のどから手が出るほど欲しい平均点

第3回新司法試験に滑り込んだ現法学部助教の記録(現在進行形)

法教商法演習+ブルドック最決

今日は、北村先生の2007年11月商法演習の解説と、ブルドック最決を中心とした買収防衛策に関する判例・裁判例の流れについての解説のゼミを行う予定です。午前中から関係文献をコピーしたりして下準備中です。
前者については、第2回本試験で類題が出題されているので、さほどマークが必要な問題とは考えていませんが、当時は会社法の根本的理解がまだ浸透していない時代だったためか、某予備校の答練で有利発行・不公正発行のどちらか一方についてのみ問うていたため、受験生がかなりの部分片方を落としていた、というしゃれにならない話も聞きました。条文を見れば双方とも問題になり得ることは明らかですし、予備校さんが「この部分は検討しなくていいですよ」と誘導していても、本試験で同様の誘導があるとは限りません(本当に予備校外しを狙っているなら、むしろもう片方を問うてもおかしくないくらいです)。答練の活用自体私は否定も肯定もしませんが、そのような場合は自ら発展的学習の材料にもして頂きたいと思います。
後者については、今までも問題文にしばしばM&A関係の人物(たとえば第3回ならばM&Aアドバイザーなるもの)が現れてはいますが、直接買収防衛策に関する出題は今のところありません。まさに「アナ」の一つです。第3回の問題傾向からすると生やさしい出題では済まないかもしれず、当座最重要論点の一つと断言してもよいくらいです。
ブルドック最決の評価については別論、その正確な理解もなかなか困難ではあります。ニッポン放送事件東京高決が死んだと勘違いされている方も少なくありません。今日はその辺りも丁寧に説明する予定です。私自身は、ブルドック最決を手放しで評価できるものとは考えていませんが、受験生の皆様にとっては判例の正確な理解が第一ですので、最高裁(調査官)に成り代わって説明するつもりです。

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平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見、など

事務方の処理が急ピッチで進んでいるということなのでしょうか、ようやく例年の「ヒアリング」にあたるものが法務省ウェブに掲載されました。

法務省ウェブ直リンク

ざっと見てみましたが(注:私にとっては終わったことなのでざっとでもよいのですが、受験生の皆様は十分に検討されて下さいね)、憲法についてはおおむね私の主張でよかったようですね。「趣旨」には記載のなかった内閣府令への委任立法の適否についても論じるべきテーマとして挙げられていましたし、当然ながら参照判例として岐阜県青少年保護育成条例事件も上がっていたので、一部予備校さんが言ったように「検閲は論じるべきではない」というのはミスリーディングだということもはっきりとしました。
一方で行政法については、私の負けだったようです。当事者訴訟の仮の救済についてはマイナス点として明記がありましたし、訴訟要件については一通り検討して欲しかったようです(私は処分性のみ)。
ただ、いいわけがましいですが、仮に憲法が最高点とされる95点来ていたとしても、行政法のあの答案でも68点以上来ている訳でして、十分「良好」の中に入っていることには注意が必要だと思います。個別法規解釈から処分性を論じたところが高評価だったのだと信じています(というか信じたい)。
会社法については、やはり書くことがいっぱいあって大変だったね、的なコメントでした。突出した難問という印象がぬぐえませんでしたので、今回はもう少し穏当な問題を期待したいところです。
労働法については、労働契約法適用でも減点しなかった旨明記があったのが特徴的でした。推測に過ぎませんが、出題委員と採点委員との間でやりとりがあってこの形に落ち着いたのではないかと思います。今年の問題からはほぼ自明に適用があるとは思いますが、なお注意を喚起しておきたいと思います。

ついでに蛇足ですが、例によって受験新報さんの添削を1科目(民訴)請け負っています。65通前後あって45通程度見ましたが、なかなか厳しい状況です。旧試験受験生の方は択一の出題がないのでまだ余裕がありますが、新試験受験生(読者の多くはそうだと思いますが)にとっては、もうあと3ヶ月あまりです。複雑訴訟や上訴についても、手際よく処理できるように訓練をお願いしたいと思います。

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ブルドックソース事件最決についての質問への回答

昨日、以下のような質問を頂きました。

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公聴会お疲れ様でした。無事に終わられたようで何よりです。

早速で申し訳ないのですが、ブルドック事件が出てきたので…

ブルドック事件は最重要判例、ということで商事法務から出ている「ブルドックソース事件の法的検討―買収防衛策に関する裁判経過と意義」とか20年度の企業価値研究会の報告書とかを読んでいるのですが、どうにも判決の射程や最高裁の考え方が良くわかりません。

報告書を見ると、企業価値を高める買収は良い買収、低くするのは悪い買収という従前の理論をベースにして、時間稼ぎはOKだが、完全な防衛策は濫用的買収者でなければ駄目。株主意思の尊重は買い付けに応じるかで決定。株主総会はアンケート調査に過ぎない。といった感じだと思うのですが、
ブルドックソースの判決文を見ると株主総会決議を重視しているように見え(それでも持ち合いとかでは駄目とされるでしょうが)、報告書と余り整合性を感じられないのです。最高裁は田中先生の強圧性理論をベースにしているようにも感じられなくて…現在の制度をベースにした過渡的な判断だとは思うのですが。最高裁は経済学的な効率性でまだ徹底できないところを総会決議の尊重を通して酌んでいるかな、とか。

ブルドックの射程は限定されていて、基本的には報告書のように考えるべき、ということで試験対策としては良いのでしょうか?この辺りは疎いので誤解があるようでしたらご指摘をよろしくお願いします。
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本当は専門分野がこの辺りなので丁寧に解説しておきたいところなのですが、時間的制約と精神的制約(何度も同じことをあちこちで説明させられるのがめんどい、しんどい)から、当座以下のことだけ確認しておきます。
まず、企業価値研究会の2つの報告書とブルドック最決とは、基本的に別物と捉えるべきものです。確かに企業価値研究会は良い買収と悪い買収とを区別し、後者に対してのみ防衛策の導入・発動を認めるスタンスですが、受験生の皆様がまずマスターしなければならないのはブルドック最決の理論構成です。それが定着しない間に企業価値研究会の報告書や田中亘評釈に手を出すと、混乱に拍車がかかるだけです。
基本的に、最高裁の論理は「株主意思の尊重」というフレーズ一つに集約されます。企業価値研究会のように、明示的によい買収か悪い買収かを認定するアプローチを採っている訳ではなく、株主の大多数がこれは防衛策導入・発動が適切だと判断したこと自体を重視し、その判断の合理性から適法の結論を導いているのであって、基本的に株主が「本当に」よい買収か悪い買収かを正しく判断できるかどうかに重きを置いていません。
また、最高裁は基本的に強圧性の問題に対して回答を与えている訳ではありません。強圧性の議論はかなりマニアックなので、受験レベルでもないと考えていますが、手を出したいのであればなぜ強圧的(coercive)な買収が起こるのか、その原理を知らなければ議論が上滑りするだけです。

Kさんはどうも先端的な議論に興味を持ちすぎて、理解が不安定になっているように思います。企業価値研究会の考え方はひとまずおいて、ブルドック最決の理論構成を緻密に読み込むのが先決です。調査官解説は森冨義明・ジュリスト1355号112頁に掲載されているようですので、わかりにくい場合はそれを一読されることをお薦めします。基本的には同決定とニッポン放送事件東京高決の判旨とその射程を正確に把握すれば、受験レベルでは十分だと思います。企業価値研究会の立場に立つのであれば、最決を部分的に否定する必要すら生じる場合もケースによってはありますので、手を出さないのが大人の対応です。
それ以上訊きたい場合は、また時間をおいて有償ででも訊いて下さい。

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中間論文公聴会終了と新試験会場確定

まず私事ですが、とりあえず中間論文の公聴会(審査)が終わりました。結果は主査(指導教授)の意見書によって教授会に付議され、確定するまでわかりません。副査の准教授からは色々根掘り葉掘り突っ込まれましたが、いつも議論をしてもらっている関係で、泣かされたりする訳ではありません(^-^;
問題意識をもう少し鮮明にし、記述を根元から書き直したら、十分博士論文にふさわしいテーマだという感触は得たつもりなので、今回単位取得が認められなくて留年になっても、引き続き論文執筆を継続するつもりです。
今後は、助教応募書類を整えて提出し、面接審査を経て、全てうまくいけば単位取得退学・助教着任の運びになります。

さて、話題は第4回本試験に変わります。ここ数日重要な情報が次々と法務省ウェブに掲載されていますが、今日は試験会場が発表になりました。私の地元会場は、例年通りの場所となっています(高裁所在地だとばればれですが;)。年々受験者も増え、試験期間中の休憩等での環境劣化が若干心配されるところではあります。受験会場にもよると思いますが、スモーカーの方は、喫煙所があるか確認の上、ない場合はニコレットやパッチなどを用意した方がよいかもしれません。
また、Q&Aも徐々に細かくなり、使用に差し支えないと明記される物も増えてきました。これは、コンディションを維持するために必要な方には朗報ですね。私はプレテストも体験したので、民事系ぶっ通し6時間経験者としては隔世の感があります。

読者の方には関係ない話であって欲しいものもあります。受験禁止処分についての基準案も公になりました。ある程度予想はされていましたが、どちらかというと厳格化の道を歩んでいますね。司法試験法の運用細則なので行手法上の手続が踏まれていますが、二回試験に関しては司法行政のためこのようなことが行われないはずなので、いずれにしても細心の注意を払われて下さい。

予告のない変更が多いのも気になりますが、ヒアリングが公表されないのも気がかりです。試験委員の「生の声」が聞こえないのは残念ですし、これも一種の不利益変更・予備校外しなのかもしれません。制度草創期とはいえ、今度の試験は様々な点で難局になりそうです。
私は助教採用(ないし不採用・留年)が確定するまで、しばらく受験指導にもご助力申し上げることにしています。受験新報さんのある科目の添削も請け負っておりますし、在学生など近しい方へのレクチャーも何本かお引き受けしています。明日からはしばらくそれらにも時間を割くことにしています。今日はちょっと休憩です。
商法関係のゼミでは、特に時間を設けさせて頂いて買収防衛策に対する判例法の流れをレクチャーすることにもしています。一見すると取っつきにくい判例・裁判例が多いので、なるべく平易な説明を心がけますが、くれぐれもブルドックの最決と東京高決を混同されないよう、読者の方にもご注意頂きたいと思います。

では今日はこの辺で♪

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ティーブレイク、または、俎の上の鯉

読者の皆様は、少なくとも事前の明確な告知を欠いた(個人的には、ディジタル・ディバイドの人々を放逐する可能性もあると考える)択一得点の1/2修正に慌てていらっしゃると思います。そういうときは、もっとあたふたしている人をみて、「あ、hiroleenもっと追い詰められてるんじゃんw」と優越感に浸るのも一興かもしれません。俎上の鯉である私の状況をご説明しておきます。

30日金曜日から、学位中間論文の審査があります。なんとかかんとかここまでたどり着いたのですが、実際どのような手順で行われるか全く不明でした。なにせ、以前に単位取得退学をした商法専攻の人間の審査は2年前の1月で、今回審査委員のひとりは本学に着任すらしていなかった状態なので、誰も詳しいやり方を知らなかったからです。そのせいで、昨日は酒とは○しおんを3錠飲まないと寝られませんでした(ヲイ、どれだけチキンやねんw)。
今日、20〜30分の趣旨説明と、30〜40分の質疑応答という手順がおおよそわかったので、一安心しました。
字数的には不足はありません。17万字程度、2ヶ月半をかけて書き上げました。ほとんど全く書き下ろしです。未発表の草稿を原文中で引用しているので、そのもと原稿(7万字)もあわせて添付しているので、読む方は一苦労だとお察しします。自分で読んでいてもうんざりしますw

しかも、これで単位取得が通っても、助教に採用されるかも未知数ですし、採用されても任期は1年です。今年の12月半ばまでに、これを倍以上のサイズにふくらませてより緻密にしなければなりませんし、半期1コマのゼミも持つことになります。あわよくば助教、といったレベルで、もう非常勤講師しか職がないかもしれません……;;

すべてスムーズにことが運ぶならば、単位取得満期退学→助教任用→(可能な限り博論の完成)→博士号→どこかの専任講師または准教授、となりますが、どこも薄氷を踏むような状態なので……。結局、与えられた条件下でベストを尽くすしかないのですね。

ちなみに、皆様が当該採点基準変更につき訴訟提起しても「法律上の争訟」に当たらず、訴え却下→控訴棄却→上告棄却もしくは不受理で確定、という流れになることは前回ご説明しましたが(ついでに民訴の条文を引いておくと勉強になるかも。「法律上の争訟」は何法にあるんですっけ?)、大学教員の人事についても「大学の自治」の典型ですので、どんなに私の論文その他の条件が他の助教就任予定者より優れていることを証明しても、部分社会の法理によって「法律上の争訟」性を欠くことになります。合格しても同じ俎かよ!(さまーず三村)というのが本音ですorz

そういえば、就職したら、このブログどうしましょうかねえ……恥ずいので消去すべきでしょうか。それとも、第4回本試験ぐらいまで存続させておくほどの価値があるでしょうか。

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