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右翼にも排ガス規制の波 大型街宣車姿消す 徒歩デモ行進の動きも

9月29日15時40分配信 産経新聞

 車の排ガス規制の強化に伴い、右翼団体の街宣活動の象徴的な存在だった大型街宣車が、大阪府内では数台にまで激減していることが29日、府警への取材で分かった。規制対象外の小型車に乗り換えたり、街宣車を廃止したりする団体が相次いでおり、中には徒歩でのデモ行進に切り替える動きも。府では10月から排ガス規制がさらに強化される予定で、府警幹部は「他府県からの流入も含め、府内で活動する大型街宣車はほぼなくなるのでは」とみている。

 第二次大戦末期に対日参戦した旧ソ連への抗議活動が集中する8月9日の「反ロシアデー」。日曜日となった今年は、60数台の街宣車が大阪府豊中市の在大阪ロシア連邦総領事館前などで街宣活動を繰り返した。ただほとんどが乗用車のワゴン車などを改造した小型の街宣車で、確認できた大型街宣車は他県ナンバーの1台だけだった。

 警察関係者によると、右翼団体が街宣車を本格的に使うようになったのは、昭和40年代後半から。警察白書には49年に「宣伝カー」の記述が初めて登場した。現在、活発に活動する右翼団体は全国で約900団体(構成員約1万人)で、約1800台の街宣車があるとみられている。

 大型街宣車だけに絞った統計はないが、府警関係者によると、排ガス規制が始まる平成4年ごろまでは、府内でも活動集中日には100台前後の街宣車の大隊列が確認され、半数以上が大型バスなどを改造した大型街宣車だった。

 しかし、排ガス規制の強化とともにその数は減少。府警が規制区域外の他府県で車を不正に登録する「車庫飛ばし」の摘発に乗り出したこともあって、街宣車自体が減り、なかでも大型街宣車は数台程度になっている。

 排ガス浄化装置を取り付ければ規制区域でも登録できるが、1台の設置費は数十万円から百数十万円。景気低迷の中、コスト面からも大型街宣車の維持が困難になっているという。

 さらに大阪府では10月から、他府県で登録した特種自動車が府内の規制区域で業務する場合も、排ガス基準の適合が義務付けられる。

 このため、規制対象外の小型乗用車に乗り換える動きが広がっているほか、街宣車を廃止し他団体の車に相乗りしたり、徒歩でデモ行進をしたりする団体も。府警幹部は「排ガス規制の強化によって、活動形態が変わるという思わぬ効果が出てきた」と分析する。

 大阪市に本部を置く右翼団体幹部は「駐車場代が月28万円に膨らんだといって、大型街宣車を泣く泣く手放した活動家もいる。維持費を考えれば、街宣車の小型化は時代の流れ。大型車で大音響の軍歌を流して回るような活動ではなく、われわれの主張に耳を傾けてもらえる方法を考えていく必要がある」と話した。

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【用語解説】排ガス規制強化の流れ

 平成4年、窒素酸化物の排出量の多い車を首都圏や関西圏の都市部などの規制区域で制限した「自動車NOx法」が施行。13年の改正では、規制区域で登録した車は排ガス浄化装置を付けるなどして基準をクリアしなければ、猶予期間後は車検に通らなくなった。大阪府は他府県からの流入対策として、21年1月から規制区域の府内37市町で業務を行う車は規制区域外で登録していても、排ガス基準の適合を示すステッカーを表示するよう義務づけた。10月からは街宣車などの特種自動車も表示が必要になる。

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最終更新:9月29日16時5分

産経新聞

 

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