ています。まず一つ目は、民訴法（ないし民事訴訟）上の基本原則・原理から推及する問題、制度趣旨の正確な把握を試す問題が多いということです。例えば去年の問題についていえば、弁論主義の原則の前提として弁論主義の対象となるのは主要事実に限られる、という基本原理がある訳ですが、それを直接見える形で問うと易しくなりすぎるので、補助事実の自白という形をとって「根っこ」が十分に張られているかを間接的に問うているような印象を受けます。このような民事訴訟法上の基本原則・原理の着実な定着、その中でもとりわけ要件事実（的思考）と深く関わるテーマについての判例・実務的な理解を進めることが、（直接出題内容を予測することが極めて困難であるとしても）問題を解くに際して有利にことを運ぶための手段として機能するように思います。 もうひとつは、「隅々まで勉強することを怠らない」というメッセージです。正直に申しまして、今年の証明妨害の問題は、まさに「現場」で考える問題の類であって、そこまで勉強することはこのメッセージの含意ではありませんし、私も正直初見の問題でした。このメッセージが意図していることは、基本訴訟（１人対１人、訴訟物１個）だけではなく複雑訴訟、上訴・再審、略式手続といった、応用力を問われる部分についてもひととおりの判例・実務説を頭に入れておく必要があるという意味です。例えば、今年のもうひとつの意外性の強い問題として、主観的追加的併合の判例の射程を絞る反論問題が出題された訳ですが、これは少なくとも請求の併合について歴史的展開も踏まえたひととおりの勉強がされていないと到底太刀打ちできない類の問題ともいえます。これから仮に上訴・再審についても問題が出るとすれば、そこで点差が開くことはある程度予測できますので、是非隅々までまんべんなく勉強されることをお勧めしたいと思います。執行・保全についても薄い本で結構ですので、同様に学習をお願いしたいと思います。 さて、藤田広美『講義民事訴訟』を「相手に合わせる」ために用いた、という、やや意味が不明瞭な表現を用いたことについてご説明致します。もう答案構成を消しましたので再度ご説明しますと、私は学部時代新訴訟物理論の洗礼を受けたため、長い間新堂民訴を教科書として用いてきました。旧試験においては本当は背後の主張立証関係において旧訴訟物理論を前提とした問題が出てはいましたが、まだ新訴訟物理論を前提とした解答も十分に可能だったのです。 ところが、新試験においては前期修習の内容も組み込んだ出題となったため、要件事実教育とセットで、旧訴訟物理論の採用が不可避となりました。少なくとも新訴訟物理論を元にした要件事実の概説書で一般的になったものが存在しない以上、旧訴訟物理論に立たないことには答案を書くことができません（実はここに、今年の証明妨害の問題など、直接的に訴訟物理論と関わりのない問題を出題することによる新訴訟物理論学習者への配慮を見ることも可能なのですが、その可能性に賭けることは若干危険であると思います）。そこで、旧訴訟物理論を前提とした教科書の一読が避けられなくなったのですが、伊藤眞教授の基本書は若干大部なもので理論的にも緻密であることから、書研講義案の実質的な著者である藤田広美氏の『講義民事訴訟』を応急手当として読んだ、ということです。この本も必ずしも読みやすい日本語とは言い難い面もあります（それに比べると、新堂民訴はダイナミックで読みやすい本です）し、また上訴・再審については除いてあります。しかし、民事訴訟（法）上の基本原則や基本的な手続を概観するためには必要十分な本であると感じたので、択一対策としては新堂民訴を維持しつつ、論文については必要に応じて実務説で書くことに決めた、ということです。 最後に演習の方法ですが、これについては何とも言い難いというのが本音です。確実な良問としてはいつものことながら旧試験過去問や法教演習とお答えすることになるのですが、ここ数年の流れを見ていると民訴については特に一行問題に近い内容の出題が目立ちます。その意味では、旧試験過去問の着実な定着は有益であると思います。さしあたり学者の解説書としては辰巳さんから出ている和田吉弘教授のＬＩＶＥ民訴新版があります。その他に特にお勧めしたい演習書というものはあまり思いつきません（この分野は特に絶対数が少ないという面もあります）が、近時のものとしては明大の納谷廣美先生が演習書をお出しになっており、これは一行問題を多く含んでいます。興味のある方は手にとって見られるとよいかと思います。受験新報の答練についてはフォローしておりませんが、問題の適切性から適宜判断して頂くほかないと思います。 なお蛇足ですが、ごく最近の旧試験論文問題は、予想以上に細かい手続について概説する問題と、基本原則・原理から解きほぐす問題との組み合わせで来ていますので、是非フォローされておくとよいかと思います。 以上でお答えとさせて頂きます。公開が問題でしたら、コメントをお寄せ頂いた方はご一報下さい。 テーマ:ロースクール（法科大学院） - ジャンル:学校・教育 |
答案構成掲載終了のお知らせ2008-10-01 Wed 00:03
以前から予告しておりました通り、９月３０日をもって答案構成の掲載を終了させて頂きました。今回の答案構成をもとに再現答案を作成し、ある出版社に提供したためです。ご了承下さい。
当該再現答案が掲載された雑誌ないし書籍が刊行された場合には、このブログでも告知させて頂きます。 テーマ:ロースクール（法科大学院） - ジャンル:学校・教育 |