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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

分権委、第3次勧告で892条項の廃止・縮小

道路も公営住宅も国の基準では東京は対応できない

 つづいて、道路の「義務付け・枠付け」である。

 道路法では、「生活道路の勾配は12パーセント以下」と定められている。日本は山の多い国土だ。急峻な山岳地帯でこの基準を当てはめれば、古くなった道路をつくり変えるたびに、基準値に抑えるために迂回させるなど、余分な道路をつくらなければいけなくなる。

 また、「歩道幅員は2メートル以上」と定められている。地方では歩行者などあまりいないのに、立派な歩道がついている道路がたくさんある。これは、地方自治体の無駄遣いというよりは、国の基準の問題だ。逆に東京でこの基準を当てはめていけば、歩道幅員を確保するために用地買収費がかさんでいって、予算がいくらあっても足りなくなってしまう。

 公営住宅の「義務付け・枠付け」も問題である。

 公営住宅法では、「同居親族がいること」が要件とされている。この要件が障壁となって、過疎地にある公営住宅を活用して若い世代を呼び込もうとしても、単身世帯では入ることができなくなっている。しかも、全国で画一的な収入基準があるために、月収20万円以上の人は入居できない。

 たしかに、かつての公営住宅は低所得で住宅難となっている人のために存在した。しかし、いまでは民間のデベロッパーも育ち、単身世代も増えている。古い基準のままでは、地域のニーズに対応できない。

 以前、東京都の高齢者向け「すまい」のプロジェクトチームの取り組みを紹介した。現在の公営住宅は、かつて入居した人たちが単身高齢者となり、不安を抱えて暮らしている。「ケア付きすまい」を用意することも、いままでの公営住宅は想定してこなかった。「義務付け・枠付け」が、「ケア付きすまい」を都心につくる際の障壁になっているということは、以前のコラムでも書いた。

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