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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

分権委、第3次勧告で892条項の廃止・縮小

国が押し付ける「義務付け・枠付け」を見直し、地方を活性化

2009年9月29日

 地方分権改革推進委員会が第3次勧告案をまとめた。近く、鳩山由紀夫首相に提出する。これは、霞が関のあり方を変えて、地域を活性化させる大きな改革だ。自民党も民主党も関係なく、ただちに政府として実行のプロセスに入ってほしい。

地域の実情に即した基準で保育所をつくれるようにすべき

 第3次勧告の内容は、「義務付け・枠付け」の見直しだ。現状では、国が「義務付け・枠付け」という形で地方に一律の基準を押しつけている。それらの基準は、法令上は地方が「自治」の範囲でできるとされている仕事なのに、実際には都道府県や市町村が自由裁量で決められるわけではなく、地方自治体のやり方を縛っている。この「義務付け・枠付け」を大幅に見直して、地域住民のニーズを熟知する地方自治体が基準を決められるようにしなければならない。

 地方分権改革推進委員会では、約1万条項ある「義務付け・枠付け」について検証し、そのうち、地方分権の観点から見直すべき約4000条項を第2次勧告に掲げた。今回の第3次勧告では、とくに問題のある892条項の廃止・縮小を求める内容となっている。

 廃止・縮小を求めている「義務付け・枠付け」のなかから、具体的にいくつか問題点を挙げておく。

 まず、保育所の「義務付け・枠付け」である。

 保育所の施設をつくる際には、たとえば屋外遊技場の面積が、子ども1人あたり3.3平方メートル以上なければいけないと定められている。子どもがハイハイするための部屋(ほふく室)も、1人あたり3.3平方メートルとなっている。

 なぜ3.3平方メートルかというと、ちょうど「1坪」だから、ということにすぎない。科学的な根拠があるわけではないのに、この基準を超えていなければ、国は「保育所」として認めず、補助金を出さないのである。これでは、地価が高い東京のような都心では、用地の確保がネックになって保育所を増やせない。

 保育所の数が足りないために入所できない待機児童が全国に2万5000人、東京都だけで8000人にのぼる。とくに、不況期には家計を助けるために就労を希望する女性が増えるので、待機児童も増加する。経済動向に応じて施設を増やさなければ、女性が働きに出ることもできない。

 また、保育士の数についても基準がある。保育士の資格を持つ人を、4歳以上の子ども30人につき1人、3歳以上の子ども20人につき1人、1〜2歳の子ども6人につき1人、施設に置くよう決められている。保育士は一定数いた方がいいのは当たり前だが、一律基準を固執すれば、過疎地では人材を確保できず、保育所をつくることが難しくなる。

 以上のような基準をあらためて、地方自治体が地域の実情に即した基準で保育所をつくれるようにしなければならない。

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